上月 雨音
SHINO ―シノ― アリスの子守唄

ミステリー文庫の「SHI-NO -シノ- アリスの子守唄(著:上月雨音 画:東条さかな )」を読みました。


「じゃあ、帰ろうか」

 

 週に一度の銭湯の帰り。志乃ちゃんは、無言で僕の隣に並ぶ。自然に。こく、当たり前に。

 他者との接触を恐れているわけでは無いのに、他者との接触を求めていない――そんな彼女が、どうして僕の傍に居続けているのか――。

 

聞いてみたい気もする。

 

でも、聞いてはいけない気もする。

 

どちらが正解なのかは分からない。

 

だから今は待とうと思う。

 

彼女がそれを語ってくれるその日まで。

 

支倉志乃。無口な小学五年生。

 

僕の妹――みたいな、大切な存在。

 

 願わくば、君の見る夢が、この世で最も美しいものでありますように――。

猟奇事件に興味を示す、ダークでクールな小学生の志乃ちゃんと大学生の僕との純愛系ミステリー第二弾!



 何も肯定せず、何も否定しない。全てをありのままに受け入れてしまう志乃の物語も2冊目です。

初っぱなから銭湯の話で始まったりしたので、いきなり商業主義に負けてしまってサービスカットを入れて

来たのかと内心ドキドキしていましたが、単なる小話のひとつだったので一安心ですw


 今回は学校の怪談を中心に話が進んでゆきます。けっして『階段部』の話では有りませんw

赤い靴を無くしたアリス人形が白い靴を赤く染めるために被害者を惨殺するという、救いも教訓もないグロイ

怪談話に怯え、夜な夜な悪夢に魘されていた志乃のクラスメートである鼎。


 人間に興味のない志乃がクラスメートとはいえ『彼』以外の人間を強く認識しているわけはなく、キララの

便利な人脈によって舞い込んできた話だったりします。トラブルメーカーとしての位置づけが有るとはいえ

とても便利に使われているように思えますが、只でさえ人の内面を深く掘り下げて画こうという作品なので

ストーリーをテンポ良く進める為には多少のご都合主義も必要ですよね。


 結局のところ、今回の事件(?)はそれほど根の深い話ではなく、登場自分たちの思惑が少しずつ絡み合い

事件を浅く広いモノにしているだけなので、特に印象に残るようなことも有りませんでした(;´д`)


 その代わり、惨殺アリスとは関係ないところで進んでいき終わっていった『彼女』の物語の方が印象

深かったですよ。殺人事件に興味を持ち様々な可能性を模索し、全ての可能性を検討していく。例え

その中に自分の死があったとしても、自分を理解して貰いと最後の瞬間まで想い続けることができるのは、

愚かしいことかも知れないけど、純粋だとも言えますよね。


そんな訳で全体としては薄い印象も、『彼女』によって私的ヒット作になりました♪ 次回も楽しみです!


>>SHI-NO -シノ-黒き魂の少女