#360
横断歩道の真ん中で筋斗雲を呼ぶ
くつを履き違えたまま放った音程で
1cm四方に切り刻んだ世界を真っ白な頭の内壁に張り直した
絡まったコードを解いているときが何よりも落ち着ける居場所
寒くも暑くもない季節に記憶をなくす
期待しすぎた鳥が羽を休める電柱で
メイズを彷徨い続けている少年たちは考えながら走り続けた
破れた袴の裾に足をひっかけても言い訳にはならない決勝戦
空を飛べなくなった言葉は宙を舞う
孤独な夜を信者にした過去は今日で
強くて深い翠色の感情をなんとしてでも形にして残したかった
春先に片づけられなかった冬服を庭先で燃やしている白昼夢
電池も切れたしマスクも一緒に外す
見上げた先はいつも痛みの直線で
チーズと味噌を混ぜ合わせた様な距離を手の平で測ってみた
擦り傷ひとつつけたくないのにいつのまにか曇っていく懐中鏡