牛頭角屋村 | らおぱんと呼ばれて

牛頭角屋村

先週行って来た場所です。


らおぱんと呼ばれて-団地1


お話しは先ず、先々週の香港に戻ります。

会社のおねえさんから昼食時に、
「あなたが昔よく食べに行ってたって言う九龍湾の屋台、こんど取り壊されちゃうの知ってる?」
「そういえばあの辺、工事してるね、、、、」


確かに地下鉄の窓から工事しているのを見ていましたが、その時点では隣接する場所を整地しているようでしたので、その影響で屋台も営業できなくなるのか、、という程度の解釈でした。
が、後日妙に気になるのはそのあとの彼女の一言。

「~だからみんな写真を撮りに行ってる、、」


???。
屋台の一つや二つ営業できなくなるくらいで写真を撮る?超現実的な香港人もずいぶん感傷的になったもんだと思ったものです。そのときはイースター直前で私は連休中に公明へ行く予定があったため、サンプル等の荷物をまとめてさっさと事務所を後にしました。


その後、2~3日経ってから"写真を撮っている"の件が気になり始め、ネットで検索をしてみました。中文のサイトもいくつかヒットしたのですが、知りたかったことがズバリ冒頭に書かれており、たいへん内容濃く紹介されているのはこのサイトでした。

それでも半信半疑でした。そこで香港は連休中でしたので、このサイトのURLを貼り付けて彼女にメールしておきました。


(このあいだ話してくれた九龍湾の件、このサイトで見たんだけどもしかして団地も含めてアレ、全部撤去しちゃうの?)

以下返信原文のまま。

(As the above website showed, the Ngau Tau Kok Estate which is the public rental housing, is being redevelopment. So, the restaurants and shops in the building are needed to move out within this month.)意:"そーよ、あのサイト見てのとおりよ、あの公営住宅全部ぶっ壊して再開発するの、だからあんたの好きな屋台も縁日も今月中にはたたき出されるわ!やっとわかったのね!フンッ!"

おおおおお、、、そうだったのか、そりゃ写真も撮るでしょうね、、、。


らおぱんと呼ばれて-団地2


地下鉄MTR観糖線は九龍湾駅の手前で地上に出ます。そして最初に停車するホームの真正面にどーんと立ちはだかるのがこの公営住宅群です。これを再開発するということは、九龍湾駅片側の眺めがガラリと変貌することになりますので、数十年見慣れた景観を写真に留めておきたい、と思うのは香港人でなくともその気持ちはわかります。

らおぱんと呼ばれて-団地3


そして、私にもこの場所には特別な想いがありました。


この公営住宅から九龍湾駅を間に置いて、反対側に位置するのが徳福花園という広大なマンションです。地下鉄の車庫の上に建てられた徳福花園は九龍湾駅の改札がそのまま玄関口になっており、今からちょうど20年前の1989年初めに私は、又一村から徳福花園に引っ越してきました。そして、その後数年をそこで過ごすことになります。


徳福は現在でこそ巨大なショッピングモールや有名レストラン多数を有し、観光地並みの賑わいを見せるようになりましたが、その店舗群も当時は居住者の生活を支えることを主体とした程度の規模でした。それでもマックやピザハットはありましたし、当時としては充分豪華な環境といえますが、タクシー乗り場付近に肉や野菜を売る市場が普通にあったことなどは、今の様子からではちょっと想像し難いかもしれません。


そして公営住宅の後ろに位置するのが淘大花園です。これは日本のニュースでも報道されましたので、ご存知の方もいるかと思いますが例のサーズで隔離されたマンションです。徳福に比べテナント料が安かったのでしょうか、淘大にはCD屋のようにわりと小規模でレアな店舗が多かったように憶えています。当時はまだマックに比べ、少なかったケンタッキーもありました。吉野家のマークもそこで見かけたような気がするのですが、曖昧な記憶なので日本の味を想うあまりに見た幻覚だったのでしょうか?


このように書くと非常に便利な環境ですが、やはり夜遅くなると開いているのはセブンイレブンぐらいのものでした。また当初徳福には一軒だけ麺の店がありましたが、大して美味しくも無く、しばらくすると閉めてしまったのです。そこでいつの頃からか胃袋の直感を頼りにフラフラと出向くようになったのがあの公営住宅下にある屋台街でした。

今にして思えば食欲を満たすというよりも、孤独な海外生活の寂しさを紛わすという意味合いの方が強かったのでしょう。東京の下町で生まれ育った私には、裸電球の灯りに照らし出された生活感と活気に満ちた様子は妙に懐かしく、癒される心地よさを微かに覚えたものです。


今でも会社に行くときに九龍湾は途中の駅なので、地下鉄の窓越しにしょっちゅう目にしてはいました。しかし徳福を離れてから10数年、あの公営住宅を訪れることはまったく無かったのです。これで永遠に消え去ってしまうのであれば、とにかく一度行っておかなければと思いました。写真も撮りたいし、まだ営業している店があるならもう一度食べてみたい。そんな強い想いから途中下車を決めました。


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