第211話「待伏せ捜査」

放映日:1976/7/30

 

 

ストーリー

七曲署管内でひったくりなどの盗難事件が頻発し、検挙率が非常に悪い状態になっていた。

島は西山署長(平田昭彦さん)に、待伏せして犯罪を阻止する捜査を提案した。

島は過去3年間のデータを分析して統計を取っていたが、犯行場所と犯行時間に数点の共通点があった。

藤堂は島のデータを利用した待伏せ捜査を申請した。

西山は島のアイディアを即刻に採用した。

石塚と田口、山村と島、野崎と三上はそれぞれ分担して3ヶ所に別れ、待ち伏せを開始した。

待伏せ捜査を開始して半月が経過していた。

島は犯罪防止という点で絶対に正しい捜査方法だと思っており、データが揃えればコンピューターで犯罪予報ができるかもしれないと考えていた。

野崎から、島が待機している地点の近くでひったくりの110番通報が入ったこと、犯人の特徴が黒い背広を着た中肉中背の男であることの連絡が入った。

島と田口は付近に黒い背広を着て、女物のハンドバッグを持った、神山実(天田俊明さん)という男を発見した。

島と田口は神山に接近し、女物のハンドバッグを持っている事情を説明するように言った。

神山は道端に拾ったと弁解したが、署に連行された。

神山は鞄を警察に届ける最中だったこと、1丁目の繁華街を散策し、帰宅しようと思って裏道に来たら鞄が落ちていたと必死に主張した。

田口は被害者に連絡した。神山は東名不動産に勤務していた。

神山は心配する妻の早紀子のために電話をかけようとしたが、島が代わりに電話をかけた。

神山は島と電話を代わり、早紀子に警察にひったくりと間違えられたことを電話した。

田口は被害者に連絡しようとしたが、110番した女性は動転していたらしく、ひったくりに遭ったとだけ言って名前も住所も伝えていなかった。

ハンドバッグの中の財布は抜き取られていた。神山は財布を抜いていないと必死に伝えた。

被害者の女性が改めて110番通報を行い、正式な被害届を出していた。

島は取調室に神山を含むひったくりの容疑者を連れてきて、被害者で「珈琲王国」従業員の関真理子(伊藤めぐみさん)に見せた。

関はマジックミラー越しにひったくりの容疑者を見て、ひったくりの犯人が神山だと証言した。

神山は無実を主張し、関と面会させるように要求した。

関は犯人が神山と証言し、神山に掴みかかられた。神山は留置された。

西山は待伏せ作戦の成功を祝い、夕刊の締め切り前に記者会見を開こうとしていた。

島は容疑者が犯人と確定したわけではないとして、記者会見に反対した。

藤堂も島の意見に賛成した。島のもとに関から電話が入った。

関は神山が犯人でないような気がしてきた。

関は神山に掴みかかられたとき、オーデコロンの匂いがしたが、ひったくり犯に癖のあるポマードのような匂いがしたことを思い出していた。

島は関に七曲署に来るように頼んだ。

関は珈琲王国でも、匂いだけでコーヒーの種類が分かって褒められていたため、匂いに敏感だった。

関は帰宅して、落ち着いて事件のことを思い出し、犯人の匂いを思い出していたと述べた。

関はひったくり犯の全体の印象が、容疑者の中で神山に似ていたため、神山と証言していた。

関は犯人を神山でないと証言した。

島は神山を、神山の自宅である「御苑コーポビアネーズ」に送迎した。

神山は島に事情の説明を懇願した。島は承諾した。

神山は504号室に帰宅しようとしていた。

神山は部屋の呼び鈴を押したが、早紀子からの応答が無かった。

神山は部屋に入ったが、部屋の中で早紀子が殺害されていた。

神山は島を、自分を素直に釈放したらこんなことにならなかったと抗議した。

翌朝の朝刊に、待伏せ捜査が失敗に終わったこと、誤認逮捕で留置中に神山早紀子が殺害された記事が掲載されてしまった。

藤堂は西山に責任を追及されていた。

島は神山を連行した場所を検証していた。

島は神山がハンドバッグを拾った場所が、島が神山を連行した場所から約3分の距離にあることを知った。

犯人は神山宅の玄関の鍵をこじ開けて侵入、居間で早紀子を絞殺してから室内を物色したと思われた。

しかし、盗品は現金3万円と5万円相当の宝石だけだった。

鍵の差込口に針金で引っ掻いた跡があったが、まるで合鍵でも用意したように簡単に開けており、物色の仕方もめちゃくちゃだったため、偽装の可能性があった。

早紀子の死亡推定時刻は昨夜の午後11時から午後12時の間だった。

しかし、島が午後11時30分に早紀子に電話をかけて会話していることから、午後11時30分から午後12時の間と考えられた。

早紀子は平凡な主婦で、大した聞き込みは無かったが、死亡した2億円相当の遺産が原因で夫婦仲がこじれているという噂があった。

神山に早紀子を殺害する動機はあったが、神山は午後11時30分に取調室にいたため、アリバイは完璧だった。

島は神山のひったくり事件が気になっていた。

神山は島に連行されたとき、ハンドバッグを警察に届けると言っていたが、神山がハンドバッグを拾った地点から、1丁目の派出所までは、歩いて1分もかからない距離にあった。

しかし、わざわざ神山は暗い裏道を約3分歩いていた。

神山は東名不動産の通勤への途中に派出所を通っていた。

島は小さな嘘の裏に大きな嘘が隠されていると予感した。

島は「珈琲王国」で関に会い、ひったくりに遭った前後の詳細を話すように求めた。

関がひったくりに遭った地点は人通りの寂しい地域だったが、喫茶店から自宅への近道だった。

関は近くの公衆電話から110番通報をしたが、恐ろしかったために名前や住所を言わなかった。

関は帰宅して震えていたが、落ち着いてから110番通報を行い、警察に出頭するように言われていた。関は独身だった。

島は関が、ひったくりに遭った地点の近辺にある交番に飛び込まなかったことが腑に落ちないと告げた。

関は通勤時に派出所の前を通っていた。

関は動揺し、仕事に戻った。島は関が嘘を吐いていると推理した。

島は勤務中の神山に接触した。神山は犯人を迅速に捜索するように強く言った。

神山はこれ以上付きまとう場合、人権蹂躙で告訴すると警告した。

島は神山を尾行し続けた。

石塚は聞き込みにて、会社を独立しようとして焦っているという情報を得ていた。

神山の独立の資金源は早紀子だったが、早紀子が承諾せず、夫婦仲が険悪になっていた。

神山は自宅にて、ヨーロッパ旅行の本を読んでいた。

神山は7月30日のパリ行きの旅客機を予約しており、東名不動産を退職していた。

田口から、関が7月28日の団体ツアーのヨーロッパ旅行に行くという情報が入った。

島は東名不動産の印刷物を担当している印刷会社を訪れた。

印刷会社の社員は神山が独立するという話を聞いていた。

島は印刷会社が警視庁の庁内誌「警友」を発行していることを知った。

「警友」内には、七曲署の待伏せ大作戦の記事と七曲署の最重点警戒区域のことが掲載されていた。

島は神山と関が待伏せ作戦を利用して早紀子を殺害したと断定した。

神山と関の手口は

*早紀子を殺害した神山は、島と田口が待伏せしている地点にハンドバッグを持って現れた。

*共犯者の関が神山宅に行き、早紀子のふりをして島の電話に出た。

*関は神山を犯人と証言し、すぐに翻す。

*日をずらしてヨーロッパに出かけ、落ち合う。

残念ながら証拠は皆無で、電話の声が関の声だったか確認する術が無かった。

藤堂と山村は、神山と関が知り合いである証拠がないことから、犯罪を思いついたと推測した。

藤堂は神山と関の連絡し合う場所を探そうとしていたが、島は事件から半月間に神山と関が接触した痕跡がないことを報告した。

島はマンションの神山の電話と勤務先の電話を電話局に調査させていたが、電話は親戚や会社関係のものしかなく、不審な電話は無かった。

神山と関はヨーロッパで落ち合う時間の打ち合わせが済んでおり、それまで絶対に連絡と接触もしないことが神山の計画であると考えられた。

藤堂は神山と関が会話するチャンスを作り出そうとしていた。

七曲署捜査一係は、関が28日に出発するヨーロッパ旅行ツアーが、定員に満たないために中止し、次の出発に30日に変更するという芝居を打った。

関は神山に電話をかけようとしたが、田口に見られたため、電話をかけるのを辞めた。

田口は関を尾行したが、関はパチンコ屋に入り、パチンコをするふりをして田口をまいた。

関のもとに三上が現れ、尾行を開始した。関は表参道駅の地下道に入り、地下鉄に乗って三上をまいた。

地下鉄には野崎が乗っていた。

関は公衆電話で神山に電話をかけた。野崎は関の電話番号を目撃し、東名不動産を張り込んでいる島に連絡した。

神山は関からの電話を取ろうとしたが、外に島がいるのを見て電話を取るのを躊躇した。

神山は関からの電話に出たが、すぐに切った。

島は神山が、ヨーロッパまでは絶対に口を聞かずに顔を合わせないつもりだと踏んでいた。

山村は神山と喫茶店「BON」で会話していた。

神山はパリにいる友人の家に居候しながらパリのアパートを研究するつもりだと告げた。

神山と山村が「BON」を出ようとしたとき、島と関が「BON」と鉢合わせした。

関と神山はお互いを見て明らかに動揺した態度をとった。

神山は関に抗議して立ち去り、山村は神山を尾行した。

島は関に、殺人の共犯であると疑っていること、犯人と手を切らないと酷い目に遭うと思っていると打ち明けた。

島は殺人犯の神山が関の命を狙わないという保証があるのかと警告した。

島は神山と関の間に、偶然めぐり合って、愛し合い、結婚という筋書きが出来ているかもしれないが、神山の殺人の唯一の証人であることを忘れないように念押しした。

7月29日になり、神山は旅行の支度をしていた。

神山は張り込み中の島を見て動揺していたが、関がもう日本にいないと自分に言い聞かせた。

藤堂は神山が関と接触していないため、神山は関が7月28日に旅行していると思い込んでいることを確認した。

藤堂は島に、30日の午後1時の便に神山と関が顔を合わせるため、それが最後の勝負であると念押しした。

30日の午後11時30分、関は羽田空港の国際線に並んでいた。島と三上が関を見張っていた。

神山が空港に到着した。山村と田口は神山に密かに接近した。

島が関を連れ出し、それを見た神山は動揺した。

神山は関が自分を売ったと勘違いし、逃走した。

島と三上と田口は神山を追跡し、取り囲んだ。山村が神山の前に関を連れてきた。

神山は早紀子の殺害を教唆、計画を立てたのが関であると叫んだ。

島は神山を逮捕し、神山に、関が空港にいたのは出発が今日に変わったためと告げた。

石塚と三上と田口は、庁内誌に待伏せ捜査のことを掲載した西山を批判した。

一係室に西山が現れ、自分のミスを反省し、捜査員を称賛した。

待伏せ作戦は評判が高くなっていた。

 

 

メモ

*殿下の発案した待伏せ捜査が悪用され、殺人に使われる。殿下は「犯罪スケジュール」でも発案した計画を犯罪に利用されてしまっている。

*展開は完全に「アリバイ」に酷似しているが、不自然さが多かった前者に比べると、今回は割とまとまっている。

*「アリバイ」との相違点は、「アリバイ」では女性が単なるアリバイ工作の要員だったのに対し、今回は女性が犯人との明確な共犯となっている点である。

*スナックの名前が「ボン」。

*自分は早紀子の電話が本物で、電話をかけた直後に関に殺害されたものと思っていた。

*犯人を逮捕する際に飛行機が飛んでいくのは「愛」を思わせる。

*珍しく物腰の柔らかい西山署長。懐かしの2代目署長とは違い、基本的に理に適ったことを言っているので、嫌味は感じない。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

三上順:勝野洋

田口良:宮内淳

野崎太郎:下川辰平

 

 

西山署長:平田昭彦、矢島明子:木村理恵

神山実:天田俊明

関真理子:伊藤めぐみ

鈴木英介、前原久影、羽生友美

宮坂百合子、ひったくり犯:吉中正一(現:吉中六)、小坂生男

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:田波靖男、小川英

監督:竹林進