入試過去問とか学習教材と著作権ていうか。 | 音楽リスナーとPCユーザのための著作権パブコメ準備号

入試過去問とか学習教材と著作権ていうか。

Copy & Copyright Diaryで「期待を込めて紹介」
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20060129/p1

されているのが、

入試過去問と著作権を考える blog
http://d.hatena.ne.jp/phenotex/


おれも期待します。

試験問題と著作権の問題はすんげえややこしそうで、ちょっと把握し切れてない。

ごちゃごちゃ考える前に対応策を、というのは、現場の人ならではの判断で素晴らしい。
対応の早さと柔軟さが、予備校と学校の質の違いをも示してたりしてな。
学校の先生や保護者の皆さんも、ちゃんと組織的に動いてほしいものです。

そして、著作権保護期間延長で、死後50年経ったものも使えなくなるなんてことがないようにナムナム。

___________________

えーと。ちょっと前に話題になったのがこの記事。

asahi.com:国語テスト、消える長文 著作権理由で訴訟も - 暮らし
http://www.asahi.com/life/update/0925/003.html

なくなってるな。キャッシュ↓
http://216.239.51.104/search?q=cache:L0dnYyBMQCEJ:www.asahi.com/life/update/0925/003.html+%E6%95%99%E5%AD%A6%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E5%8D%94%E4%BC%9A%E3%80%80%E6%97%A5%E5%9B%B3%E5%8D%94&hl=ja&ct=clnk&cd=8

ここでの検討が詳しいので、ご参考まで。

言いたい放題 - 国語テストで消える長文は誰のせい?
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050926/1127672137

ただ、朝日の記事にある
「日図協は従来、加盟する教材出版各社から負担金を集め、教科書会社側の団体に「使用料」(04年度は1億8900万円)として支払ってきたが、著作権者の手元に渡ることはなかった。」

というのを、言いたい放題さんは

教科書会社に使用料を払うという感覚があるのであれば、
その教科書中の作品についても同様の「使用料」を払うという感覚はあっていいと思うのだが…。

と受け取ってる。

ところが、この年額2億円のなかに、原著作者への使用料も含まれていると認識していたと日図協は主張している(下の判決文参照)。日図協の主張は、契約状況などから否定されている。困ったことに、日図協は裁判で原著作物の教材への掲載を「引用」だと主張したりしていて、素人目にも心証の悪い、しかも争点のずれる争い方をしているので、「使用料」が何に対するものか、という疑問が残る。

ついでに

 大手の教材出版社の一つ、日本標準の担当者は「テストの場合も、著作権法で許されている引用だと思っていた」と話す。だが今後については、ある出版社幹部は「採算が取れないから要求に応じるのは……」と難色を示す。

と、出版者側の声も朝日の記事で紹介されているけど、
引用ってのはあり得ないだろ。で、採算のほうですが、通常の印税に従えば販売価格の10%、まあ5%程度上乗せするとして。で、解答・解説執筆者と原著作者での分配比率を決めて、これを原著作物の数で割ってそれぞれの権利者に支払うってことで、採算取れないのか? あるいは権利者は不満なのか? 赤本なら、最新の年度の問題以外は使い回しなので、新規掲載分とその他に多少格差を付ける必要はあるか。

上に出て来る教科書会社側の団体というのは、有限責任中間法人 教学図書協会のことで、「教学図書協会は、当協会に加盟している教科書発行会社(委託者)が保有している著作権等を受託しています」という団体。著作権等管理事業者です。

 平成12年11月、多様な著作物の著作権管理に対応するために、従来の仲介業務法に代わって「著作権等管理事業法」が制定されました。当協会も、著作権等管理事業者として文化庁に登録申請し、審査を経て平成14年4月16日付で正式に登録されました。
 教学図書協会は、当協会に加盟している教科書発行会社(委託者)が保有している著作権等を受託しています。
 当協会が文化庁に届け出た管理委託契約約款には、委託者からの受託の範囲を次のように定めています。
 ○児童・生徒を対象とした学習書・視聴覚教材への教科書の利用
 ○上記以外の印刷物・視聴覚教材への教科書の利用

さて、では、この年額2億円近い謝金は、何に支払われているか。
名目上は「教科書を使用する際の対価」とされているようです。そこに、原著作物の使用料が含まれていないということになっている。教科書そのものもまた著作物ですが、その創作性は、文法など書き下ろしと思われる部分を別にすれば、読解などは原著作物の選択と(抜粋と)配列、およびそれに付される課題や問題などにある。おれが中学生の記憶をたぐるに、「教科書ガイド」と呼ばれる教科書そのものの解説と設問の回答・解説を載せたような本があったのだけど、これは教科書の創作性を明らかに利用している。しかし、一般的な学習教材は、教科書の編集の著作物の部分に準拠している部分はあるが、テスト問題として教科書で使用されている作品を利用したとしても、その利用料が教科書会社に支払われる理由は特にないと思われる。で、双方の認識の違いと、謝金の額の妥当性が問われるわけだ。

これをさらにややこしくするのが、白表紙本と呼ばれる教科書検定申請用図書が検定決定前に流出している問題で、日図協から教材会社に流出した。この提供に対する対価ではないかという疑いが、しばしば国会でも指摘されている。

教科書業界の闇、て感じですね。

ちなみに日図協の会長は代々文部省の天下りポスト。



まあ、こうした経緯をふまえると、
●日本ビジュアル著作権協会が訴訟しまくってるのは、わからないでもない。でも、出版差し止めや懲罰的額の請求というのは、やりすぎ。あなたたちも自分の作品をリスペクトしてください。

参考まで。
benli:赤本掲載部分を読まれただけで満足されてしまう作品なんて
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2005/04/post_7f94.html

●教学図書協会と日図協は、謝金の位置づけを明確にして原著作者への使用料を支払うシステム作りを急ぐ。双方の認識の違いをもとに、謝金の再調整と原著作物への使用料の流れを作ればいいって話だと思うんだけど、そういう気配はないっぽい。天下り先の団体と著作権等管理事業者の調整ぐらい文科省でさっさとやれって話だな。

こういうことは1年でも問題が生じると、その年の受験生、各種学校で学ぶ児童生徒の理解と人生に重大な影を落とすぞ。

________

以下、適当にリンクとか資料とか

(社)日本図書教材協会(日図協)
http://www.nit.or.jp/

有限責任中間法人 教学図書協会
http://www.kyogaku-tosho.jp/index.html

教科書に準拠した副教材の「著作権・使用料」問題
http://blog-tech.rikunabi-next.yahoo.co.jp/blog/hirabayashi/33

白表紙本はどこから流出するか
http://blackshadow.seesaa.net/article/2804628.html

教科書準拠教材の著作権侵害及び教科書検定における「白表紙本」流出への対処に関する質問主意書と答弁
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/161/syuh/s161013.htm
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/161/touh/t161013.htm

_______
◆H13.12.25 東京地裁 平成12(ワ)17019 著作権 民事訴訟事件
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/FFA46EB866FF7A7E49256B7D0002B361/?OpenDocument

(5) 争点(4)について
【被告の主張】
①教科書に準拠した教材である本件各書籍が教育上必要であること,②教科書に準拠した教材の市場が形成された経過とその中で日図協と教学図書協会(以下「教学協」という。)の間に協定が結ばれたこと,③教科書の検定・採択制度があることによって,教科書に準拠した教材においては必然的に原著作物を使用しなければならないこと,④日図協と著作者の会の間で権利処理慣行が形成されていること,⑤教科書に準拠した教材は30年以上前から市場に存在するものであり,原著作者のほとんどが①ないし③を認知していること,⑥著作者の会が中心となって教科書に準拠した教材に関する原著作物権利管理事業が行われ,それによって適正なルールが形成されていくこと,⑦被告は,日図協を通じて教学協に対して支払われている謝金によって,原著作物の使用料を含む代価を支払っていると理解していたこと,⑧被告は,日図協を介して,原告らを含む原著作者に対して使用料支払を提示していること,⑨差止めによる被告の損害が多大であること,⑩差止めによって教育現場が混乱すること,⑪差止めによって教科書に準拠した教材の市場全体が消滅すること,⑫本件訴訟の実質的当事者はG(以下「G」という。
)であり,Gは教材会社に対して実損害からかけ離れた巨額な賠償を請求し,原告らとの間ではその半分以上を取得することを約していること,⑬原告らやGが設定する高い使用料に応じられる主力教材会社に対してのみ許諾されることになり,教材の自由市場性が害されること,⑭原著作物の出版から教科書掲載を経て教科書に準拠した教材の出版に至る経過は原著作物の経済的価値を減少させるものではないこと,⑮原著作者である原告らの損害額は使用料相当額を超えるものとはならないこと,以上の事情からすると,原告らの請求は権利濫用に当たる。
6 争点(4)について
 被告主張の各事情のうち,⑤の原著作者のほとんどが①ないし③を認知していること,⑥及び⑨ないし⑭については,これらの事情が証拠上認められない。また,①ないし④,⑦及び⑤のうち教科書に準拠した書籍は30年以上前から市場に存在するものであることについては,証拠(甲26ないし31の各1,2)によると,日図協を通じて教学協に対して支払われている謝金には原著作権の使用料が含まれているとは認められないうえ,これらは主に被告側の事情であって,これらのみで,原告らが権利を濫用していることが基礎付けられるということはできない。さらに,⑧については,著作物を許諾するか否かは著作権者である原告らの判断に委ねられているから,原告らに使用料支払を提示した事実によって,原告らが権利を濫用していることが基礎付けられるものではないし,⑮は,損害額算定の問題であって,そのことからちに原告らが権利を濫用していることが基礎付けられるということはできない。
したがって,被告の権利濫用の主張は採用できない。

_____
◆H15. 3.28 東京地裁 平成11(ワ)5265 著作権 民事訴訟事件
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/D1A59C1C4327A0F649256D4400110B36/?OpenDocument

(6) 争点(6)について
【被告ら(被告株式会社文溪堂を除く。)の主張】 
 ①被告らは教科書出版会社に対し,謝金を支払うことで教科書掲載作品の利用について,著作権を含む権利処理が行われたものと信じて30年余にわたり支払い続け,業界慣行が維持されていたこと,②被告らの業界団体である社団法人日本図書教材協会(以下「日図協」という。)と小学校国語教科書著作者の会,社団法人日本児童文学者協会及び社団法人日本児童文芸家協会との間で協定が結ばれたこと,③本件国語テストにおいては,教科書に準拠する必要があり,教科書に掲載されている著作物を出題文として利用する必要があること,④本件国語テストが本件各著作物の通常の利用方法に代替したり,これに競合したりするものではなく,一般書籍の販売に悪影響を及ぼす余地がないこと,⑤原告が被告らによる本件著作物の利用を許諾しない場合,図書教材の内容及びこれを用いる教育現場に重大な影響を及ぼすこと,以上の事情からすると,原告の請求は権利の濫用に当たる。
7 争点(6)について
(1) 前記第2,4(6)【被告らの主張】中の①について
  証拠(甲48の1,2,甲77の1ないし7,乙4の1,乙45の7ないし9,乙64)と弁論の全趣旨によると,被告らは,日図協及び教学図書協会を通じて,教科書出版会社に対して,教科書に準拠した教材を発行することについての謝金を支払っていたこと,これには,原著作者に対する著作権料は含まれておらず,謝金の一部でも原著作者に支払われた事実はないこと,以上の事実が認められる。この謝金の支払に関する基本契約書(乙4の1,乙45の8,9)には,原著作者に対する著作権料が含まれている旨の記載はなく,その他証拠(甲87,乙3,乙4の1ないし3,乙44の1ないし3,乙45の1ないし3,5ないし9,乙46の1ないし3,乙47,乙48の1,2,乙49,64)によって認められる経緯に照らしても,謝金支払に関する交渉経過等において原著作者に対する著作権料が含まれているかどうかが協議の対象となった事実は認められないから,被告らがこの謝金に原著作者に対する著作権料が含まれていると信じてもやむを得ないといえるような事実は認められない。他方,被告らが,原著作者に謝金の一部が支払われているかどうかを確認するのは極めて容易であったと考えられるが,被告らが何らかの確認をしたことを認めるに足りる証拠はない。したがって,被告らが,上記謝金が原著作者に支払われていなかったことを知らなかったとしても,そのことに過失があるものというべきである。


__________________

156 - 衆 - 予算委員会第四分科会 - 1号
平成15年02月27日
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/003415620030227001.htm


○矢野政府参考人 検定申請図書の流出に関しましては、先ほど委員が御指摘のとおり、衆議院の決算行政監視委員会の御質問を受けた後、私ども、日本図書教材協会に対しまして、昨年末より聞き取り調査を行いましたし、またそのほか、ことしになりまして、一月十五日には同法人に対して実地調査を行うなどして、事実関係を調査してまいりました。
 こうした一連の調査によりまして、以下申し上げるような調査結果を得たところでございます。
 整理いたしますと、四点でございます。
 第一点は、日本図書教材協会は、検定決定前の検定申請図書、いわゆる白表紙本でございますが、これを教科書執筆者等より入手し、教材出版社に対して配付していたこと。
 第二点は、日本図書教材協会による検定申請図書の入手及び配付に関しましては、コピー代実費以外の金銭授受は行われていないこと。
 第三点は、教学図書協会等の教科書の関係団体でございますが、教科書関連団体が組織的に検定申請図書の流通に関与してはいなかったこと。
 それから、第四点は、日本図書教材協会と教学図書協会との間で支払っております謝金でございますが、これは民事上の和解契約に基づく教科書使用の対価であり、検定申請図書の流通とは関連性が見られないこと。
 以上、整理いたしますと、一連の調査によりまして、申し上げたような形での調査結果を得たところでございます。
 なお、結果でございますけれども、十一月二十七日の決算監視委員会で、私の方から、日本図書教材協会の報告によればという留保つきでございましたが、そういう事実はないということを御報告申し上げたことにつきまして、誤った報告になったことについておわびを申し上げたく存じます。

○木下分科員 随分簡単なあれですね。
 この教材協会の会長さんというのは、もちろん旧文部省のOBであります。元初等中等教育局局長まで務めた方が会長をやっておられる。そして、これまで歴代ずっと、私がわかっているだけで三代、旧文部省からの天下り。この教材協会というのは、ある面では、文部省が推し進めている検定制度のいわば推進役であり、そして教科書会社やあるいは教材会社に対して指導監督する立場にある。しかも、検定制度というのをよくわかっている会長さんですよ。その最高責任者のもとでこういうことが長年行われていた。しかも、国会に対して虚偽報告、あるいは私もそれ以前に専務理事を呼んで何回も確認しました。しかし、そのときも同じ答弁、虚偽をしていたわけです。
 したがって、私はむしろ、この旧文部省、現在の文部科学省からの天下りである菱村会長についてはきちんと責任をとってやめてもらう、そして文科省からの天下りを凍結するというぐらいのきちんとした対応をしてもらいたいと思うんですが、大臣、どう思いますか。

○木下分科員 それから、先ほど謝金の話が出ました。これは一年に大体二億円、これが任意団体の教学図書協会へ支払われている。これについて前回も指摘しました。
 社団法人日本図書教材協会が平成三年四月に発行した創立三十周年記念誌「築く」ですね。これはコピーしたものですが、この「築く」の中には、はっきりとこう書いてあるんです。「教科書会社は、謝金を受け取る見返りとして、教科書を参考とする教材をつくるに当たって、教科書の最初の段階からのもの(白表紙本など)及び指導書を資料として提供する」
 要するに、提供する見返りに二億円を支払う、任意団体の教学図書協会に支払うとうたっているわけですが、この点はどうですか。事実と違いますか。

○矢野政府参考人 先ほど御報告申し上げましたが、私ども、実地調査も含めて、そのことを含めて調査をしたわけでございますが、その結果によりますれば、第一点は、検定申請図書の流出については、教学図書協会、その二億円の謝金の支払い先である教学図書協会が介在していないということを確認しております。
 また、検定申請図書の流通につきましては、コピー代等の実費が別途教材出版社から徴収されているということがわかりました。
 それから、そういうことを踏まえて、日本図書教材協会と教学図書協会との間で支払われている謝金、これは民事上の、これまでの経緯がございまして、昭和四十年代の経緯がございまして、民事上の和解契約に基づく教科書使用の対価であるということ、そういう調査結果を私どもとしては確認をいたしているところでございます。
 したがいまして、御指摘の謝金、繰り返しで恐縮でございますけれども、契約に基づき、教材出版社から教科書出版社の著作物の使用の対価として支払われているというふうに私どもとしては理解をいたしております。

○木下分科員 そうすると、何のために教学図書協会の方へ二億円を支払っているんですか。

○矢野政府参考人 今申し上げましたように、教科書出版社の著作物の使用の対価として、教科書出版社の集まりである教学図書協会に対して支払っているわけでございます。そしてこの謝金は、教学図書協会を通じてそれぞれの教科書会社に配賦されるということになるわけでございます。
 いずれにしても、教材会社が教科書出版社の著作物の使用の対価として支払われているものでございます。


第156回国会 文部科学委員会 第18号(平成15年6月11日(水曜日))
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009615620030611018.htm

第156回国会 文部科学委員会 第19号(平成15年7月9日(水曜日))
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009615620030709019.htm