文字とか活字とか図書館とか | 音楽リスナーとPCユーザのための著作権パブコメ準備号

文字とか活字とか図書館とか


Copy & Copyright
■[図書館][文字・活字文化振興法]JLAの提案
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20051026/p1

■[図書館][公貸権]声明を読んで
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20051111/p1

を経由して

文字・活字文化振興法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17HO091.html
日本図書館協会:文字・活字文化振興法を実効あるものにするための政策事項(素案)
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jla/mojikatsuji2.pdf
図書館の今後についての共同声明
http://www.bungeika.or.jp/200511seimei-toshokan.htm


を読んで、図書館のこととか考えてみたよ。
図書館協会の会員でもないし締め切りも過ぎてるけどな!(以下、文体散らかりすぎ)


ぼくが考える図書館の最大の務めは、知る権利・幸福追求権の保証です。

 現在の文字・活字の流通は出版産業に支えられていますが、実態として発売後数年を待たずして、多くの書籍は新刊書店から消えてしまいます。誰しもが必要な書籍を発売後間もなく購入できるわけではないですし、後日必要であることがわかることもあります。購入できるか否かは、その人の経済的な状況に依るものですが、なんらかの情報を必要とする事態は、経済的な状況と関係ないところで訪れます。書籍を購入することはできなくても、必要とする情報を得ることを保証する場所が図書館である、と。

 姿を消していく書籍は、無価値だから淘汰されたということではありません。文化的に明らかに価値があるとされる学術書などは、専門的な内容であれば発行部数が少なく、大学図書館や研究室などしかるべき購入者の所に行き渡れば、その後の売り上げは倉庫などの管理コストを補うものではないので、継続して販売をしていないのでしょう。あるいは、一見無価値と思われるものでも、あらゆる書籍は、時代の文化風俗や社会のありようを示すものです。これらの書籍に、アクセスすることを保証するのも、また図書館である、と。
 
 書物をはじめとする文字活字の情報を保存し、次代に残すことも図書館の重要な役割となるでしょう。デジタル化による保存、検索などの利便性の向上と共に、印刷物活字の利点として、デジタルに比べて致命的な情報の破壊が起こりにくいこと、つまり破損した場合でも修復が可能であることは強調されるべきである。

 基本理念として「地域、学校、家庭その他の様々な場において、居住する地域、身体的な条件その他の要因にかかわらず、等しく豊かな文字・活字文化の恵沢を享受できる環境を整備することを旨」とするのであれば(★第3条)、特に図書館関連については以下の施策が必要となります。

●身体的な条件(★第3条)
「身体的な条件その他の要因にかかわらず、等しく豊かな文字・活字文化の恵沢を享受できる環境」のためには、身体的な条件にかかわらず文字・活字文化を享受することを保証し、かかる障害を迅速に除去することが必要であることは言うまでもない。点字、音声化について障壁となっている著作権法を早急に改正する必要がある。



●アーカイブの必要性
 多くの出版物は、数年の内に書店から姿を消し、入手が困難になる。その主な理由は、出版社の経済的な理由や書店の在庫能力などにあり、著作権者の意志や著作物の内容によるものではない。ところが、読者は必要とする本、読みたい本を読みたいのであって、出版社の利益のために書籍を購入するのではない。「すべての国民が、その自主性を尊重されつつ、生涯にわたり」「等しく豊かな文字・活字文化の恵沢を享受できる環境」を整え、読者・著者双方の利益のためには、個別の読書欲求に対応できるシステムが必要である。まず、構築されるべきは、あらゆる書籍、定期刊行物、論文など、公表された文字・活字コンテンツを、すべての国民が読もうと思ったときに読める環境である。
 あらゆる文字活字コンテンツのアーカイヴとして、最初に想定されるのは図書館である。
 利用の基本となるのは、個々の公共図書館であるべきではあるが、すべての図書館が完全なアーカイヴを校正することは予算や収納場所などの面から現実的ではない。これを前提とするならば、地域ごとの適切な配架計画と、専門図書館や大学図書館、および他地域の図書館も含めた全国的な協力体制が必要となる。特に、生涯学習の観点からは、地域の公共図書館を拠点としてさまざまな資料を利用することが重要である(★第7条)。

 1)過去のコンテンツについて、これから収集を行い、すべてを集めることは予算面のみならず、特に戦前の資料は残された部数自体が少数であり、不可能と言っていいだろう。したがって、国会図書館、大都市の図書館、専門図書館や大学図書館が連携してデータベース化を行い、公共図書館で利用ができる協力体制を作ることが望まれる。(★第6条)

 2)今後発売されるコンテンツに関しては、可能であれば都道府県立の図書館、少なくとも地方ごとの大都市の図書館では、各地域・都道府県の公共図書館に協力貸し出しすることを前提として年間に日本で出版されるすべてのコンテンツを購入することができる相当額の資料費を最低限措置することが、国及び地方公共団体の責務となるべきだろう(★第4条、第5条、第12条)。
 3)地方の公共図書館には、地方出版物、地方史に関する資料を収集する役割も期待される。また、これらの資料は、他の地域においても利用されるべきであり(たとえば映画の調査をするものがある地域の「映画史」や関係する社史や伝記などを参照するなど)、各地方の公共図書館所蔵資料も統合されたデータベースを構築し、協力貸し出しを可能にする協力体制が必要となる。(★第6条)

 4)大規模な図書館や大学図書館・専門図書館は都市部特に首都圏に偏在しているため、生活圏内の図書館で上記アーカイヴを利用することができなければ「豊かな文字・活字文化の恵沢を享受」する上で「居住する地域」による格差が生じる。地方の公共図書館は、上記アーカイヴを利用する窓口としての機能を兼ね、最寄りの公共図書館で、あらゆる所定の手続を踏むことによって、過去に公表された出版物が利用できるようにすることが望まれる。(★第6条)
 また、各種オンラインデータベースが利用できる環境を作ることが望まれる。これらデータベースが、大学の研究室などでの利用に限定され、個人で使用する場合は使用機会に対して高額の使用料を支払わなければいけないような状況は、改められるべきである。

 5)状態が悪く貸出によって破損する危険性がある出版物について、また利用者が不特定多数となることによって盗難や紛失の危険性が高まることについては、デジタル化および複製物を作成することで貸出を可能にできるよう法整備を行う。図書館の業務として、また資料を後代に伝えるために、資料の保全は重要である。1:保存という特定の目的のために図書館という限定したものであり、2:閲覧・貸出という同一用途のための利用に限られ、3:原資料と並行しての貸出を行わず、4:発売後相当期間を経過し、復刻など同一物が入手困難であることなど、著者/権利者の経済的利益を損なうことがない範囲で、保存のための複製が可能にできるような法的対応が望まれる。

6)学習や研究の対象によっては、利用者が所蔵資料の全部を複写する必要が生じる。特に代替物が新刊書店で入手不可能なものについては、私的複製の範囲内で可能であるような貸出体制を作ること、または適切な権利処理を行うことで複写を可能にする制度を作ることが求められる(新刊書店で入手できる、またはある程度の数が古書店に流通している代替物がある場合でも、見開きあたり10~30円の複写代を支払って著作物の全体を複写して利用することは、支払う金額と労力を考えれば割に合うものではないため、著者や出版社の経済的利益を損なう可能性は低い)。

●学術出版(★第10条)
 学術の著作物については、一般に学術の著作物は営利を目的とせず、著作者の経済的利益よりも、流通が促進され入手が容易となること、デジタルデータで情報が流通されることによって著作物の利用が促され、また参考・引用などの際に誤った理解をされたり間違った形で掲載されることが避けられることの方が重要である。また、一般に代替がきかず、またその情報を得ることができるかどうかによって、研究の進展に大きな影響が及び、内容によっては国民の健康などをも左右する。学術情報は、出版コストなどの理由で流通が阻害されるべきではない。多くの場合学術書・学会誌などの定期刊行物は少部数・高価・大部であることが多く、専門的な内容であるため購入・使用する人の数は少なく限定的であると考えられるが、大学教員など専門の研究者だけでなく、一般に公開され、アクセス可能な状態にある必要がある。
 なお、啓蒙書や、学術書であっても一部の商業的に成立するものについては、この限りではない。

 学術の著作物の性質を考慮して、取るべき施策は以下のようなものと考える。
・利用者が多く見込めないため、予算が限られている現状では蔵書する図書館の数を増やすことは、他の利用されるべき蔵書への影響が大きい。書籍・定期刊行物については、専門図書館、大学図書館、地方ごとの大都市の県立図書館などで所蔵し、公共図書館への協力貸出を可能にする。
・公表・流通を促進するための予算を確保するとともに、権利者・出版社の経済的不利益を不当に侵害しない範囲で権利制限を施す。
・販売価格が高価になるのは少部数であるためにコストがかさむことが大きな理由となる。デジタル出版など、検索が容易であり論文単位で購入できるシステムを確立する。

●公共貸与権について
 現状では、複本によって著作権者の経済的不利益がどの程度発生しているのか/していないのかについて、判断する資料があるのかどうかがわからない。権利者団体、出版社、図書館関係団体のそれぞれが、これまでの調査を公にし、一般の読書家、図書館の利用者らが検証できるような状態にすることが望まれる。
 個人的には、公共図書館で利用される書籍が、著者または出版社から提供または貸与されているのであれば、公共貸与権の導入に納得できる。