第201話「にわか雨」

放映日:1976/5/21

 

 

ストーリー

野崎と三上はアパートの福富荘を張り込んでいた。

指名手配の強盗殺人犯の迫田茂(昭和18年4月13日生)(32歳)(蟹江敬三さん)が神社を通って福富荘に向かっていた。

三上は労務者風の迫田を発見し、野崎に連絡した。

野崎と三上は迫田に接近しようとしていたが、港北署の小林刑事(小野武彦さん)ともう1人の刑事が現場に到着した。

迫田は小林の手錠を見て、刑事であることに気づき、逃走した。

野崎と三上と港北署刑事は迫田を追跡したが、途中で見失ってしまった。

港北署刑事は迫田宅を捜索していたが、身元や立ち回り先を示すような物は発見されなかった。

野崎は迫田の自宅を捜索中、手製の位牌を発見した。迫田には身寄りが無かった。

野崎は迫田宅の手製の位牌を忘れることができなかった。

野崎は帰り道、タクシーから降りた良子(井岡文世さん)が、市村進(26歳)(柴俊夫さん)という男と握手しているのを目撃した。

市村は再びタクシーに乗って帰宅した。

良子は野崎に対し、市村を友達と説明した。市村は気象庁の天気相談所の職員だった。

野崎は良子が市村と深夜まで交際していることを心配し、良子の部屋を覗いた。

野崎は良子の側に料理の本と結婚についての本が置かれているのを見て気持ちが暗くなった。

野崎にはアパート住人の証言から、迫田が金欠で食うにも事欠いていたことから高飛びするとは考えられず、手製の位牌から悪事を働くとも思えなかった。

小林は迫田が七曲署管内に留まっている可能性を信じ、七曲署と港北署の合同捜査を承諾した。

迫田は3年前の昭和48年(1973年)5月20日、港北区花房町3-4のスナック「トミー」にて発生した事件の殺人容疑がかかっていた。

被害者は「トミー」のママの松井登美子(33歳)(賀川雪絵さん)で、20日の午後4時頃、出勤してきたバーテンの古川清(谷本一さん)により遺体が発見されていた。

松井の死因は絞殺で、死亡推定時刻は明朝の午前5時頃だった。

店内の手提げ金庫から現金30万円が盗まれており、金庫に付着していた指紋から、常連客だった迫田が浮上した。

迫田と松井が株の投資で口論していたという証言があり、迫田の容疑が決定的となった。

港北署が迫田逮捕に向かったときには、迫田は既に逃亡していた。

迫田は当時、運送会社や建設会社のトラック運転手をしていたが、喧嘩っ早い性格から1つの会社に長く在籍していられなかった。

良子が野崎のもとを訪ねていた。

良子は康江(西朱実さん)に頼まれ、老眼鏡を野崎に渡した。

良子は野崎に、市村に会ってほしいと頼んだ。

野崎は都合の良いときに市村に電話することを約束した。

港北署が迫田宅を捜査し、証拠品を押収した後だったため、七曲署の仕事は迫田の足取り捜査となっていた。

野崎の捜査方針は、次の犯罪の抑止のために迫田のことを完全に知らなくてはならないというものだった。

野崎は迫田宅の戸棚の木箱から、花瓶に入った枯れた花を見つけた。

野崎と三上は「トミー」にて、「トミー」の営業許可証を引き継いでいた古川から事情聴取を行っていた。

古川は迫田が匿える場所について、迫田が「トミー」に入り浸っていたため、心当たりが無かった。

古川は事件当時の、迫田と松井の口論について説明した。

迫田は株で儲けようと思い、松井に20万円を預けていた。

しかし、カウンター付近にて、松井は株が値下がりして20万円を返さないと言った。

松井は20万円の付けの帳消しを交換条件にすると伝えたが、迫田は感情を高ぶらせ、松井に掴みかかっていた。

古川が迫田を取り押さえ、その場は収まっていた。

古川は迅速に迫田を逮捕するように懇願した。

野崎は通りを歩いている夫婦を見て、市村と良子を思い出していた。

野崎は藤堂から、港北署の事件であるため、張り込みを中断して七曲署に戻るという指令を聞いた。

野崎には迫田が悪人のように見えず、できれば自分の手で逮捕して取調べたかった。

野崎は良子に、定時に帰宅出来そうであることを連絡した。

良子は午後6時に市村と会う約束をしていた。

矢追町のビル街で迫田を目撃したという情報が入り、野崎と三上が急行した。

野崎と三上は合流した石塚と田口とともに、捜査を開始した。

午後6時30分、市村と良子は喫茶店で野崎を待っていた。

野崎と三上は浮浪者を捜査中に、隠れていた迫田を発見した。

迫田は逃走したが、神社の境内であえなく野崎に逮捕された。

山村と野崎は港北署に護送される寸前の迫田を取調べていた。

迫田は松井の殺害を自白した。

迫田は松井に付けが20万円だと言われ、騙されたと思い、殺害したと自白した。

松井が殺害された当日の午前1時頃、迫田は20万円を取り戻そうと思い、「トミー」に入っていた。

迫田は松井に20万円を返すように迫ったが、松井には断られていた。

迫田は松井に掴みかかり、手提げ金庫を放り投げた後、松井の首を絞め、背後から口を塞いでいた。

迫田は松井が死亡したと思い、20万円を強奪して逃走していた。

迫田はカウンターで松井が倒れたと供述したが、松井の死亡時刻が午前9時で、遺体が「トミー」の奥の階段の下にあったため、証言と矛盾していた。

迫田は松井への殺意が無かったと釈明した。

迫田は怖くて帰宅できず、前に知り合った友人のいる浦安にタクシーで逃走したと供述した。

しかし、迫田はタクシーを降りてから道が分からず、始発電車のある午前5時頃まで右往左往していた。

迫田が浦安にいることを証明する証人はいなかった。

迫田は道に迷った際ににわか雨が降ったため、停泊中の船の中で雨宿りしたと告げた。

迫田の供述が事実であれば、殺人については無実である可能性が出たが、港北署刑事は迫田の供述を嘘と断定していた。

小林が迫田の身柄を引き取りに来た。

藤堂は気象庁に電話をかけて確認を取ったが、3年前の5月20日の午前1時から午前6時まで、関東南部は晴れていたという回答しか得られなかった。

藤堂は捜査を港北署に任せようとしていたが、野崎は迫田の供述の「雨」が引っかかっていた。

野崎は逮捕した者の義務として、天気相談所に行って調査することを申請した。

藤堂は承諾し、野崎は気象庁天気相談所に向かった。野崎はデータの専門家の市村と対面した。

3年前の5月20日の午前1時から午前6時は、寒冷前線が日本付近を通過したため、気温が高く、関東南部全域に渡って快晴だった。

浦安のごく一部に、早朝にわか雨が降ったというデータは無かった。

野崎は観測点が疎らであることから、雨が降っていなかったとは言い切れないのではと反論した。

市村は都内での本庁以外の観測データをカバーするために、気象に関心のある民間人に観測を委託し、報告をしてもらうシステムがあること、資料は委託観測の報告書も集めていたため、記録漏れは考えられないことを説明した。

市村と野崎はお互いに譲り合わず、野崎は一係室に帰った。

山村は三上から古川の聴取を聞いたときから、古川を疑っており、迫田にアリバイがあると仮定して自分なりに捜査していた。

古川には、迫田に殺人の容疑がかかるのを予想して松井を殺害して、店を乗っ取ったという節があった。

古川を捜査するためには、迫田の無実を立証しなければならなかった。

野崎は良子に、3年前の日記を見せてくれるように頼んだ。

良子の日記には、5月20日が晴れと書かれていた。

野崎は一係室で浦安と船橋の地図を広げていたが、藤堂から迫田が起訴されることになったということを聞かされた。

野崎は藤堂にもう一度捜査させてくれるように懇願し、浦安市に向かった。

野崎は浦安の海沿いを調査中、市村と会った。市村は野崎を良子の父親と知らずに対応したことを謝罪した。

市村は良子から話を聞き、この地域の委託観測員から話を聞こうとしていた。

市村は曇天にも関わらず、午後から雨が降ると予報していたため、長靴を履いて傘を持っていた。

野崎と市村は委託観測員の孫娘と会った。委託観測員は既に死亡していたが、心臓発作で倒れる前日まで委託観測の業務を行っていた。

孫娘は祖父のメモを頼りに報告書を引き写して気象庁に提出していたが、祖父の葬式で多忙だったため、詳細を報告していなかった。

孫娘は仏壇の引出しから祖父のノートを取り出し、野崎と市村に提出した。

5月20日(木曜日)のメモには午前5時から30分ほど、局地的なにわか雨が降ったことが書かれていた。

迫田の証言が立証され、藤堂は港北署に連絡した。

野崎と市村はお互いに感謝した。港北署の小林刑事を含めた刑事4名は「トミー」を訪れ、3年前の5月20日のことについて古川に同行を求めた。

古川は激しく抵抗したが、あえなく逮捕された。

古川は「トミー」を狙っており、恋人が店を欲しがっていたため、迫田と松井の口論を利用しようと決意していた。

事件当日に古川は帰宅した後に、松井に電話で呼び出され、松井に相談されていた。

松井は古川に、迫田のことを警察に連絡するように頼んだ。

古川は松井の営業許可証を見て、松井を絞殺していた。小林は野崎に感謝した。

古川の起訴が確定した。

 

 

メモ

*前回が「1つの愛の終わり」だったのに対し、今回は「1つの愛の始まり」を描いた作品となった。

*長さんの娘の良子が天気相談所の市村進と交際を開始。2人は「ウェディング・ドレス」で結婚する。

*長さんが良子との交際を心配。「刑事の娘」で良子が犯罪と関係していた男と交際していたのが原因?

*長さんの役回りは「縁の下の力持ち」。まさしくそのとおり。

*長さんの自宅の団地は浦安の東にあることが判明。

*長さんも市村も、仕事への真誠ぶりは同じ。

*市村はどことなく飄々としているが、真面目で良い人ということが伝わってくる。

*市村に傘に入れてもらう長さん。

*他署の事件であるせいか、古川は七曲署刑事ではなく、港北署刑事に逮捕される珍しいパターンとなった。

*事件の解決を祝してメンバーと酒飲みに行こうとしたが、市村と良子の約束の影響で参加できない長さん。

*市村は長さんを「お父さん(お義父さん?)」と呼ぶ。

*今回は「女相続人」と同時撮影。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

三上順:勝野洋

田口良:宮内淳

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵、野崎康江:西朱実、野崎良子:井岡文世、野崎俊一:石垣恵三郎

市村進:柴俊夫、小林刑事:小野武彦

松井登美子:賀川雪絵(現:賀川ゆき絵)、桂木梨江、迫田茂:蟹江敬三

古川清:谷本一、折原真紀、朝野和信、猪野剛太郎

篠原大作、杉田明夫、中川明、渡辺巌

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:田波靖男、小川英、柏倉敏之

監督:澤田幸弘