旧法でも中古を含む、ということについて。 | 音楽リスナーとPCユーザのための著作権パブコメ準備号

旧法でも中古を含む、ということについて。

旧法でも中古を含む、ということについて。

ええと。
条文上、中古品は除外されていないので、経産省が「含む」と言っている以上、含むと解釈するしかありません。困ったことに。

長作があたった法令集や古い解説記事には、まったく中古品のことについては触れられていませんでした。含む、と書いていないし、除外するとも書いていない。

つまり、約50年にわたって、通産省/経産省は、それを周知してこなかったということですね。そして、中古を含むと知りつつ中古品の販売に多大な影響を及ぼすことが明らかな法改正時にも、周知を怠ったということです。

古い資料を探してみました。

(10)販売の制限
 <略>
 この法律は、第一次的には、電気用品の製造事業者および輸入事業者を規制するものであるが、かような規制とともに、違法に製造または輸入された電気用品の流通自体を阻止しなければ、一般の使用者が不測の災害をこうむることを完全に防止することは困難であるので、新たにこのような販売の制限を規定することとしたのである。

通商産業省公益事業局公益事業課坂井清志「電気用品取締りの改善合理化--製造・販売を規制して,危険,電波障害の発生を防止(電気用品取締法案) 」『時の法令』(通号 388) [1961.05.23]

 

 販売業者については、従来、なんら義務づけられていなかったが、一度流通した製品はなかなかおさえられなかったため、次に述べる使用制限とともに、販売制限が設けられた。製造事業者や輸入事業者に対する取締りが完全であれば、このような段階は必要ないのであるが、違法品の販売が禁止されていないと、製造業者や輸入業者が違法品を製造し、売りさばく例が絶えないので、不良品防止の実効を上げるために▽〒などの表示のない電気用品の販売を禁じたものである。

p27,『電気用品読本 : 電気用品取締法とその解説』 / [オーム社∥編] / オーム社 , 1962

本来は「このような段階は必要ない」のだが、「製造業者や輸入業者が違法品を製造」して違法品が流通することを防ぐために販売が規制されているのであって、「古いもの」が危険であるという認識は見られない。「製造業者や輸入業者が違法品を製造し、売りさばく例が絶えない」ことを規制する方策として、販売業者への一部負担を求めたと言える。この場合、規制される販売としては「最初の販売」が第一である必要がある。最初の販売でチェックされなければ、「一般の使用者が不測の災害」を被る。

当時の椎名通商産業大臣による電気用品取締法安定案理由説明(p107,『電気用品読本』)には、「最近における家庭電化ブームの進展に伴い、電気による火災・感電事故等の災害も漸増の傾向を示しておりますが…」とあるから、電気用品の状況は今と同じではないだろう。電気用品の流通量そのものが少なかっただろうし、旧電気事業法に基づく、旧電気用品取締規則(昭和10年)によって▽〒マークが26年前からあったため、中古品でも販売時に表示を必要とすることは、それほど無理なものではなかったはずだ。猶予期間が26年あったようなものだから。

つまり、電気用品取締法における販売の規制の対象として、中古販売はその目的として重要なものではないが、実態として規制されても大きな影響はなかったと思われる。

だから、まあ、たとえ当時の資料にまったく中古販売の記載がなくても、当時から中古販売が対象だったということなのかもしれない。

でもな。だとしても、電気用品安全法への法改正時は、「販売」に中古販売を含むと認識していたのであれば、明らかに中古販売業者には影響が及ぶのだから、法改正時から周知に励まなければいけなかったのは言うまでもない。しかし、中古販売業者への周知がされていなかったのは既に知る通りではあるが、中古販売業者が対象であると認識出来るような説明も見あたらない。ま、以下は既に各所で指摘されていることではあるが。

附則(平成一一年八月六日法律第一二一号)
第五十条  移行電気用品に付されている旧電気用品取締法第二十五条第一項又は第二十六条
の六第一項の規定による表示及び前条の規定による表示は、第十条の規定の施行の日から起算して移行電気用品ごとに五年(製造から販売までに通常相当の期間を要する移行電気用品として政令で定めるものにあっては、十年)を超えない範囲内において政令で定める期間を経過する日までの間は、電気用品安全法第十条第一項の規定により付された表示とみなす。

もうひとつ。

法律改正内容の解説及び経過措置/(9)経過措置/ii 流通に係る経過措置
 流通に係るものでは、いわゆる流通ストックとして販売店等に存在する旧表示品の販売期間が制令において用品ごとに定められており、基本的には5年を超えない範囲で、ただし、特に流通実態上滞留期間の長いものにあっては10年を上限として定められている。
 なお旧法における適法品に製造や流通期限を定める理由については、多数の品目で新旧の表示品の混在が長期間続くことが効果的な事後規制を行う上で好ましくないこと、また新法の施行にあたり速やかな移行が求められることから、製造流通実態等を考慮し事業者等にとって影響を最小限とする範囲で用品ごとに製造流通期間の上限を定めることとしたものである。

『電気用品安全法関係法令集』日本電気協会、平成16年と平成14年版を確認

「製造から販売までに通常相当の期間を要する」ことをもって、経過期間を定めている。これは製造から直接販売へという流れにおいては5年という期間あるいは10年を定めることで製造事業者及び新品の販売事業者は対応可能であると思われる。しかし、一般に中古品においては、5年、10年の使用の後に中古品販売業者が買い取ることも少なくない。こうした消費者が使用している期間も含めて流通実態上の滞留期間と考えるのならば、経過措置は数十年のオーダーで規定するべきであろう。

なお、これらをもって、旧法あるいは新法では「中古が含まれていない」のではなく、「中古を含んでいるにもかかわらず」経過措置は5年しか取られていないということであることに再び注意。

以下、中古品を含むとも除外するとも書いていなかった参考資料

『電気用品安全法関係法令集』 ; 平成16年10月改正 / 日本電気協会 , 20041130
『電気用品安全法関係法令集』 ; [平成14年版] / 日本電気協会 , 20020520
『電気用品取締法関係法令集』 ; 平成10年3月改正 / 日本電気協会 , 19980625
『電気用品読本 : 電気用品取締法とその解説』 / [オーム社∥編] / オーム社 , 1962

「電気用品安全法ガイド--電気用品取締法から電気用品安全法へ / 鈴木 一弘 」 OHM. 88(9) (通号 1107) [2001.9]
「特集 電気用品取締法から電気用品安全法へ / 関東経済産業局資源エネルギー部施設課 」 いっとじゅっけん. 46(5) [2001.5]
「業務資料 電気用品取締法の改正について 」 行政書士とうきょう. (通号 370) [1999.10]
「電気製品認証協議会発足の背景と今後の動向--電気用品取締法施行令改正にそなえて発足した助言組織 / 資源エネルギー庁公益事業部電気用品室 」 OHM. 82(1) [1995.01]
「電気用品取締法の体系と最近の動き (家庭電気製品と安全 ユーザーを火災や感電事故から守るために(特集)) / 大西 秀和 」 電子技術. 15(10) [1973.10]
「電気用品取締りの改善合理化--製造・販売を規制して,危険,電波障害の発生を防止(電気用品取締法案) / 坂井 清志 」 時の法令. (通号 388) [1961.05.23]