牛頭角屋村 その3 | らおぱんと呼ばれて

牛頭角屋村 その3

彼女の到着を知らせる携帯が鳴ったのは7時ごろでした。

「すごい雨が降っているんだけど、、、」

そんな事は言われるまでも無く、とっくに思い知っています。
団地内部の通路を進み、外へ出たところで本降りになりました。彼女はタクシーで来たとのことで、降りたところにいるようです。タクシーが止まるところといえば先ほどの屋台の横ですので、そばに屋台はあるか?と聞くと、その天幕の下にいるということでした。私も近いところにいましたのですぐに向かいました。


雨も強くなってきたので、タクシー乗り場横の屋台で(先ず)ディナーということにしました。( )内の言葉は恐らく常人の聴覚では聞取れなかったかもしれません。

時間もまだ早かったので雨に濡れず、且つ眺めのいい席に座れました。
明るい時に生じた疑問、雨が本降りになったら天幕外の席がどうなるかはごらんの通り、ほったらかしです。

らおぱんと呼ばれて-テーブル外


先ずなんと言ってもビールです。中国の屋台やレストランならたいてい、漢字二文字の国産ビールになりますが。香港ではやはり外国のビールが多いですね。ここで先ず飲んだのはカールズバーグ。これかサンミゲルが香港の料理に良く合うと思っています。

らおぱんと呼ばれて-ビール


さて気になるメニューですが、屋台と言えどくさっても香港、それなりのディナーになりました。
やはり部下といえ食事に誘った以上は、女性として尊重しなければなりませんので、料理は彼女の意見を優先的に注文いたしました。と、いうか実際のところ私には何を食べるかよりも、どこで食べるかの方が今回は重要だったので、あまり内容にこだわりが無いため適当に注文してもらいました。

らおぱんと呼ばれて-晩飯

写真左から時計回りに、

*3種類の魚がごちゃ混ぜになっている揚げ物。だそうですが、こういうの確か天ぷらって言うんじゃないでしょうか?食べてみるとイカ、白魚まではわかりましたが、あと一種類は良くわかりませんでした。入ってなかった可能性も多分にあります。からっと揚っていて酸味の利いたタレで食べるとビールによく合いました。

*白杓生蝦、おなじみ茹でた蝦。これ実はお奨め品でHK$35なんですよ。この値段は安いです。大丈夫かよとも思いましたけど。

*牛肉とたまねぎを炒めたもの。としか説明が出来ないのですが、メニューに書いてある漢字からはこういう状態は想像できませんでした。「何これ?」と注文したおねえさんも思わず声を発しましたので、ネイティブ香港人も予想が及ばなかったようです。おまけに一口食べるなり、こりゃダメ、、とのこと。私はそこまでひどいとは思いませんでしたが、肉の大きさが飲みながら食べるには不便で、結果として箸が遠のきました。

*紅焼豆腐。好きな料理です、ここのは肉が入ってないのも良かった。しかし、なんで下に小白菜が敷き並べてあったかは不明。

*そして野菜は菜心。



結果としてテーブルに並んだ料理は、自分の抱いていたイメージと少し違う感じになりました。まあ、別にどうでもいいですけど、なんかこれではまさに晩ごはんという感じです。


本当はこの隣のテーブルみたいな、いかにも飲んでますぜ、ごっつあんですって雰囲気を思い描いてたのですが、、。
ちょうどお兄さんが文学的ないい表情で、しょうべん蝦をほおばっていますね、。日本では車庫って言うんでしたっけ?。

らおぱんと呼ばれて-屋台7


さて、食べ始めたところでごはんはいらないの?と聞かれましたので、さっそく今夜の思惑を打ち明けました。


「こ、これ食べてまだ入るの?」


と驚くというよりは呆れられましたが、とにかく食べ終わってからまた考えましょうと軽くあしらわれました。

彼女とは知り合って非常に長いですから、私の奇怪な行動にはとっくに慣れているのでしょう。
今は私の仕事を手伝ってくれてますが、起業する前は同じ会社で働いていました。最も彼女は事務職で私は工場で肉体労働でしたが、ちょうどそのころに私は徳福に住んでいましたので、消え行く団地を前に昔ばなしに花を咲かせました。


「あの頃は空港が近かったからね、徳福にはキャセイのスチュワーデスがたくさん住んでたんだ、、」
「そうね、、タクシーに乗れば旧空港はすぐだったものね、、」
「HK$10ちょっとで行けたからね。それでさ、チン・サー・チョイの裏通りで安い望遠鏡を買ったんだ。」
「ふーん、夜景とか見るために?」
「いや、スチュワーデスさんの部屋が見えるかと思って、、、。」
「・・・・・・・・。」
「それがさ~、やっぱり見えないんだよね、歩いているのはたくさんいるんだけど、、、。」
「・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・。」
「そしたらある日突然、下りてくエレベーターに乗ってたらさ、途中で3人ぐらい乗ってきたんだよ。」
「へぇ、、、。」
「日本人だってわかったらしくてさ、一人が話しかけてくれたんだよね、ニホンジンデスカ?ワタシハシンガポールデスって」
「ふ~ん、、」
「そのとき気がついたんだ、同じ建物に住んでるなら望遠鏡じゃダメなはずだ、潜望鏡が要るってね、今ならUSBカメラ垂らせるのにね。」
「そんなにケーブルの長いUSBカメラなんて無いでしょ、だいたいあの人たち、今みーんなランタウ島よ!」
「そうか、、、変わったんだよね、、」


変わってしまった、、そんな話題のついでに今日気がついた歩道橋のことも話しました。そして話しの流れとは関係なく彼女がポツリと言ったのは、


「ここはきっと夏すごく暑いでしょうね、、。」
「そうだね、風向きによって内側への風は遮られることになるだろうからね。あの渡り廊下を見てごらん、風が通るように壁が格子状になっているだろう?今はどうか知らないけど昔は、ああいうところでマージャンやってたんじゃない?」
「よく知ってるのね、でもそれって私が小さい頃の話よ。あの頃はどこの家にもクーラーがあるわけじゃなかったから、、。」


私は蒸し暑い夜は時々ここへ来たことを話しました。
当時はどこでも暑かったように覚えてますが、手押し車の屋台で、あぶったするめや串に刺したものをよく買ったこと、缶ビールを買ってそこら辺を歩きながら飲んだこと等を話し、

「そうやって暑い中でも、ブラブラして帰ると不思議と良く眠れたもんだよ。」
「私ならクーラーが効いた部屋の中にいた方がいいわ。それに暑い時には衛生的な問題もあるし、、」 


人それぞれですからね。

涼を取るということは物理的に、温度が下がった状態を欲するだけではなく、一種の心理的作用からも得られるのでは、と調子に乗ってその場の思いつき論を展開しそうになりました。しかし、そういう分析思考な話はずいぶん女性(特に香港の)との間に、溝を作ってきたことを思い出し、2軒めへの移行をスムーズにするためにも余計な話は抑えました。


一本目のビールが飲み終わると、さっきは見かけなかったビール売りのおねえちゃんが来ました。

広東語で話しかけられましたが、その人には国語で話した方がいいよ、とおねえさんが言うと、ちゃんとした発音の普通話を話し始めました。

こ、これはお気遣いすいませんね、サメって聞こえちゃうものですから、、と恐縮しつつ、良く見たらこのビールねえちゃんずいぶんと可愛いかったんですよ。一見したときの印象は妊娠前のリア・ディゾンみたいでした(~後は見たことが無いので。確か、彼女だって血は何分の一だか中国系ですよね?)。

そこで銘柄はハイネケンなので、すこしゴネました。半分冗談で一本もらうから写真を一枚撮らせてほしいって言ったら、無愛想に断られ、足早に一本持ってきてドンとテーブルの上に置いていきました。


「うーん、大陸から来た子だろうね、まず香港のビールねえちゃんにしてはえらく綺麗だ。普通話の発音がちゃんとしている。それから何といっても写真取らせろと言った時の態度の悪さ。この3点から考えると、、。」
「私だってこんなところで写真撮られるのは嫌よ、、、」

しかし、そのやり取りを唖然として見ていたおねえさんの表情は、"望遠鏡の話は本当かもしれない、、"と心の葛藤を隠せないようでした。


それにしてもハイネケンは失敗でした。いや、写真のことではなくて、食事の途中で酒を変えると、料理の味わいまで変わるので、箸の進みが悪くなりました。最後の一杯を飲み干した時点で、3品は片付いていたのですがエビと牛肉の何とかはごってりと残りました。

気がつくと雨も止み、立ったままテーブルの空きを待つ客が目に付くようになりました。時間は8時を過ぎています。


「じゃあ、そろそろ次行こうか?」
「次って、ほんとに行く気なの?このエビと牛肉はどうするのよっ。」


やはり食べ物を粗末に出来ない私の性格を読まれてますね。しかし、それしきの抵抗には私にも奥の手があります。


「打包。持って帰って夜食にするよ。」


2軒目行きが決定した瞬間でした。

席を立つとすぐにテーブルが片付けられ、つぎの客が着きました。このように満席状態でこの写真の外には、先ほどまでカサをさしていた人たちの列があります。

らおぱんと呼ばれて-屋台6

それにしてもこの光景、荒くれ男たちの溜まり場みたいで迫力がありますね、、、写真だけ見ると、よく、こんなところで食べて無事に帰れたものだと思えてしまいます。


特に手前でピンクのシャツ着たおじさんが、キュートに人差し指を立ててるところなんか、まるで香港映画のワンシーンみたいです。
ビールねえちゃんも奥の方でこっちにガン飛ばしてますね。そうか、ここでズームすればよかったのか、気がつかなかった。



そして払いを終え、残った料理を包んでもらった発泡材の弁当箱2個を手に提げて、2軒目へと向かいました。



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