議員立法のためのお願い文案 | 音楽リスナーとPCユーザのための著作権パブコメ準備号

議員立法のためのお願い文案

Bewaadさんの提案を受けて、議員立法のためのお願い文案を作ってみました。

議員立法には衆議院議員20名ないし参議院議員10名が必要ですから(国会法第56条第1項)、それだけの人数を集められる議員である必要があります。

直接議員に働きかけようとする方は、この文案を参考にしてください。コピペでもおれは構いませんが、送り先によって強調すべきポイントは異なるでしょうし、送り手によって実感を込められるポイントも異なるでしょう。法案のところについては、どちらかに絞った方がよいかもしれません。

こちらも是非ご覧になってください。

Bewaad Institute@Kasumigaseki
■ [law][government][politics]電気用品安全法反対運動の1つのあり方(マニュアル編)
http://www.bewaad.com/20060221.html#p03
■ [law][government][politics]電気用品安全法反対運動の1つのあり方(解説編)
http://www.bewaad.com/20060222.html#p02

→Bewaadさん
いろいろありがとうございました。
「2.経過措置を延長し、その間に代替措置を検討するものであること」の部分について、いくらかこちらで書き加えた部分が蛇足であると思われるかもしれません。
「名機云々」に限定することで、困っている人が限定されてしまうことを長作は懸念しています。
経過措置延長を現時点での唯一の目的とすることでは、共に働きかけをするであろう方々の反発を受ける可能性があります。また、あと1年継続してこの問題を追い続けるという覚悟を現時点で決めるのも難しいと思われます。そのため、一応の直接の打開案を遠慮がちに並記し、先方に判断を委ねるという構成にしてみました。

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 既に新聞やテレビでも報じられていますが、電気用品安全法の実施により大きな混乱が予想されています。お忙しいなか恐縮では御座いますが、電気用品安全法の実施について、以下の通り、お願いをさせていただきたく存じます。

長文となってしまいますが、ご容赦ください。あらかじめ要約すれば、次のとおりになります。

1:電気用品安全法が実施され、PSE表示のない電気用品の販売ができなくなることで、さまざまな形でさまざまな人々が大きな影響を受け、混乱することが予想されます。
2:法改正の経緯と安全性について検討してみます。
3:以上を踏まえ、議員立法による混乱の回避をお願いします。

1▼予想される影響

法の目的であるところの「電気用品について消費者の安全を確保」することに異論はありません。法改正の目的であった規制緩和についても同様に異論はなく、それに対応して安全性を保持するための規制が行われること自体に不満があるわけでもないのです。

困っているのは、中古市場の全面的な規制についてに限定されます。その影響が甚大であることをご理解頂きたいのです。

1-1▽中古品業界

中古電気用品を「販売」する中古店・リサイクルショップや楽器店などは、直接の影響を受けます。「大手の生活創庫(静岡県浜松市)。販売禁止になる商品在庫は約16億円分もある」とされる一方、「小規模な個人経営が多い中古品業界では、春から売れない在庫を抱えて倒産が相次ぐと悲観する声があがる」など、その窮状は既に報道などでも明らかです。

2月20日 asahi.com
中古家電、知恵絞る 電安法、4月から本格実施
http://www.asahi.com/business/topics/TKY200602200084.html
2月18日 asahi.com(朝日新聞)
中古家電、もう売れない? 電気用品安全法が猶予切れ
http://www.asahi.com/life/update/0218/005.html

在庫商品は販売出来ないだけではなく、処分しなければならず、その費用もかかります。また、販売可能なPSE表示付電気用品は、いちど新品の購入・使用を経て中古市場に流れるのですから、商品の補充も困難となります。

問題は「販売」する店だけでは留まりません。

1-2▽報道などに見る認識

販売されているものを買う人たちがいます。直接規制されてはいませんが、販売が禁止されれば買取はなされないでしょう。中古店に品物を持ち込んで買い取ってもらう人たちがいます。

 「中古品販売事業者の方やAVマニアの方が困っていらっしゃるのは承知している。しかし製品が法律の対象となっている限り、ご理解いただくしかない」(経産省)
2月14日 ITmediaニュース:「名機」が販売禁止に 4月に迫る「電気用品安全法」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0602/14/news017.html

オーディオファンへの影響は経産省でも認識されているようですし、報道等では坂本龍一氏の動きがあったことから音楽家への影響も扱われています。

オーディオファン、(アマチュアを含む)音楽家、およびレトロゲームの愛好家らが最初に中古販売規制に反応したのは事実ですが、影響は彼らに留まるものではありません。

1-3▽一般的な消費者と事業者~経済的な問題

第一に想定されるのは、経済的に中古を買わざるをえない人たちです。これは、通常の家電などだけではなく、業務用の電気用品を使用する事業者にもあてはまります。

不況が続く中で、頻繁に新品に買い換えるだけの経済力を持つ人は多くありません。一人暮らしを始める学生(またはその親)にとって、身のまわりの電気用品を中古で揃えると言うことは珍しいことではないでしょう。引っ越しなどの場合では、逆に古い電気用品を買い取ってもらうことで新居での電気用品の買い取り資金とすることも多いでしょう。

電気用品の対象は、家電に限るものではありません。業種によって、特に中小~個人規模での事業では、業務用電気用品を中古品で入手することは避けられないこととなっていますし、手放す場合は買取を前提として資金繰りをしていることが考えられます。高額なものについては、電気用品を担保として融資を受ける場合もあります。

必要な機能を持ち安全性に不安がなくとも、新品を購入することを強いることになれば、新規に事業を立ち上げることは困難になります。対して、これまで事業を行ってきた人々は、手元にあったはずの資産が突然失われます。新しい電気用品を買えば済む、と言ってはいられない、社会的・経済的弱者に大きな影響を与えることになるのです。

1-4▽文化・芸術・歴史

経済的なことだけではなく、代替不能性も大きな問題となります。

かつての電気用品が備えていた機能が、今日の電気用品には備わっていないことは多々あります。8mm映写機やベータ・ビデオ・デッキ、古いゲーム機など、既に用いられなくなった規格に対応した電気用品は、中古品以外での入手は困難です。一部で対応機器の生産が続いていたとしても、高級品だけであったり逆に普及品だけであったりして、ユーザが求める品質・価格と合致しないことも多いようです。これらの機器の入手が難しくなることは、同時に対応したソフトウェアが持つ価値を損なうことになります。写真機材なども、じょじょに新規生産が行われなくなることで照明や引伸機などの入手が困難になれば、作品が生み出せなくなってしまいます。

古い楽器には、それを使わなければ出ない音というものがあります。どれほど精巧なレプリカであっても、ホンモノのストラディヴァリウスと同じ音色が得られないように、シンセサイザーやエフェクターやアンプには、現行の機材では代用がきかないものが多く存在します。これらの機材には、歴史的な価値があるだけではなく、古い楽器を用いて新たな文化・芸術の創造が行われています。

柳宗悦を引き合いに出すまでもなく、およそこの百数十年の間に用いられてきた電気用品は、生活に根ざした文化そのものでもあります。特別な機能を持たなくても、時代を表すデザインというものもあります。茶箪笥や卓袱台や織物が文化であるのと同じように、扉付のテレビや銀色に輝くトースターやピースマーク型のライトや無機的で安っぽいモノトーンの炊飯器も文化なのです。

PSE表示なしの中古電気用品の販売を禁止することとは、すなわち、法改正以前のすべての電気用品の販売を禁止することです。以上述べてきたような、経済的な影響や文化的な損失は計り知れないものがあります。

このほか、資産価値がなくなることによって税処理上どうなるか、修理によってPSE再取得をした場合の商標や特許との兼合、廃棄するならば環境問題にも繋がりますし、輸出するならば相手国との関係悪化も懸念されるなど、販売や入手困難性だけでなく各所に問題が波及する可能性もあります。

2▼法改正の目的と経緯

2-1▽法の目的と法改正の目的


小寺信良:電気用品安全法は「新たなる敵」か (Side A)には、次の発言が引用されています。

 PSE法のそもそもの目的とは、「非常にシンプルで、電気用品について消費者の安全を確保するためなんです」と経済産業省 商務情報政策局 消費経済部 製品安全課 課長補佐の福島 伸一郎氏は言う。

 そもそもここで言うPSE法とは何かを注意しておく必要があります。第一条で「この法律は、電気用品の製造、販売等を規制することにより、粗悪な電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的とする」と謳う電気用品取締法がありました。法改正によって名称が電気用品安全法となり、規制緩和の一環として基準・認証制度が民間事業者に開放されました。法改正によって変更された第一条には「この法律は、電気用品の製造、販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより、電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的とする」と書かれています。

つまり、電気用品取締法/電気用品安全法は、消費者の安全を確保するための法律ですが、「電気用品安全法」への改正は消費者の安全を確保するために行われたものではなく規制緩和の一環として行われたということです。

2-2▽安全性の問題

安全面について、検討しておきます。

PSEマークがついていない中古の電気用品を販売すること、それを購入して使用することは、どれほど危険なのでしょうか。

言うまでもなく、PSEマーク事自体が安全性を向上させるものではないです。貼れば安全になる魔法があるわけではない。

PSEシール導入が決まった99年以前に作られたも電気用品と、この06年4月1日以後に作られる電気用品の間に、安全性の面で大きな違いがあるのでしょうか。 

法施行後のパブリックコメントの資料「(別添)電気用品安全法に基づく電気用品及び特定電気用品の指定について」では、「電気用品の安全性向上につながるような技術革新は平成7年以降、特段認められていない」という認識が示されています。では、平成7年以後今日までに「電気用品の安全性向上につながるような技術革新」はあったでしょうか? 残念ながらそのような革新はなかったように思います。

経年変化による劣化は、電気用品が常に抱える問題ではあります。

しかし、これはすべての電気用品に当てはまることであり、また中古市場を経由しようがしていまいが大きな違いがあるものではない。また、発火などの可能性は、経年変化などよりも、構造上の問題や無理な使用法に起因すると考えるのが自然でしょう。中古品は、何年かの実用に耐えたということを示すものであり、未だ実際の使用状況に置かれていない、初期不良の危険性がある新製品との間での安全性の比較は、経年変化による劣化だけを持って行うべきではない。実態として、製造販売後同期間を経た後に継続使用よりも中古市場を経由した方が重篤な事故に繋がることが多いという実態があるなど相応の理由があるならば、中古販売規制について検討も必要でしょう。しかし、一般に経年変化による劣化の危険性を抑える方策としては、中古品の販売規制が適切なものではないと思われます。

2-3▽中古品規制の根拠

では、なぜ中古品の電気用品の販売を規制するのか。

「これまで『特定電気用品以外の電気用品』のほうには、安全検査済みを表わすマークがなかったんです。以前はあったんですが、一時期なくした時期がありまして。今回の法改正では、規制緩和の流れの中で政府の関与を極力減らすということで、自己責任に基づく製品流通という方向に変わったわけですが、マークもないのでは自主規制にも齟齬があるということで。今回の法改正で、この表示と法律が合うことは、我々にも消費者にもメリットがあると考えています」(福島氏)

という主張には、いちおうの筋は通っています。

『電気用品安全法関係法令集』(2002年度版p44、2004年度版も同様の記述)では、次のように解説されています。

法律改正内容の解説及び経過措置/(9)経過措置/ii 流通に係る経過措置
なお旧法における適法品に製造や流通期限を定める理由については、多数の品目で新旧の表示品の混在が長期間続くことが効果的な事後規制を行う上で好ましくないこと、また新法の施行にあたり速やかな移行が求められることから、製造流通実態等を考慮し事業者等にとって影響を最小限とする範囲で用品ごとに製造流通期間の上限を定めることとしたものである。

この一時期の「表示なし」電気用品の扱いについて考えてみましょう。

「表示なし」の期間に製造された電気用品は、表示がなくとも安全性は保証されているものと考えられます。「表示なし」の期間以外に表示がない電気用品は製造・販売することができません。今後は、製造と最初の販売についてPSEの表示が義務づけられてさえいれば、基準に合致しない電気用品は流通することが不可能となります。ならば、現在中古市場に流通している「表示なし」の電気用品が問題視されているものではないという前提をひとまず設定することができるはずです。この場合、「表示なし」製品の存在は、自主規制あるいは「効果的な事後規制」について問題は発生しません。

では、この前提が間違っているのでしょうか。

 「以前ですが、新品で製造したもので安全基準に合致していない製品が中古として流通している、という情報があったんです。調査したところ真偽のほどは明確にならなかったんですが、実際にそういう可能性は否定できない。何かあったらこの法(PSE法)を運用して、中古市場で問題があった場合に対処する、という体制になっているわけです」(福島氏)

「新品で製造したもので安全基準に合致していない製品が中古として流通している」という可能性があるとすれば、「何かあったら」、「製造」および「最初の販売」の段階での規制さえあれば、対処することは可能と思われます。真偽のほどが明確ではない段階で、「何か」がない状態の中古市場を規制するほどの理由とはなりえません。

3▼議員立法のお願いと法案


国民として、もっと早く気付くべきではあったでしょう。しかし、国会や意見募集では中古販売について十分な説明があったとは言えませんし、「関係業界に説明したり、官報などで告知してきた」が、「説明が十分に行き渡っていなかったかもしれない」と、経産省も告知不足を認めている通り、法改正時、また経過措置期間に十分な広報がなされたとは言えません。

とはいえ、4月になれば多くの電気用品の経過措置が終わり、法改正以前の電気用品は販売ができなくなってしまいます。これによって、指摘した様々な混乱が生じます。既に、投げ売りセールを始める店も出てきているようです。事態は急を要します。

条文を読む限り、電気用品安全法上の電気用品に中古品が含まれるのは法解釈上間違いがないものと思われます。

そこで、議員立法でこの問題を回避できないかと考え、御相談させて頂いている次第です。

二通りの考えがあります。

1▽
一つは、以下の通り条文を改正することです。

第二十七条  電気用品の製造、輸入又は販売の事業を行う者は、第十条第一項の表示が付されているものでなければ、電気用品を最初に販売し、又は最初の販売を目的として陳列してはならない。

法改正の意図などを考え、また経産省が指摘している問題点を踏まえれば、最初の販売時にPSE表示がないものの販売を禁止することで十分だと思えます。基準を満たさない電気用品が中古店から流通するなどの場合、買取の記録がないものについては、開封されていても最初の販売とみなせ、中古店での販売でも改正二十七条違反とすることができるでしょう。通常の中古販売においてPSE表示なしの電気用品の販売を禁止しなければ、上で述べてきた問題が生じることはありません。ただし、素人考えですので、どこかに穴があるのかもしれません。

2▽
より慎重な二つめの案としては、1年程度の期間を区切って経過措置を延長し、その間を法改正の主眼である規制緩和と安全性の保持について、妥当な解決策を編み出すための検討期間とすることが考えられます。古い電気用品で安全上問題となる実態、検査基準に適合しない電気用品の中古店での販売の実態などを調査しつつ、中古電気用品の販売業者、各種事業者、音楽家、消費者等の意見を踏まえ、また省庁間の調整なども行って、適切な措置をとることで、多くの問題は回避出来るでしょう。

<以下この場合の法律案>

通商産業省関係の基準・認証制度等の整理及び合理化に関する法律の一部を改正する法律案

通商産業省関係の基準・認証制度等の整理及び合理化に関する法律(平成十一年法律第百二十一号)の一部を次のように改正する。

附則第五十条第一項及び第二項中「五年」を「六年」に改める。

附則

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。

(検討)
第二条 政府は、平成十九年三月三十一日までの間に、通商産業省関係の基準・認証制度等の整理及び合理化に関する法律附則第四十六条第一項に規定する移行電気用品の販売、所有及び使用の実態を勘案して、移行電気用品に係る電気用品安全法(昭和三十六年法律第二百三十四号)の規定の円滑な実施を図るために必要な措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

2 前項の検討に係る事務は、経済産業大臣が行うものとする。

3 経済産業大臣は、第一項の規定による検討を行うに当たっては、公聴会を開き、広く一般の意見を聴かなければならない。

4 前項に定めるもののほか、公聴会について必要な事項は、経済産業省令で定める。

<以上法律案>

以上、よろしくご検討くださいますよう、お願い申しあげます。