ビタミンK2シロップのお話 | 胆道閉鎖症・乳幼児肝疾患母の会 肝ったママ’s

胆道閉鎖症・乳幼児肝疾患母の会 肝ったママ’s

胆道閉鎖症や乳幼児肝疾患の早期発見に力を入れております。
便色カードで早期発見 No more 脳出血!

こんにちわ。肝ったママです。

最近インターネットでこんな話を見かけます。

「今って、K2シロップを飲む回数多いのね。」
「毎週一回飲ませなきゃならないけど、忘れちゃいそうだ。」
「う~ん、上手にK2シロップ飲ませられないよ…、吐いちゃう…。」

K2シロップを飲む回数増えた…と聞き、「えっ?そうなの?うちは3回だけど?」
とビックリしたお母さんもおられるのではないでしょうか??

今日は、このK2シロップの投与回数についてお話したいと思います。

ビタミンK2シロップを赤ちゃんに投与する意義は、以前このじゃーなるでも取り上げました。
【怖い合併症~ビタミンK欠乏症による出血 (K2シロップの意義)】

母乳中心ですと、ビタミンKが不足しがちで、また赤ちゃんもまだ自力でビタミンKを作る力もまだ未熟です。粉ミルクはその点、ビタミンKを配合しております。「完全栄養食」と言われる母乳ですが、ビタミンKに関しては、母乳だけで足りないという事実があります。ですので、よく母親にビタミンKが豊富な納豆などを食べるように、と指導されますが、母親が食べた食べ物からどれだけ母乳に行くのか、その研究もまだまだ完璧にされているわけではありません。(母親の体質・体調に左右されるのが母乳です。)ですので、VK2シロップを投与する…という予防策が取られるわけです。

2009年にとある裁判が起こされました。
「山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故」
という医療事故です。(事故の内容はリンク先をご参照下さい。)

この事故は本来、防げるものでした。
2009年の時点でも、生後の新生児に対し、
生後0日、5日、一ヶ月に計3回、
ビタミンK2シロップを飲ませることをガイドラインとして定めておりました。
しかし、この事故ではそのガイドラインが守られず、赤ちゃんは出血し、亡くなられました。

この事故に対して、医師達はどう動いたのでしょうか?

小児科学会の方では、小児科学会新生児委員会内にビタミンK投与法の見直し小委員会という部署で、検討が行われ、「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン」を出しました。

当時、肝ったママとしても、肝疾患による脳出血の予防の手段としての、VK2投与の回数を増やすことに期待をし、こちらの小委員会宛に要望書を提出させていただきました。しかし、この時は投与方法について混乱を生じかねないと関連委員会や他の学会等より指摘があり、再度協議を重ね、修正しました。結果的にはVK2の投与方法は大きく変わることはありませんでした。

ですが、この事故裁判と、混乱は招いたものの小児科学会がこういう動きを見せたことによって、心ある医師には「ビタミンK投与」について、考えて下さる機会になったようです。

山口県では、県内の医師が動きました。
現行の3回投与法でも、ビタミンK欠乏性出血症は予防できるのですが、これをもっと限りなくゼロに近づけようと、海外の投与法なども参考にし、独自の投与法を県内の小児科で勧めました。
山口県のビタミンK投与法については、かるがも先生のブログにも詳しく載せてあります。
【山口県小児科医会のビタミンK2シロップ投与】

山口県では、以下のようなビタミンK投与法を進めております。
1.出生後 産科で投与。
2.生後1週(産科退院時) 産科で投与。
3.生後2週 産科退院時に3.4.、2回分のビタミンK2シロップを渡す。
4.生後3週
5.生後4週(1ヶ月健診) 健診を行う小児科で内服、ないしは渡す。
6.から13.までの8回分は小児科で渡す。
ただし、生後1ヶ月の時点で、人工栄養(ミルク)主体の場合はビタミンK2シロップを渡さなくてもよい。
6.生後5週 7.生後6週 8.生後7週 9.生後8週(2ヶ月)
10.生後9週 11.生後10週 12.生後11週 13.生後12週(3ヶ月)

ビタミンK投与はあくまでも「ビタミンK欠乏性出血症」の予防なので、保険は効かず、基本は自費負担です。

また都内でも広尾の日赤医療センター、新宿の東京医科大学でも3回以上、投与されているそうです。

【日赤医療センターのビタミンK投与法】
1.生後0日と退院時(5日目)と1ヶ月検診時は病院で飲ませる。
2.退院時に10本を持たせて、3か月0日になるまでは週1回1本飲ませる。

【東京医科大学のビタミンK投与法】
「対象となる赤ちゃん」
 1ヶ月検診の時
母乳栄養の赤ちゃん
混合(母乳と人工乳)栄養で、母乳のほうが多い赤ちゃん
「飲ませ方」
生後1ヶ月から毎週一回(1包)
生後3ヶ月になるまでの8週間(合計8回の投与)

他にもツイッターやインターネットの情報から、独自の投与法を試みている医療機関や自治体も存在するようです。(もしご自分の産院や病院が3回以上の独自投与法をされているのでしたら、ぜひ情報をご提供いただけると助かります。)

このような事情で、現在「原則として」、新生児へのビタミンK投与は正期産の新生児であれば、生後一ヶ月まで3回投与されております。(早期産児や合併症を伴う新生児はまた投与法が異なります)しかし、山口県の事故裁判以降、新しい独自の投与法を試みている医療機関も増えてきているのは事実です。