白昼夢2 | シガログ

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日記 物語 詩 昔話


最近感じたこと 昔から温めていたもの ふとした思い付き


お時間があるようでしたらバックナンバーにも目を通していただけると幸いです

タバコはSEVEN STARS

きっかけは忘れた

たしか12の夏には親のをパクって吸っていたと思う

タールは低かったけど きつかったのは覚えてる

嫌なことがあったわけでもない

不良に憧れたわけでもない

ただ頭痛が引いていく

それで吸ってた



少年は言う

「それおいしいの?」

私は言う

「さぁな」

少年は言う

「吸っちゃいけないんだよ」

私は言う

「知らなかった」

少年は言う

「早く死んじゃうんだって」

私は黙って聞いている

少年は続けて言う

「体に悪いんだってさ」

私は言う

「それだけかよ?」

少年は驚いて言う

「死んじゃうって痛いんだよ 苦しいんだよ?」

私は言う

「だろうな でも頭痛も痛いぞ?」

少年は困って言う

「20歳になるまで吸っちゃダメだよ」

私は言う

「20歳まで頭痛を我慢しろっていうの?」

少年は黙ってうつむいて聞いている

私は言う

「悪かったよ・・・」

少年は重く閉ざした口を開く

「それ吸うと痛いの治るの?」

私は言う

「俺の場合はな」

少年は言う

「・・・パパがね 僕を打つんだ」

私は黙って聞いている

少年は続けて言う

「・・・そんな時 ママは見ないフリをするんだ」

私はタバコに火をつけて聞いている

少年はまた続ける

「打たれた痛みが引いても 何だか痛いんだ」

私はタバコの煙を吐いて聞いている

少年は泣きそうになりながら言う

「その痛いのにも効くのかな?」

私は言う

「吸うか?」

「・・・うん」



少年は1本目は咳き込む

2本目は口の中で溜めることを覚える

4本目で肺に入れるコツを知る

「・・・・・おいしくないね」

「初めはな」

「おいしいの?」

「さぁな」

「なにそれ」

「頭痛が止まれば何でもいいんだ」

「長生きできなくても?」

「そうかもな・・・」

「長く生きるってずっとこのままなのかな・・・・・」

「さぁな」

「痛いのやだなぁ」

「そうだな」

「僕って悪い子なのかな・・・」

「タバコ吸うやつは悪いんじゃなかったっけ?」

「僕 悪い子になっちゃったのかな?」

「変わらないよ」

「じゃあ僕 いい子のままかな?」

「都合のいい子のままってこと」

「なにそれ?」

「誰かにとって都合のいい子をいい子っていうんだよ」

「なんか悪いことみたい」

「悪くなんてないさ 俺は興味はないけど」

「なんで?」

「何でも言うこと聞くんなら 必要な時しかいらないだろ?」

「必要な時だけでも必要としてくれるだけいいじゃないか」

「物を温めるんならレンジの方が早い」

「どういうこと?」

「別にお前じゃなくてもいいってことさ」

「・・・・・やだね それって」

「そう思うんなら お前は普通になれるよ」

「普通って何かやだよ」

「なんで?」

「なんか僕が僕じゃないような気がする」

「誰かにとって特別ならいいんだよ」

「誰かって?」

「心を大切にしてくれる人かな」

「難しいよ・・・」

「心が痛いってならない人かな」

「心って?」

「痛みが引いた後も痛いところかな」

「なんとなく分かる気がする・・・・・」

「タバコは?」

「もうちょっと大人になったらにするよ」

「そっか バイバイ」

「バイバイは寂しいよ?」

「いや バイバイさ」

「なんで?」

「その気持ちを忘れないようにするためだよ」

「でも寂しいよ」

「思い出はポケットの中に閉まっておけるくらいがいいんだ」

「また会いたいよ」

「時々思い出してくれればいいよ」




それからは覚えていない

少年がどうなったかは知らない

日はまた沈み また昇る