船のエンジンの始動方法


今回はできるだけ簡単に、大型船のエンジンの始動方法を書いて見ます。


中国旅客船協会連合会のブログ


実は大型船のエンジンは、始動準備に30分以上の時間がかかります。かかりますと
いうより、「かけます」といった方が正確かも分かりません。


どんなエンジンでも、ある程度の高温時に最大の性能が発揮できるように設計されて
いるために、「暖気運転」を行うのですが、3階建てアパートに匹敵するような大き
な金属の塊である舶用エンジンは、そう簡単に全体が暖まりません。

ましてや、冷えている状態でエンジンを始動すると、一部分のみが急激に高温となり、

冷えている部分とのひずみが生じて、エンジンに高負荷がかかり、寿命を縮めることになるうえ、
始動性も悪く、最悪、故障の原因にもなり、良いことは何一つありません。

そのため、エンジンをかける前に「暖気運転」を行うのですが、この方法は、エンジ
ン止めたまま、オイルや冷却水をボイラなどで暖めて、ポンプで強制的に循環させて
「外から」暖めるのです。とは言っても、これとて、全体を暖めるのには充分ではあ
りません。

前回書いたように、大型船のエンジンはとてつもなく大きく、ピストンが3~4メー
トルも上下しますので、一部のピストンは暖まりますが、下の方にあるピストンは冷
えたままとなります。これを回避するために、暖気運転しながら、モーターでプロペ
ラ軸をゆっくり回して、意図的にピストンを上下させる「ターニング」という作業を
行って全体を暖めます。
こうやって暖気運転が終了すればエンジン始動となるのですが、クルマやバイクのよ
うに、バッテリーでセルモーターを回してエンジンをかける事はできません。仮にこ
れをやろうにも、ものすごく巨大なモーターとものすごく巨大なバッテリーが必要に
なり、現実的ではありません。そこで、考え出されたのが圧縮空気を使って始動する
方法です。


ピストンが上にあるシリンダーに、圧縮空気を送り込んでやると圧力でそのピストン
が押し下げられると同時に、ほかのピストンが圧縮空気を作ります。そのときに、暖
めた重油をそのシリンダーに吹き込むと自然発火して爆発行程に入り、ほかのシリン
ダーの中でも同じ現象が連続してエンジンが始動するわけです。
分量の関係でかなり簡単に書きましたが、実際には「主機」を補完する「補機(発電
機、ボイラ、ヒーター、造水器、清浄機)」などと密接に連携し、もっともっと複雑
な手順を踏んでエンジンスタートします。

次回は「エンジンの種類」のはなし


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