わたしのたからもの
彼女と私はダムに沈む景色で繋がっている。
彼女が晴れた日にワンピースでそのほとりに座り覗き込む、そのおなじ瞳で私も、影の骨を見る。
静かに小鳥が鳴いているかもしれない。
雲がゆっくりと太陽の端っこを隠す。
時を同じくはしないけれど大きな白鷺が近くを飛び立ったのも知っている。
いっぱいに風を含ませた白い翼が肩口をかすめる。羽根には血が通っていないのになぜかあたたかで、鋭く通り過ぎたはずなのにまるで撫でるようだった。
私が見たのは通り過ぎた鷺たちの後ろ姿なのに、目に浮かぶのは湿地を蹴って飛び立つ瞬間、翼が初めて空気を孕むとき。
それから鮮やかなオレンジのふかふかなタオルに包まれた子猫。
私からは小さな頭ときくらげのような片耳しか見えない。
産毛がきらきらと際立ってときどきそよと風に吹かれている。
やわらかく瞑る目蓋やくちもとはたぶん薄くほほえんでいる。
すべてがざあっと、記憶のどこか終焉のような場所に流れ込んでいる。
横を抜き去るときの風も、草のかおりも、徐々にゆるんでおなかにしまわれる足も、おひさまの感触も。
いつでも再現できる。