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FIN:お伽噺



無事リーズオリアへ帰還して数ヶ月。

僕は変わらず王宮魔術師として銀河病の特効薬を作り続ける日々を送る。
改良の余地が無いか他の魔術師と研究を重ね、効率よく量産する方法を探る。

いくら作っても足りないのは重々承知であるが、新魔王誕生の折り、リーズオリアの第三研究室には魔界の銀河病の存在が公開され、調剤の為の人手も増えたので、量産のスピードは格段に上がったと言える。

この薬は新魔王であるテオルさんの元で、厳しく管理され魔界へ送られる事となる。
僕が生きているうちにこの病の根絶に辿り着く事は無いだろうが、そのスタートを切ったのなら希望は見えて来るだろう。
ディカも魔界で頑張っているんだから、お父さんも頑張らないとな。


ベルルはと言うと、今までと特に変わり無い。
アリアリア様ダイアナ 靴
シューズ 通販
シューズ
に正確な記憶を戻してもらったが、妖精王国にて思い出していた事もあったので、彼女はそれをあっけなく受け入れた。

今はグラシスの館で、日々奥様業に励んでいる。
東の最果ての国から帰って来てから、彼女はぐっと大人っぽくなった気がした。
童顔は変わらないが、立ち振る舞いと、纏う空気が、何と言うか。

それでも天真爛漫な彼女は健在で、疲れきって帰って来る僕を気遣いつつも、その明るい口ぶりで毎日の報告をしてくれる。


これら一連の事を、出張でローヴァー・グランへ立ち寄った際、テール博士に伝えた。
彼はやはり、妖精の申し子の研究機関にてシャーロットさんと面識があったらしく、彼女が西の最果ての妖精王国へ行ってしまった事を知ると、感慨深そうに目を伏せた。

この時チェチーリエにも会ったが、彼女は変わらず変わり者で、好きな事だけに身を投じ元気にしていたっけ。父親と喧嘩中と言っていたが、そのうち仲直りしたほうが良いよとさり気なく伝えた。

元A班の面々も相変わらずだ。

オリヴィアとジェラルはなんだかんだ安定して仲が良く、クラウスは文句を言いつつお一人様を満喫している。それぞれの人生を精一杯謳歌しているわけである。
人生が楽しそうと言えば、フィオナルドはこの春からリーズオリア王国を去り、芸術の国フランピスへと留学する事となった。
ウェルナーは恋人が出来た。クラウスがさらに嫉妬したが、ウェルナーは結局ものの数週間で振られ、もっと可哀想な事になってしまっていた。ただそこでめげない諦めないのが彼である。


グラシス家の面々も元気である。

サフラナは歳の割に足腰もしゃんとしているし、僕らの子供を見るまで死ねないなどと言って目を光らせている。ハーガスは最近持病が悪化して、稀に苦しそうに咳き込む事があるので、無茶をさせない様にしている。僕が薬を作ると「坊ちゃんの薬は一番効きます」と言ってくれた。
サフラナは最近僕の事を“旦那様”とだけ呼ぶ様になったのに対し、ハーガスは今でも僕を“坊ちゃん”と呼ぶ事の方が多い。僕はそれが、両方とも嬉しい。

そうそう。僕はレーンのお給料を上げてあげ、ボーナスを与えた。
ここ最近収入の多かったグラシス家である。銀河病の特効薬の権利を王宮に献上した事で、それに対する褒美を頂き、また東の最果ての国からも莫大な謝礼を頂いた。
こんなにあっても仕方が無いと思ったくらいだ。
我が家の薬に必要不可欠な薬草を育ててくれているレーンには、何かしらお礼をしなければならない。
彼を王宮の専属庭師になれる学校へ入学させ、そのための資金を全面的に提供しようと提案したが、レーン自身にあっさり断られたため、ありきたりだが心ばかりの謝礼を与えた。
彼は現金な奴なので、それはありがたく受け取った。
おそらく、今後王宮庭師となるより、うちの庭師で居る方が稼げると踏んだんだろう。
レーン、恐ろしい子。


他の者たちについて語るならば、ニコレッタは最近お見合いをさせられたそうだ。
その際ベルルにドレスを選んでもらったり、あれこれ張り切っていたのに、いざお見合いの席に着くと緊張のあまりグラスをひっくり返したり妙な事を口走ったり、とにかく散々だったらしい。
後でベルルに泣きついていたっけ。

伯爵は相変わらず自由奔放で、彼の話題は尽きる事がないので以下省略。

そう。平和で、満たされた日常は戻って来た。
僕とベルルを取り巻く物騒な事情はとりあえずここらで一幕を終え、代わりに新たな生活の幕が開けたのだ。







「ベルルの今年の誕生日は、何を贈ろうか……」

「あら、旦那様まだ用意していないの?」

「何がいいと思います? マルさん」

書斎の日当りの良い場所で、僕は椅子に座ってマルさんの毛並みを撫でていた。ベルルとサフラナは二人で家を出ている。僕もついて行こうと言ったが、ちょっとした買い出しだけなのでとあっさり断られた。

今まで春はあまり好きではなかった。春は憂鬱な気分になった。
だけど今年はそんな風に思う事も無く、いつの間にやらベルルの誕生日を来週に控えている。

「ベルル様自身もお誕生日忘れていそうね。何が欲しいかなんて、今のベルル様では見当もつかないわ。あまりに満たされていそうで」

「……うーん、困ったなあ」

ベルルが満たされているなら嬉しいが、欲しいものが無さそうなのも困りものである。
ここは素直に、ベルルに聞いてみた方が良いかもしれない。

「ちなみに私は、上等なソーセージがあると良いなって思うの」

「……分かりました。今晩用意しますよ」

「あら流石旦那様。最近グッと良い男になったわね~」

「……」

マルさんは僕を褒めコロコロと甘えたが、彼女のそれは対価を要する。
僕は一度身震い。

「ケッ。何が良い男ーだ。ただのへらへら野郎じゃねーか。ローク姉様が東の最果ての呼び出しで居ないからって、気ー抜いてんじゃねーぞ」

書斎の扉を開けて、サンドリアさんが入って来た。

「あら、お兄様嫉妬しているの? 相変わらずみみっちいのねえ」

「マルゴット、お前は酷すぎるぞ。少しは兄を敬えっ」

「そうは言っても、今のお兄様可愛いんだもの」

「くそうっ。本当の俺はもっとカッコイイのに!!」

部屋へ入った先から地団駄するサンドリアさん。
頭の角に引っ掛けていた蔦が床に落ちた。きっと側の林を遊んで来たんだろう。

サンドリアさんはプンスカ怒りながらも、壁際の木造の椅子に座って、チラリとこちらを見る。

「俺、知っているぞ。ベルル様の欲しいもの」

「……え、本当ですか? ぜひ教えてください」

「えーどうしよっかなー」

ニヤニヤした表情で焦らすサンドリアさん。こちらとしては若干腹立たしい笑みだ。
サンドリアさんは立ち上がり、何故か勝ち誇った様に言う。

「今朝ベルル様に毛並みをブラシで整えてもらった時に、ベルル様がおっしゃった。『サンちゃんの綺麗な毛並みを整える、新しいブラシが欲しいわ』と」

「……」

「……まあ、旦那、ベルル様の願いは出来るだけ叶えてやるんだな」

格好良く哀愁を漂わせ、部屋を出て行ったサンドリアさん。
僕とマルさんは何とも言えない表情で、その背中を見送る。

「旦那様、ベルル様のお誕生日に、ブラシ……」

「却下ですね」

即答だった。
そんなものは適当にそこらの雑貨屋で買って来よう。

とその時、机の上に置いていた箱の中から魔法陣が現れ、ローク様が戻って来た。

「ふう」

彼女は髪を払って、お疲れのご様子だ。

「お疲れさまです、ローク様」

「ああ疲れた。……まだまだ蹴散らさないといけない奴は多いなぁ……」

「……」

いったい何を蹴散らして来たと言うのか。
ローク様は首をコキコキ鳴らし、ソファにドカリと座り込んで、そのままトカゲの姿となって寝てしまった。
僕は立ち上がりソファの側に寄って行って、ローク様専用の小さな毛布をかけてあげた。ベルルが隅にトカゲの刺繍を縫った奴だ。なかなか、上手にできている。

「で、どうするの旦那様。何を贈るか決めた?」

マルさんがローク様の隣に飛び乗り、丸くなる。

「……いや、何も」

僕は長いため息をついた。
去年もとても迷ったが、今年は本格的に分からない。やはりベルルに直接聞いてみるとしよう。










ベルルがドレッサーの前で、しおらしく髪をといていた。何だか今日はとても大人しいのである。

僕はベッドの上でソワソワしながら、彼女にさり気なく問う。

「ベルル、その……何か望みはあるかい?」

「ん? 望み……?」

「いや、欲しいものとか~」

ベルルは髪に香油を塗ったあと、口元に手を当て視線をあちこちに泳がせた。

「……?」

スクッと立ち上がり、ベッドに上りいそいそと僕の側まで這う。
そして目の前でちょこんと座って、上目づかい。

「もしかしてお誕生日?」

「え、ああ。まあバレてしまうよな」

「……ふふ。旦那様がくれるものなら、何だって素敵だわ」

ベルルは「さあ、もう寝ましょう」と掛け布団をめくって、すぐにその中へ潜り込んでしまった。
彼女の答えはある程度予想がついていたので、やはり今年も宝石類の装飾品を探しに行くことになるだろうと思った。

「旦那様……」

ベルルはいつものように僕の側に寄って来て、腕を胸に抱いた。だけどどこか切な気な呼び声で、僕は心穏やかではいられない。

「ねえ旦那様、私、次のお誕生日で18歳になるのよ? 不思議ねえ、もう18歳なんですって」

「……不思議なのかい?」

「そうよ。だって18歳って言ったら、立派な大人だもの。でも私、この館へ来た時から、何か変わった気がしないのよ。同じ様な気分なの……。私、大丈夫かしら」

ベルルは何かが不安なのか、困り顔。何が大丈夫かしら、なのか。
僕は彼女の前髪辺りを撫でた。

「でも……それは何となく分かるかな。僕もふっと若い頃の事を思い出すけれど、学生時代の頃と今の感覚は、そんなに変わっていないんだ。きっと、あと10年経っても変わらないんじゃないかな。いつまでも子供だし、それでもやはり大人になっているんだ」

「……そういうもの?」

「ああ。まあ、実際は色々と変わっているんだろうけれど。自分自身が一番気づき難いのかもね。そう言うのは」

「私は……旦那様と初めて会った頃と、何か変わった?」

ベルルは僕の肩に頭を乗せて、耳元で問う。
その口ぶりがえらく色っぽく感じ、どこが変わったかと言われたらこう言う所が変わったと言える。

ベルルの普段は何一つ変わらない、可愛らしく幼い様子の僕の妻な訳だが、時折フッと、こちらがドキッとする空気を醸し出す。
無自覚な攻めが特技のベルルであったが、今はどうなんだろう……

「もしかして、もう自覚あり?」

「……ん? なんの事、旦那様?」

「……」

ベルルは目をぱちくりとさせた。
わからん。女はわからんワカラン……

「べ、ベルルは……僕から見たら随分と変わったよ。今では同年代の娘より、ずっと大人なんじゃないか、君は」

「そうかしら。同年代のお友達がニコちゃんしか居ないから分からないわ」

「ニコレッタと比べたら君は圧勝だよ……」

すまないニコレッタ。君を悪く言った訳では無い。
ただ君は落ち着きが無さ過ぎるんだな。

僕はベルルの背を撫でながら、心の中で謝った。

フワリと、香油の香りが鼻をかすめた。
ベルルは東の最果ての国で勧められた、髪に塗る椿の香油を毎晩使用している。とても良い匂いがして、彼女の髪はより艶やかになった。

それがまた刺激的なのである。

「……ねえ旦那様」

「ん? 欲しいものが見つかった?」

「ううん」

彼女は小さく首を振った。
そして、いっそう僕にくっついて、僕の耳元で囁くのだ。

欲しいものはもう、ここにあるの、と。

そして……

「あ、あのね……旦那様……」

「……え」

そして僕は、彼女に告げられた、その内容にしばらく瞬きも出来ず、返事も出来ず。
ただベッドの中で首を横にして、真っすぐにベルルを見つめていた。
最初はフワフワとした心地で、まるでおとぎ話を聞いているかのようだったのだが。

ベルルは頰を染め、コクンと頷いてから、ポロポロと泣き出した。

この時の実感として、僕は驚きや嬉しさなどと言う言葉で言い表す事の出来ない、ただただ大きな衝撃を受けたと言うのと、「ああ……ベルル……っ」とどうしようもなく彼女を愛おしく思ったのと。

僕は優しくベルルを抱き締めた。出来るだけ彼女に、僕の愛情が伝われば良いなと思って。
きっとこの小さな体いっぱいに、喜びと動揺を抱え込んでいるだろうから。

ベルルはその身に大事な我が子を宿した。
僕らはかけがえの無い家族を、授かったのだ。







その後ベルルは順調に妊婦期間を過ごし、秋の紅葉の美しい時期に、無事に我が子を出産した。

その時の感動を、僕は一生忘れる事は無いだろう。
この世で最も愛すべき存在を、もう一人この腕に抱える事となったのだ。

癖のある黒髪で、鮮やかな緑色の瞳を持った、健康な男児だ。
名をジルフリードと名付けた。

ベルルはこの子を「可愛い小さなジルちゃん」と呼んで、もう片時も離れようとはしない。僕は我が子に若干のジェラシーを感じながらも、やはりとても愛おしいと思う。
基本的にベルルに似ていて愛らしいのだが、ベルルいわくあくびをした時の表情が僕に似ているらしく、そんな仕草の一つ一つを、まじまじと観察してみたり。

でもジルはベルル似だからきっと将来有望だぞお。

そこら辺は譲れなかった。
ベルルは「あら旦那様に似ているわよ」と言ったけれど。

ジルの目が見える様になった頃、そっと指を差し出すと、ジルはそれをひしと握った。小さな手が可愛らしく、じわりと心打たれた。
これから、この子を守らねばならない。
ベルルと共に、このグラシス家と共に。

僕とベルルを取り巻く物語は、何も終わってなどいないのだ。
これからの方がよほど長く、そして沢山の喜怒哀楽に満ちた愉快なものであるに違いない。

ジルが寝てしまった後、僕は隣でその寝顔を見つめるベルルの肩を抱いた。
ベルルは勿論、僕の腕の中で、ここぞと甘えてくる。

「旦那様~旦那様~」

「母になっても、こういう言う所は何も変わらないな、君は」

「あら、当然よ。私だって旦那様に甘えたいもの。いつまでだって、旦那様にとっての、“可愛い小さなベルル”でいたいわっ」

「……」

「ふふ、ジルちゃんにだって、負けないもの」

可愛い小さなベルル。
物騒な運命のもと、僕の前に現れ、目まぐるしく僕の人生を変えた女性。

僕は「よしよし」と頭を撫で、そして彼女に、いつもと変わらないキスをした。
ベルルは頰を染め、上目づかいで僕を見上げ「もう一度よ?」と、それを催促する。僕は言われるがまま、もう一度。

彼女は「ふふっ」と微笑んで、僕に抱きついて、尋ねる。

「旦那様、私の事、好き?」

「ああ勿論」

「ずっと?」

「ずっと愛しているよ」

「私がおばあさんになっても?」

「僕の方が早く歳を取るよ」

「あら、きっと旦那様はおじいさんになっても素敵よ」

ベルルは僕の胸に身をぴったりと寄せ、小さくなってゴロゴロと甘えた。
そして大人しくなったかと思ったら、きらきらと瞳を潤ませて言うのだ。

「私、私……旦那様が旦那様で良かった。リ……リノフリード様……っ」

「……!?」

ベルルが僕の目の前で、僕の名を呼んだのは、実はこの時が初めてである。
おそらく、今まで“旦那様”で事足りていたから、なかなか名を呼ぶきっかけもなく、また恥ずかしかったのだろう。
僕はただ名を呼ばれただけなのに、言い様の無い新鮮な衝撃を受けた。だけど、やはりそれは心の奥が熱くなる程、嬉しい事だった。

「僕もだよ。僕の妻がベルルで、本当に良かった。これ以上の幸運は、これから先も無いだろう。ベルル……ベルルロット。君が一番だ」

僕もベルルの確かな名を呼んだ。

潤んだ大きな青い瞳が、僕を見上げている。
きっとこれからも、変わらず僕を見てくれるんだろう。

歳を重ねて、僕もベルルも、色々な事が変わっていく。
それでも、愛情は変わる事無く注がれる。お互いがしっかりと、その目を見ていれば。





『まあ、その人が私の旦那様なの……? 私、ここから出られるのね!!』


そう言って、嬉しそうに微笑んだ幼い少女。
チャリチャリと、鎖を引きずった高い音が、今も耳の奥に残っている。
鉄格子を挟んで、初めてお互いを見つめ合った、あの日。

あの日だ。

まるで、牢屋に閉じ込められたおとぎ話のお姫様。
そんな出会いの一幕であったが、それが僕にとっての現実で、そして、運命だったのだろう。



一つ確かに言えるのは、僕にとってベルルは、ただ一人のかけがえのない妻であったと言う事だ。




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これにて、「僕の嫁の、物騒な嫁入り事情と大魔獣」の完結となります。
今まで読んで頂き、本当にありがとうございました。

ポッと番外編を追加するかと思いますが、その時はお気軽に覗いて頂ければ嬉しいです。

また、明日書籍版の2巻が発売となります。
1月に連載を始めた時には、10月のこの日に完結し、また2巻も本が出るとは予想もしておりませんでした。
内容のユルさとは裏腹に目まぐるしいスピード感で、自分自身ついて行けてない部分がありましたが、ひとまず終える事ができて安心しております。
今まで読んでくださった方、感想を下さった方、イラストを下さったり、しおりやポーチまで作ってくださった方もいらっしゃいました。
沢山のご縁に恵まれた幸せな作品だったと思います。
本当にありがとうございました。

少しでも、リノやベルルの事を覚えておいて頂ける作品になっていたらなと思います。


ではでは、またどこかでお会い出来れば。
かっぱは変わらず何かしら書いていると思われますので、お気軽にお声かけ下さい。

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