前回の続きですが、長女姉の話を聞いて私は昔レストランで目にした夫婦のことを話しました。

 

 

 

 

もう何十年も前の話です。

 

とあるスキーリゾートで夕食に出かけたレストランで、視界に入った中年カップル。多分に夫婦と思われ。

 

旦那さんはスラリとした多分にハンサムな方に入るいでたち。そして向かいにいる女性は旦那さんよりは若いかもしれないけれど、肥満体でした。大きな丸々とした顔と身体で豹柄のワンピースだかコートだかを着用していたのを覚えています。

 

驚いたのは、その旦那様の表情が「絶望」と言う言葉がぴったりなくらいの不幸顔だったこと。不幸この上ないという表情で視線をフォークとナイフに落としていて、そんな表情でご飯を食べるなんてどれだけ不味い飯になるだろうと同情するくらいです。

 

その向かいの女性と言えば、そんな旦那様を目の前にどうしたら良いかわからないと困惑にも似た表情でリスのようにただひたすら食事を頬張っている感じです。

 

当然その夫婦に一言も会話はありませんでした。

 

そのショッキングなほどに「どうしようもなく不幸そうな外食風景」は何十年も今でも鮮明に思い出されます。

 

そしてその時、教訓にしたことがありました。

 

外で誰が見てるか分からない。でも、私は「あの夫婦」のようには決して見られたくない、と。

 

そのせいで、それから元夫と出かける時はとにかく楽しそうに会話をする、ということを意識的にしていたように思えます。それ以前は平気で外出先で機嫌を悪くして夫に報復を与えていた私でしたけれど。

 

実際、よく出かけていた日本食のレストランでウエイトレスをしていた奥様から「お宅は仲が良いご夫婦ですね〜」と言われたこともあります。

 

世間ではそれを「仮面夫婦」と呼ぶのかもしれませんが、そうしている方が私としては気持ちが良かっただけのことです。つまらなそうにしている夫を目にするのは腹が立ちますが、それで自分も冷ややかにしていたら「あの夫婦」になってしまう!そっちの方が嫌なのでした。

 

 

 

 

私「ほら、私プライドあるからさ。少なくとも昔自分が見たように、他人から同じ目で見られたくないってのがあるのよ」

 

そう姉に伝えましたが、姉自身が自分を偽りたくないと言うのだったら、私がとやかく言うことでもありません。

 

不幸をあらわにしてブスになる方がもっと嫌だけどなぁ〜。でも、自分もその道を歩いて来たから、姉の気持ちも認めてあげたいです。

 

 

 

 

自分がブスになるのは母のせいだ、旦那のせいだ、と「誰も私を幸せにしてくれない」と長女姉が他責に走っているのは子供じみているけれど、でも彼女は人生ずっと抑圧されて生きて来たので、自我をコントロールするのに今ひとつ苦労しているようです。

 

自分で自分を幸せにする、と言うことがまだ分かっていない。一人で遊びに出かけるということもしない。

 

彼女が彼女自身をがんじがらめにして生きて来たので「自分ファースト」が分からないし、ただただ「見返り」を求めている。

 

犠牲になっていると思っているから物事を嫌々やっているし、たまに何かをしてもらえれば喜ぶけれど、だからと言って義理や慣習を除いた部分で能動的に誰かに何かをやってあげようという気持ちが薄い。

 

愛情をもらった実感がないから、愛情を与えるという行為も知らない。そこは私も一緒だったけれど、家を日本を飛び出したことで私はそれを知ることができたのでした。

 

姉は長女として生まれてきた人生を恨んでるし、末っ子体質の旦那はいいとこ取りで、だからこそ最初の相性は良かったのですけどね。

 

私自身が末っ子ですから、長男体質の面倒見の良い人としかうまくいかなかったです。元夫も長男でした。

 

義兄は悪い人ではないし、私に対しても良くも悪くも深く関わりませんが、でも彼が姉に対してとる態度は「酷えなぁ」と呆れてしまうほど。特に海外の男性を見慣れてるから、女房を大切にしない昭和の関白亭主を持つ姉には同情してしまいます。

 

もともと最初に姉が旦那を甘やかしすぎたのです。それは彼女の娘の姪にも言えることで、「お父さんと似ている」という旦那と結婚して、最初にめっちゃ尽くしすぎて今ストレスてんこ盛り。ぼけー

 

 

 

 

「人生残り少ない。旦那のことで不機嫌になってる暇はない」

 

と、そこまで口にしたりもしてるのですが、次の日にはまた旦那の愚痴をこぼしている。70歳の今、離婚なんてありえないし、ただお互いがある日突然死ぬことも病気になることもあり得ると思ってるだけ。

 

 

 

 

 

 

彼女が彼女自身を好きでないので、心からの幸福感に届くのにはまだ時間がかかるのかもしれないけれど、多分にそこに到達する前にボケてしまうのかも。

 

少なくとも、去年の鬱状態からはずいぶん良くなっているので、まだ発展途上ということで温かく見守るしかないのでしょうけれど。

 

まぁ、私に関しては全面肯定の彼女なので、それに救われている私がいるのも事実です。

 

真ん中の次女姉とはほとんど疎遠であることもあるし、長女姉とは仲良くできる限りハッピーでいてもらいたいです。