鈴木達也が雀王に返り咲いた。

最終局の達也のあがり。
最後の最後まで苦しい戦いだったことを物語るツモだった。

「やっと終わった―」

そんな声が聞こえてきそうな、重く、そして力強いツモだった。


3日目の最終半荘。
達也は執念のトップをとり、なんとか優勝圏内にしがみついた。

最終日に5半荘を残し、首位を走る鈴木たろうとは120.3ポイント差。
射程圏内とはいえ、その差は決して小さくはない。

3日目終了時、私は達也に声をかけた。

「追い込むほうが、性分に合ってるでしょ。」

達也は微笑しながら

「そうだね。」

と返した。

その言葉と笑顔に、私は安堵した。

―去年の達也とは違う。
そう確信した。


実は去年のこの時期、日々の多忙さと麻雀の不調続きで達也の心身はぼろぼろだった。

去年同じように声をかけても、達也の口から返ってきたのはネガティブな言葉だけだった。

そんな状態の達也に、ディフェンディングの重圧は重すぎたのだろう。

そして達也は、雀王の座を降りた。


―今年の達也は違う。
全身から感じられる覇気と強い意志のこもった目で、達也はただ一点

「王座奪還」

それだけを見据えて四日間戦い抜いた。


第10期雀王 鈴木達也


彼はきっとまた多くの麻雀愛好家を魅了したに違いない。

何度でも言いたい。
達也、おめでとう。
本当におめでとう。


一年の時を経て返り咲いた花は美しかった。