第193話「二人の刑事」

放映日:1976/3/26

 

 

ストーリー

タクシー運転手(中島元さん)が強盗に撲殺され、遺体が放棄される事件が発生した。

現場に七曲署捜査一係が駆けつけた。タクシーは1km先で乗り捨てられ、乗り捨て現場に犯人の痕跡が何もなかった。

運転手の日報によると、被害金額は4700円だった。

三上は遺体の側の草むらから凶器のスパナを発見した。そこに本庁捜査一課の沢村幸雄刑事(成田三樹夫さん)が現れた。

沢村は刑事学校時代、野崎と一緒にラグビーをした仲であり、同期の中では出世頭だった。

野崎は犯行現場が高速道路の下で人通りが少ないため、強盗犯が計画的に車を引き込み、襲撃したものと推測していた。

タクシーからは現金の他に、2×7cm、厚さ8mmで金属製の、縦に金の筋が入り、5000円相当の新型電子ライターが盗まれていた。

捜査会議中に沢村は、強盗犯をタクシー強盗の常習犯で、出所している黒井忠と断定していた。

沢村は2度黒井をタクシー強盗容疑で逮捕しており、黒井はそれ以前にもタクシー強盗の前科があった。

黒井の手口は今回の犯行の手口と酷似していた。

黒井の犯行には一定の周期があり、前3回の犯行とも出所して1年経過した頃に実行しており、ちょうど今の時期が出所して1年目になっていた。                                                                                                                                                                                

黒井の以前3回の犯行は運転手を殺害しておらず、軽傷で済んでいたために刑も軽く済んでいた。

沢村は運転手の傷から、運転手が激しく抵抗したために黒井が殺害してしまい、凶器のスパナを放り出して逃走したと言う推理を立てていた。

スパナの血液型と毛髪がタクシー運転手のものと一致したが、指紋が採取されなかったという報告が入った。

沢村は黒井の犯行の特徴が手袋を忘れないものであることを知っていたため、報告を聞いて一係室を飛び出した。

野崎と沢村は黒井のアパートを張り込んでいた。黒井(工藤堅太郎さん)が帰宅した。

沢村は令状無しにピッキングで車のトランクを開け、工具入れにスパナが無いことを確認した。沢村はこのことを証拠にするつもりは無かった。

沢村は黒井を尋ね、昨晩のアリバイを詰問した。黒井は犯行を否定し、恋人の大友恭子の自宅にいたと述べた。

沢村は黒井に自宅を動かないように警告した。沢村は野崎に、新宿2丁目のバー「桂」に勤務する大友を任せ、黒井を張り込むことに専念した。

沢村は黒井宅にピッキングを使って侵入しようとしていた。黒井は大友(川崎あかねさん)に、一晩中自分と一緒だったと偽証するように頼んだ。

そこに沢村が踏み込み、沢村は黒井に昨夜のアリバイを尋ねたが、黒井は逮捕するなら証拠を揃えるように警告した。沢村は黒井宅を後にした。

野崎は「桂」に赴いた。大友は黒井が午前2時まで「桂」に居座り、一緒に帰宅したと証言した。

競馬新聞を読んでいたバーテンの戸田武夫(佐藤仁哉さん)も、大友と同様の証言をした。

沢村は黒井のアリバイ工作を藤堂と野崎に報告し、逮捕状を申請した。

しかし、藤堂は黒井に強盗殺人の理由が無いことを理由に却下した。

藤堂は黒井が大友のアパートにいなかったという確証があれば偽証罪で逮捕できると伝えた。

沢村は黒井を自分で逮捕すると宣言して一係室を去った。沢村は一度も捜査を失敗したことがなかった。

藤堂は本庁と七曲署との合同捜査中には、沢村にも捜査のルールの遵守をさせるという方針を固めていた。

山村は中古車のセールスで真面目に勤務している黒井が僅かな金のために殺人までするかという疑問を持っていた。

山村は運転手の傷から、強盗犯が気絶した運転手を何度も殴っているということが判明した。

野崎は沢村夫人(浜田ゆう子さん)に電話をかけ、沢村の所在を尋ねたが、沢村は帰宅していなかった。

沢村は居酒屋を出る黒井と大友を尾行した。野崎は藤堂に、「桂」にも黒井宅にも2人が不在であること、大友宅の近くにいることを連絡した。

藤堂は野崎に、交代するまで大友宅の張り込みを命じた。

黒井と大友はゲームセンターで遊んでいる最中、肘でゲーム機のガラスを破壊してしまい、逃走した。

2人を尾行していた沢村はガラス破壊のことをゲームセンター職員に知らせた。

野崎と田口は大友宅を張り込んでいたが、黒井と大友が帰宅してきた。

そこにタクシーで大友宅に直行した沢村が現れた。

沢村は黒井に、ゲームセンター支配人からの器物損壊罪の告訴状を見せ、署までの同行を求めた。

黒井と沢村は格闘になり、黒井はアパートの柵を飛び越え損ね、2階から転落してしまった。

沢村は強引に大友宅の家宅捜索を始めた。野崎は沢村の家宅捜索を中止させようとしていたが、片づけの最中、植木鉢の底からライターを発見した。

沢村は黒井を真犯人と断言した。

大友宅で発見されたライターは、運転手の妻や同僚の証言により、運転手の私物のライターであると断定された。

石塚と三上と田口は事件の終結に安堵した。

しかし、藤堂と山村は黒井の供述を一言も取れていないことから、事件が終結していないと思っていなかった。

黒井の傷は肩の骨折で病院に搬送されていた。野崎が果物を持って見舞いに出かけていた。

沢村は黒井に運転手のライターを見せたが、知らないと否認された。

黒井は沢村から工具入れのスパナがないことを尋ねられ、でっち上げと抗議した。

黒井は事件当日に無理やりに誘われ、戸川組の賭場である矢追町の旅館「安渡荘」にいたと述べた。

アリバイをでっち上げと思った沢村は黒井の左肩を強引に揺らして尋問したが、野崎と看護婦に止められた。

野崎は果物を差し入れて立ち去った。黒井は看護婦にリンゴを切るように要求した。

野崎は沢村に、犯人にも人権があること、捜査にルールがあることを言い聞かせた。

黒井が果物ナイフで看護婦を人質にとって逃走した。

黒井はエレベーターを降りた後に看護婦を離し、単独で逃走した。

沢村は黒井を追跡したが、黒井に逃げられてしまった。沢村は黒井に果物を差し入れたことを重大なミスと認識し、謝罪した。

藤堂は野崎に、黒井に果物を差し入れる気になった理由の説明を求めた。

野崎は黒井が犯人である場合、なぜ大友のアパートの鉢植えにライターを隠したのかを不自然に思っていた。

戸川組の捜査を済ませた山村と石塚が一係室に帰還した。

山村は「安渡荘」の住人の怯えから黒井の主張が正しいと思っていたが、戸川組が博打について否定したために、黒井のアリバイの証人はいなかった。

山村は黒井のアリバイ証明をさせないために、犯人がその当日を選んだのではないかと推測した。

山村は犯人が、黒井が犯行当日に博打に行くことを知っていた者、大友の部屋に入ってライターを置く事が出来た者と推理した。

藤堂は山村と野崎と石塚に、至急に黒井の居場所を突き止めることを命じた。

野崎は帰宅したが、ほどなくして外出し、沢村宅を訪れた。野崎と沢村は寿司屋で会話した。

野崎は黒井がナイフを振り回した理由は、沢村が無実の黒井を強引に責め立てたからと言って、黒井が犯人でないと意見した。

沢村は依然に黒井が真犯人であると思っていた。

スパナの鑑識の検査結果は黒井のものと断定されたが、野崎はスパナもライターと同じく真犯人が黒井の工具入れから持ち去ったものと考えていた。

野崎は沢村の態度が黒井を憎んでいるようにしか思えていなかった。

沢村は黒井が1年間更生しようと努力したことを知っていたが、以前に出所したときも犯罪を繰り返したため、スパナで殴り倒される人間を無視するのかと強く反論した。

沢村の考えは黒井に必要なのが手錠と鉄格子であるというものだった。

野崎と沢村は歩道橋の上で会話した。

野崎は刑事としても家族としても平凡な自分が刑事をしているのが、罪を犯さずに済んだ人間と周りの人の安堵した顔が忘れられないからと説明した。

野崎は沢村に対し、黒井への捜査も同じ方法を行うように頼んだが、沢村は態度を変えず、立ち去った。

沢村から、大友宅で大友が殺害されたという連絡が入り、捜査員が現場に急行した。

現場には沢村が既に到着しており、大友が片手で絞殺されていたと断定した。

早朝に大友から110番通報が入り、大友が沢村と話したかったため、電話が沢村宅に転送されていた。

大友がタクシー強盗について話したいと言った直後に乱暴に電話が切られており、沢村が現場に直行し、大友の遺体を確認していた。

沢村は大友が黒井の行動を思い出し、警察に協力する気になったために殺害されたと推測していた。

沢村は七曲署の温情主義のせいで大友が殺害されてしまったと思っていた。

大友の遺体は「桂」のマッチを握りしめていた。マッチの箱には「2-4 4-5 4-6(二重線で囲まれている)」と書かれており、大友が何かを語ろうとしていたのではないかと思われた。

野崎は番号を見て、競馬新聞を見ていた戸田を思い出した。

大友宅に、黒井と同じアパートの住人を装った戸田から通報が入った。

通報の内容は、左手を肩から吊っている犯人を、商店街の外れにある休業中の金網工場で見たというものだった。

沢村は聞き込みを山村達に任せ、金網工場に侵入した。沢村は工場の奥で、潜伏して寝込んでいる黒井を発見した。

黒井は傷の化膿の影響で動けなくなってしまっており、病院に戻すように懇願した。

黒井はタクシー強盗事件について否認し、大友が殺害されたことについて知らなかった。

黒井は戸田に連れられ、病院を抜け出した後からずっと金網工場に潜伏していた。

背後から戸田が鉄パイプを振って奇襲してきたが、野崎が戸田に拳銃を突きつけた。沢村も戸田に拳銃を向けた。

真犯人の戸田は沢村と黒井を相撃ちの形で殺害するつもりで待ち受けていた。

戸田は黒井さえいなければ「桂」も大友も自分の物だったと叫んだ。

野崎は沢村に戸田の逮捕を任せた。沢村は黒井を立たせた。

マスコミは事件を沢村の手柄と報道していた。

野崎は沢村が2日間休暇を取り、夫婦で新婚旅行以来の旅行に出かけていたことを喜んでいた。

 

 

メモ

*長さんの同期生である沢村刑事。成田三樹夫氏のハスキーボイスと迫力ある熱演、抜群の存在感が凄い。

*沢村は証拠固めをせず、違法捜査を頻繁に行って容疑者を検挙するスタイル。

*競艇や競馬を模したゲームがゲームセンターにあることに時代を感じる。

*俊一が再び長さんと同じ髪型に。

*良子(井岡文世氏)と俊一(石垣恵三郎氏)は足音で長さんが帰ってくるかどうかを、「きのうち?(聞き取れない)」のリサイタルの切符を賭けていたよう。結局に喧嘩し、怒鳴られる。そして最終的に康江(西朱実氏)に隣の部屋が受験勉強で神経質になっているとたしなめられる。

*長さんの捜査への信念は「罪を犯さずに済んだときの人間の、周りの人たちのほっとした顔が忘れられない」というもの。七曲署捜査一係の捜査員は皆同じとも考えている。

*事件の流れは何となく「パズル」を彷彿とさせる。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

三上順:勝野洋

田口良:宮内淳

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵、野崎康江:西朱実、野崎良子:井岡文世、野崎俊一:石垣恵三郎

沢村幸雄:成田三樹夫

黒井忠:工藤堅太郎

沢村夫人:浜田ゆう子、戸田武夫:佐藤仁哉

大友恭子:川崎あかね、看護婦:加藤真知子、タクシー運転手:中島元

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、田波靖男、安斉あゆ子

監督:児玉進