№1

日付:2004/1/2

タイトル:ジョゼと虎と魚たち

監督:犬童一心

劇場名:シネクイント

パンフレット:あり(\800)

評価:-

 

2004年の1本目に何故これを選んだのかは覚えていませんが、ちょっと”痛い”映画だった記憶はあります。弱者(身障者)を登場させ、それをいたわり、結果見捨てる健常者の構図。その一方で、主役の妻夫木の男の誠実さ(悪い意味の)と、映画としての見応えに、共感と反感と居心地の悪さを感じてしまいました。

池脇千鶴さんが素晴らしい女優さんであることを初めて認識した作品でもあります。


 

2008年8月20日

TSUTAYA DISCASにてDVDを借りて再見(もう何ヶ月も前に届いてるというのに・・・勿体無い)。

改めて、良く出来てる映画だなーと感じました。犬堂一心監督、大人から子供まで役者に心象描写をさせるのが実に上手い。全員上手いんで、これは役者が上手いのではなく、監督の演出が上手いのだとの結論に達しました。

 
この映画、女の子が観るとどう感じるのだろう?(女の子と観に行ったのですが、彼女の感想は忘れました)。

 

恒夫(妻夫木)は基本的に女にだらしない(常に新しい女と付き合い始めてから元彼女と別れる)。その一方でジョゼが身障者である事を周囲に隠そうともしないし、引け目も感じていない。彼女を暗い海の底から引き上げたのは間違いなく恒夫。

そんな恒夫が1年間付き合った挙句に親に紹介するのを躊躇ったのは、決して彼女が身障者だからだけではない筈。にも拘らず最後に「僕が逃げた」と胸の内を告白し、ヨリを戻した香苗(上野樹里)の前で号泣するシーンは、結果としてジョゼを見捨てた自分を責めている以外の何物でもない。今までだって必ず自分の都合で彼女を捨ててきたくせに。

 

ジョゼがモーテルで魚を見ながら呟くシーンと、ラストの恒夫の号泣シーンでもらい泣きしてしまうのは、何も彼の男としての誠実さ(悪い意味での)に共感するからではなく、ジョゼがあまりにいい子だから、です。祖母に「こわれもの」の烙印を押され、日陰者として育てられた彼女の、ヒネた物言いの裏側にある健気さ。人並みの幸せを期待する権利を自ら放棄しながら、僕ら健常者が日常の中で見慣れた光景の一つ一つに目を輝かせるピュアさ。

彼女が再び暗闇の中に戻る事はないのでしょうが、一人ぼっちになった彼女の、その日常をあるがままに受け入れるその姿にこそ、観る側は胸を締め付けられます。

 

原作は田辺聖子さん。脚本も女性(渡辺あやさん)なのが意外でした。男の視点で描かれた作品だという気がしたいましたが、女性目線のシナリオに、男(監督)の視点が入った事でリアルさが増しているのかもしれません。

DVDには主役の二人と監督の音声解説付きの再生モードが付いていましたが、3人が延々とくだらない話しかしていないのが残念でした。ちなみにラストシーンを観て池脇さんは「ほんとヒドイ男だよねー」と仰ってました(笑)。

 
ジョゼと虎と魚たち


パンフレット