第209話「働くものの顔」

放映日:1976/7/16

 

 

ストーリー

七曲署交通課婦警の松原美紀(服部妙子さん)は、射撃訓練場にて射撃訓練を行っていた。

そこに石塚と田口が入ってきた。

松原は石塚が署内一の射撃の腕を持っていることを聞き、指導を望んでいた。

松原は警察官である限り女性でも拳銃を持つべきという使命感を持っており、射撃訓練を行ったことから、警察官の仕事が悪と戦うことを実感していた。

石塚は松原に射撃の仕方を指導した。

松原は射撃練習に夢中になり、毎日射撃訓練を行っていた。

石塚と田口のもとに、藤堂から、1丁目の梅寿司にて拳銃で客を脅迫している男がいるという連絡が入った。

石塚は梅寿司に急行し、男に拳銃を向けた。

裏から田口が男に迫り、2人で男を逮捕することに成功した。

石塚と田口は一係室に帰還しようとしていたが、一係室には松原が藤堂に熱弁していた。

松原は女性の犯罪が急増しているにも関わらず、捜査一係に女性刑事がいないことをおかしいと思っていた。

松原は署長から許可を貰い、藤堂の承諾さえあれば、捜査一係へ編入ができる状態になっていた。

松原は藤堂に身上書と履歴書を提出したが、そこに石塚が入った。

石塚は松原の刑事昇格に反対だったが、松原は石塚と一緒に働くことを希望していた。

藤堂は松原の教育に石塚を一任させ、松原に刑事見習いとして勤務させることにした。

石塚は松原の合気道の組手の指導に立ち会った。松原は石塚を投げ飛ばすことができなかった。

石塚と松原はチンピラ(吉中正一さん)を取り調べていた。

松原は石塚とチンピラの大声に驚き、調書を取るのを忘れていた。

石塚はチンピラに警告し、チンピラはあっさり罪を認めた。

石塚は松原の射撃訓練の指導を行っていた。

松原は標的になかなか命中させられず、標的の頭に命中させてしまった。

松原は弱音を吐きそうになり、刑事昇格に反対している石塚が自分のコーチをしていることに疑問を抱いたが、松原は石塚の考えを改めさせるために射撃訓練を続行した。

松原は石塚と合気道の組手の訓練をしていた。

石塚は水族館に行き、松原の婚約者で、アシカの調教師の神田晴夫(永井譲滋さん)と会った。

神田は松原から石塚のことを聞いていた。神田は松原と事実上に婚約解消している状態だった。

2人の婚約は子供の頃に、松原と神田の両親同士が勝手に決めていた。

神田は松原が好きだったが、松原の気持ちが分からなかった。

神田は動物が好きで、子供が喜ぶのを見ることを楽しんでいた。

神田は松原が刑事としての訓練を石塚から受けていることを聞き、石塚に憧れのような気持ちを持っているのではないかと思っており、石塚に松原のことを頼んだ。

翌日、松原は一係室に来ていなかった。石塚は松原が刑事昇格を諦めたと思い、喜んでいた。

明子は石塚に、もっと松原に優しく指導を行うべきと指摘した。

松原が遅れて一係室に入った。松原は道場で腰を打ったために医師に立ち寄っており、投げられ方が悪かったことを自覚していた。

石塚と松原は車で、矢追町3丁目の交差点付近を走行していた。

松原は神田が好きだったが、高校時代から一緒で、お互いに気心を知れ合っているという理由につまらなさを感じていた。

松原が刑事昇格を望んだ理由は、今までに味わったことのない素晴らしいものがあるに違いないと思ったからだった。

明和銀行の駐車場で銀行からおろした給料を襲撃する計画があるという密告電話が一係室に入った。石塚と松原は現場に直行した。

駐車場にて、朝霧鉄工所の社員2名(大宮幸悦さん、永野明彦さん)は現金を抱えながら車に戻ろうとしていた。

そこに川辺幸次(伊吹徹さん)という男が現れ、社員に拳銃を突き付けた。

川辺は鞄を強奪した後、社員に拳銃を発砲し、逃走した。

石塚と松原が駐車場に到着し、松原は救急車の出動を要請した。

山村と島は通報者の山科知子(池田和歌子さん)から事情聴取を行っていた。

山科は「Coffee lounge DOELL」の従業員で、自分が入口に水を撒こうとしたとき、川辺が犯行のことを公衆電話で話していたことを聞いていた。

山科は川辺が「町工場だが給料は500万円が固い」ことを聞いたとき、物音を立ててしまい、川辺と顔が合ってしまった。

山科は川辺の顔を見ていなかったが、川辺は自分の顔を見ていると思い、警察に自分の保護を頼んだ。

朝霧鉄工所の社員2名は急所を外しており、生命に別状は無かったが、気が動転しており、川辺の人相は不明だった。

被害総額は530万円で、朝霧鉄工所は従業員の給料として毎月の同じ日に銀行からおろしていた。

凶器の拳銃はコルト45口径で、条痕検査の結果、前科が無かった。

川辺に土地勘があり、毎月銀行から現金を下ろしているのを知っているのを見ると、かなり計画的な犯行と推定された。

現場付近の通行人が、飛び出していた小型車を目撃していた。

松原は川辺がパトカーのサイレンを聞いたと思い、通報者の山科が危険であるという意見を持っていた。

藤堂は松原に、警邏課に行ってパトカー出動の正確な時間を調べるように命じた。

藤堂は石塚に、松原に、帰宅した山科を四六時中警備する能力があるかを尋ねた。

石塚は松原しか能力がある者がいないと答え、藤堂は松原を臨時の刑事として起用することを決定した。

松原は「DOELL」に入り、山科を警備した。田口は「DOELL」店外を張り込んでいた。

松原と山科は葵アパートに2人で帰宅し、田口は2人を尾行していた。

部屋に入ろうとする山科の前に待ち伏せしていた川辺が現れ、山科を人質に取った。

山科は川辺を撃つように頼んだが、松原は川辺の態度から発砲を躊躇し、川辺に撃たれてしまった。

川辺は山科の足を撃った後、現場に田口が駆けつけた。川辺は田口に3発撃って逃走した。

山科は発砲しなかった松原を批判した。山科は足に重傷を、松原はかすり傷を負い、救急車で病院に搬送された。

松原は拳銃を藤堂に返還し、自分の責任が重大であるとして、刑事を辞めようとしていた。

松原は事件の影響で自分の能力の無さを自覚し、処分を覚悟していた。

石塚が一係室に入り、松原の刑事の辞職に猛烈に反対した。

石塚は松原に、川辺に発砲しなかった理由を質問した。

石塚は松原に、常に自分の拳銃の弾倉を空にしていることを見せた。

松原は山科が自分に、川辺に撃つように叫んだとき、川辺がとても悲しそうな表情を浮かべていたことを思い出した。

松原は山科と川辺が知人ではないかという気がしていた。

藤堂と石塚は電話を盗み聞きした経緯の不自然さから、山科と川辺が知人であると推理していた。

藤堂と石塚は山科が川辺から逃れようとするため、刑事との撃ち合いで川辺が射殺されるのを願っていたのではないかと推測した。

松原は自分の刑事昇格に反対していた石塚が、刑事を辞めないように説得するのを見て、戸惑いを感じていた。

山村と石塚は山科に、川辺と知り合いである理由を尋ねた。

山村は山科に、山科が拳銃強盗の共犯者で、仲間割れで密告したと思われていると告げたが、山科は答えなかった。

山村と石塚は田口を山科のボディガードに残し、山科の過去を捜査することにして、病室を後にした。

石塚は山科が半年ほど働いていた店のママから話を聞いた。

石塚は山科が川辺から逃げ回っていたのかもしれないという情報を得た。

七曲署からタクシーで病院に向かった松原を、川辺が尾行していた。

石塚はチンピラから川辺の名前を聞き出した。川辺も病院に到着し、拳銃を隠し持った。

川辺は前科こそ無いが、怒ると見境のない性格だった。石塚は川辺の自宅を捜索していた。

石塚は押し入れの中から、530万円の入った鞄を発見し、川辺の逮捕状を藤堂に申請した。

一係室に、松原から、藤堂から急用があると聞かされたため、松原と病院の張り込みを交代した田口が入ってきた。

藤堂は田口に急用が無かった。

松原は刑事の任務を続行することになっていたが、装備課に拳銃を返還していた。石塚は病院に直行した。

松原は山科を見て、川辺の知人だと直感した。山科は昔に川辺が好きだったが、逃げたかったためと伝えた。

松原は山科が正確な犯罪計画を知っていたことから、山科の目的が警察と川辺を衝突させることではないかと突きつけた。

病室に川辺が入ってきた。川辺は強盗を行った目的が、山科が金を欲しがったためと説明した。

川辺は松原に拳銃を突き付けたが、松原は殺人をしていない川辺を説得していた。

病室に石塚が突入し、川辺に拳銃を突きつけ、拳銃を渡すように強要した。

松原は石塚の拳銃に弾が入っていないことを思い出し、不安になった。

山科が突然に川辺を射殺するように発言し、川辺が動揺して山科に拳銃を向けた隙に、石塚は川辺から拳銃を取り上げた。

病院に駆け付けた田口は川辺を逮捕した。

松原は石塚が川辺に詰め寄った顔が、アシカに芸を仕込む神田の顔と似ていると言った。

松原は秋に神田と結婚することになった。松原は交通係が遣り甲斐のある仕事であると感じ、刑事になることを辞めた。

 

 

 

メモ

*「ボディガード」に引き続き、捜査一係勤務を望む交通課婦警が登場。なんと今回は一時的に捜査一係のメンバー入りを許可される。

*次に一係室に女性刑事が着任することになるのは7年後の「マミー刑事登場!」。そちらでは、ジプシーの後任で捜査一係に女性刑事が着任することになったものの、すぐに辞職することになった。

*ボンの射撃の腕がいつの間にか上達している。

*なぜか「元」一係の女性刑事のシンコのことについては全く触れられておらず、言及すらされていない。

*女性刑事であっても、新人刑事の指導と教育はゴリさんが担当しているようだ。今回はフォーマットが「○○刑事登場!」に近い部分がある。

*合気道の組手のシーンはほとんど遠景で、照明も暗めであるため、スタントかもしれない。

*松原婦警の婚約者は「爽やかな永井氏」。

*松原も神田も「仕事に対しての強い喜びと信念」を持っている。

*松原にもっと適切な指導を行うべきと、自分の意見をはっきり言うアッコ。

*松原のいざというときに拳銃を発砲できなかったミスは「マカロニ刑事登場!」を思わせる。

*ゴリさんは松原に、「いくら射撃が上手くても拳銃を頼るようになったら刑事は終わり」と説得。しかし、あと8話後に、過去のトラウマが理由で常に拳銃に頼るようになった刑事が一係に着任する…。

*山科がゴリさんに川辺を射殺するように頼むシーンは後の「七曲署事件No.600」で、犯人をブルースに射殺させようとしていた元恋人を思い出す。(脚本は同じ四十物氏)

*松原によると、殺人事件での死亡者は年に2000人、交通事故での死亡者は1万1000人という。後に似たようなことを早瀬婦警が言っていたような気がする。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

三上順:勝野洋

田口良:宮内淳

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

松原美紀:服部妙子

山科知子:池田和歌子、川辺幸次:伊吹徹

神田晴夫:永井譲滋、萩原伸二、坂井すみ江、林一夫

取調室のチンピラ:吉中正一(現:吉中六)、石崎洋光、朝霧鉄工所社員:大宮幸悦、広井由美子、合気道指導:清水健二

ノンクレジット 朝霧鉄工所社員:永野明彦

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、四十物光男

監督:山本迪夫