第215話「七曲署一係 その一日」

放映日:1976/8/27

 

 

ストーリー

8月27日、三上は宿直勤務を担当していたが、事件は発生していなかった。

野崎は自宅で康江(西朱実さん)と良子(井岡文世さん)と食事をしていた。

康江は野崎に、デパートで良子の結納の品を決めるように頼んでいた。

野崎は8月29日にデパートに行くように決めていたが、暇があったら見ると約束した。

良子は食事の腕を向上させていた。

野崎宅に三上から、変死体がいるという連絡が入り、出動した。

野崎と三上は、変死体に縋り付いて号泣する女性の姿を見ていた。

検視官によると死因はぽっくり病だった。

石塚は西山署長から、三上の本庁転勤の辞令を聞かれ、意見を聞かれていた。

本庁の捜査一課に欠員が出るため、七曲署捜査一係から三上が後任に推薦されていた。

藤堂は捜査員に、正式に決定された異動ではないため、三上に口外しないように命じた。

石塚は出勤時に、西山署長に三上の本庁捜査一課への転勤について意見を聞かれていたが、三上なら誰にも負けないため、本庁転勤に大賛成と意見していた。

変死した夫は昨夜まで晩酌をして機嫌が良かった。

野崎は康江に、市村が役所勤務でストレスが溜まりやすいとして、市村の健康状態を尋ねた。

一係室に保険勧誘員(青木和子さん)が訪れ、捜査員に保険を勧誘していた。

野崎は保険勧誘員を一係室から帰らせた。

三上は恋人の女子大生から、海で泳ぎを教えるように約束されていたため、三上は一係室を飛び出した。

野崎は三上に本庁転勤の辞令が発令されていることを知った。

三上は公衆電話で恋人に、これからデートの待ち合わせ場所に急行すると連絡した。

野崎と島は七曲署最後の休日になる三上のために、大事件が起きないことを祈っていた。

今朝、山村は赤ん坊に泣かれ、家政婦に抱かれても私の手を離さない状態になっていた。

一係室に老婆(田中筆子さん)が入り、田口と2人きりでの相談を要求した。

明子は老婆が以前、嫁が食事に毒を入れたと発言していたことを記憶していた。

藤堂と石塚と島と明子は良子の結納を祝福した。

三上は街を歩いている最中にひったくりの現場に遭遇した。

三上はひったくり犯を現行犯で逮捕した。

田口は老婆から、若作りをしている50代の、殺人容疑で指名手配されている男がいることを聞かされた。

老婆はいくら交番に通報をしても誰も来ないことから、交番の勤務が弛んでいると指摘した。

七曲署捜査一係に、根岸盛夫(33歳)(山下勝也さん)の重要犯人手配書が届いた。

根岸は「昨日に九州、明日は北海道」という異名があった。

根岸の手口は

*ある街に到着すると、その足で従業員が女性ばかりの店を探し、2,3日かけて女性と親しくなる。

*突然強盗に変身し、質屋を呼んで店の品物を全て換金する。

*店に放火して逃走する。

根岸は女性を拘束して放火しているために、被害者はほとんど焼死していた。

2日前、被害者の女性が根岸を東京駅で目撃していたが、報復を恐れ、通報を今日までしていなかった。

藤堂は捜査の対象を質屋に絞っていた。

藤堂は捜査員に、空手3段の根岸に警戒するように呼び掛けた。

山村と野崎と石塚と島は質屋の捜査に出動する寸前、ひったくり犯を護送するために七曲署に戻った三上と遭遇した。

野崎と石塚は三上に根岸のことを教えなかった。

三上は藤堂から根岸の潜伏のことを聞かされたが、根岸が七曲署管内にいるかどうかは不明なため、藤堂から海に行くように命じられた。

三上は藤堂達のよそよそしい態度に違和感を覚えていた。

藤堂は事件が続いて2ヶ月間休暇をとっていない三上に、休暇をとらせたかったと答えた。

一係室に山村家の家政婦から電話が入った。

赤ん坊がひどい高熱状態であり、かかりつけの医師が往診でいないために、家政婦は困惑していた。

藤堂は家政婦に、他の病院を探すように指示した。

藤堂は山村を無線で呼び出したが、山村は連絡に出なかった。

三上は何かの役に立ちたいという理由で、山村家に向かった。

山村は藤堂から、赤ん坊が急病なので、すぐに自宅に戻るように指示を受けた。

山村はタクシーで山村家に帰還し、三上と合流した。

赤ん坊は既に医師の診察を済ませている状態であり、38度の風邪だが心配なかった。山村は三上に感謝した。

三上は恋人に電話をかけ、事件に捕まってしまったと謝罪し、今度こそデートの待ち合わせ場所に行くと約束した。

野崎と島はアベ質店を訪れていた。

主人(中条静夫さん)によると、ファッションデザイナーを名乗る男が、自分の店の品物を全部質入れしていた。

質入れした男は自分の店に品物を並べる期間が1週間で、1週間経過すると流行遅れになってしまうため、別の店に回すか質入れして資金繰りかと発言していた。

主人は質入れした男から、店に取りに来てくれという電話を貰っていたため、男がどの店の所属かを知らなかった。

主人は質入れした男の電話に、いい加減に返事をしていた。

野崎と島は主人に根岸の写真を見せたが、主人は質入れした男が根岸でないと答えた。

主人は客のプライバシーの保護が商売の鉄則として、それ以上は捜査員の聞き込みに協力しようとしなかった。

島は店員募集の張り紙を見て、一日だけ店員として自分を雇うように要望した。

島は品物の値踏みに自信があり、帳場に座らせて駄目だったら、強制的に辞職させて良いという条件を付けた。

主人は島が刑事に見えないとして、島を店員に採用した。

主人は質入れした男と根岸の容貌がそっくりと証言した。

野崎は藤堂に、根岸がもうある店に押し入って、主人の女性を監禁しているかもしれないと報告した。

藤堂は野崎に、目立たないように張り込むよう指示し、石塚に管内のファッション関係店のチェックを命じた。

一係室に謎の無言電話がかかったが、石塚はいたずら電話だと思って無視した。

成城学園前駅に到着した三上は、藤堂から根岸が現れたという連絡を聞いた。

三上は恋人に事件で署に戻らなければいけないと報告し、恋人に別れを切り出されてしまった。

張り込み中の野崎は、質屋の客の女性(藤江リカさん)が婚約指輪を外したのを目撃した。

質屋の客は島に対し、70~80万円の婚約指輪を質に出し、10万円を借りたいと要求した。

島は主人の指示で、自分が婚約指輪の値踏みをすることになった。

客は婚約指輪を質入れする理由を、家計の赤字と説明した。

島は指輪の質入れを拒否し、家庭のトラブルを作りたくないとして客に、夫に話してから再度行くように促した。

客は島の対応に納得して帰った。島は客の指輪がイミテーションの安物であることを見抜いていた。

主人は島の接客術に感心していた。

一係室に謎の電話がかかってきたが、石塚は怒って電話を切ってしまった。

三上が一係室に帰還し、藤堂の知らせを聞いて2丁目のアベ質店に急行した。

三上は野崎に、結納の品を買う時間を与えたいために、野崎との張り込みの交代を懇願した。野崎は承諾した。

根岸は女性に接近するとき、やたら優しくて馴れ馴れしい態度をとっていた。

野崎は三上に、好きな女性が出来たとして、その父親に初めて会ったとき、馴れ馴れしく「お義父さん」と呼べるかと質問した。

三上はごく自然に呼ぶと思うと答えた。

野崎は結納商品と祝儀用品の承りコーナーに赴き、結納品を購入していた。

アベ質店に根岸らしき男から電話がかかった。

電話に出た島は店員と名乗ったが、根岸らしき男は今朝に主人しかいなかったことを見抜いていた。

島は藤堂に、根岸らしき男に張り込みを感づかれたため、もう店に電話がかかってこないかもしれないと報告した。

藤堂は島に、アベ質店での待機を命じた。山村が一係室に帰還した。

ブティック「JOSE」を乗っ取っていた根岸は、店主の腕を拘束し、口にガムテープをはめ、屋根裏部屋に監禁していた。

「JOSE」店主は何とか七曲署に通報しようとしたが、倒れこんでしまった。

アベ質店の主人は島に、養子になるように呼び止めたが、島は答えないまま出て行った。

三上は1丁目方面に向かった。野崎はアベ質店に、結納品を預けた。

店主は一係室に通報したが、何も喋ることが出来ず、石塚にいたずら電話という理由で電話を切られそうになった。

藤堂は店主の4度目の電話が、イタズラにしては度が過ぎていると察知した。

山村は店主に、電話機を叩いて店の電話番号を教えるように伝えた。

店主は山村の指示通りに電話機を叩き、電話番号が「265-2113」であることが判明した。

根岸が戻るのを予測した店主は受話器を電話機に戻し、倒れていたふりをした。

根岸が灯油タンクを持って屋根裏部屋に現れた。

藤堂は電話番号に該当するブティック「JOSE」に電話をかけたが、「JOSE」は8月25日から1週間、夏休みのために臨時休業しているという内容の留守番電話が流れた。

石塚は最初に「JOSE」に電話をかけていたが、留守番電話が流れていたため、異常がないと判断していた。

「JOSE」は空き巣被事件に遭った店だった。

石塚は空き巣事件が未解決だったため、店主に名刺を渡していた。

吉高質店を訪れていた三上から藤堂に電話が入った。

吉高質店に根岸らしき男から、ブティック「JOSE」の全ての商品を換金するために車で来てくれという連絡が入った。

藤堂は三上に、「JOSE」に急行するように命じ、山村と石塚が合流するまで無理をしないように念押しした

三上は「JOSE」の外階段を上り、窓から屋根裏部屋に店主が監禁されていることを知った。

三上はわざと外階段の植木鉢を落とし、根岸に気付かせた。

三上は外に出た根岸に飛びかかり、根岸と格闘を行った。

田口が「JOSE」の入口の扉を突き破り、三上に加勢した。

山村と石塚も「JOSE」に到着した。

三上は根岸の格闘を自分に任せ、山村と石塚に、屋根裏部屋に店主が監禁されていることを知らせた。

山村と石塚は店主を救出した。三上は根岸を何とか投げ飛ばし、逮捕した。

野崎と島も到着し、田口を起こした。

田口は生命保険に加入しようとしていたが、保険勧誘員は本庁の上層部から、七曲署捜査一係捜査員に無理に勧誘するなと言われていた。

藤堂は三上に、9月10日付を持って本庁捜査一課に転勤することを知らせた。

 

 

メモ

*市村が名前だけ登場。

*テキサス存命最終作。遂にテキサスに本庁転勤の辞令が発令された。

*保険勧誘員が一係室に現れたのを見て、隠れるボン。ボスは独身だから、ゴリさんは別の生命保険に加入しているからというのを理由に保険を断る。

*ボンは健康優良児であることを理由に保険を断る。しかし3年後、ボンも殉職してしまう…

*テキサスにいつの間にか女子大生の恋人が出来ていた(ただし、恋人は画面に登場せず、声のみの登場。声は信沢三恵子氏)。テキサスに恋人の話が出るのは「バラの好きな君へ」以来。

*「結婚が怖くなる」と言ったアッコをゴリさんは「誰も申し込まない」とからかうが、アッコは「先着100名で締め切る」と返す。

*老婆とボンのやり取りはよく分からない。

*山さんはなぜか赤ん坊急病の一報を受けたとき、覆面車ではなくタクシーで山村家に戻っている。

*高子が死亡したため、山さんは家政婦を雇ったようだ。赤ん坊の名前はまだ隆と決まっていない。

*質店の主人に「そのものずばり刑事」と言われてしまう長さん。

*待ち合わせ場所のすぐそばまで来たテキサスだが、事件の影響で七曲署に戻らなければならなくなり、恋人にふられてしまう。

*高い接客術と値踏みの技術を持っている殿下。主人から質店の店員にならないかと誘われたが、転職していたら…

*質店の客の対応は器用な殿下だからこその芸当であり、不器用なゴリさんだと複雑化しそうである。

*食堂の肉料理の陳列棚を見て、焼肉を片手にビールを飲む姿を想像し、腹が減るテキサス。

*ブティック店主のSOS電話をあやうく見逃しそうになるゴリさん。ボスと山さんがいなければ危なかった。

*ブティック「JOSE」の外階段には手すりが全くなく、非常に危険。

*根岸は空手3段の強者で、柔道の有段者であるテキサスと互角に戦う。「太陽」で初めて登場した空手の名人の犯人。格闘戦は非常に見応えがあり、一見の価値あり。

*根岸との格闘に加勢しようとするが、あっさり打ちのめされ、頭上からマネキンの首が落ちて気絶するボン。

*長さんは気絶したボンを「長生きする」と誉める。七曲署の新人刑事では長生きした方のボンだが……

*「8月27日、三上順の本庁異動が決まる。今日も全員無事」

*今回は脚本の井筒氏の「太陽」唯一の執筆作。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

三上順:勝野洋

田口良:宮内淳    

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵、野崎康江:西朱実、野崎良子:井岡文世

アベ質店主人:中条静夫

保険勧誘員:青木和子、アベ質店の客:藤江リカ、老婆:田中筆子

根岸盛夫:山下勝也、日野麗子、山村家の家政婦:関悦子

桐原弓子、小島孝夫、女子大生(声のみ):信沢三恵子(現:信澤三惠子)、野沢有紀

ノンクレジット 山村隆:小椋基広

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、井筒弥生

監督:山本迪夫