朝の通勤風景は、人生のリズムを垣間見ることができ、実に面白い。


朝は早いのが好きで、前職時代から早朝出勤が習いとなっている。


早朝のひんやりとした清楚な空気を吸いながら、静かな住宅街を駅に向かう。


世田谷徒然日記


早朝すいている小田急線でゆっくりと座って、職場のある本郷に向かう。朝は、快適である。


代々木上原から、千代田線に乗り換えて、そのまま大手町経由で、丸の内線で本郷三丁目駅で下車。その間、結構ゆっくり本も読める。


まだ早朝の本郷は、人通りも少なく、気分好い。


大学に向かう途上、数分の間のことながらに、必ず出逢う人がいる。これが実に不思議なのである。


少なくとも、出勤途上必ず出逢う方々が、数人はいる。


むろん、お互いベクトルは逆である。


小生は本郷三丁目駅で下車して大学の研究室に向かう、職場近くである。一方、先方のすれ違う方々は、おそらく住まいが本郷で、マンションから出てきてばかり。さあこれから出勤だという感じで、本郷三丁目駅に向かう途上で、小生とすれ違うのである。


しかも、驚くことに数分どころか数秒も違わず、同じ場所ですれ違うことは神業である。いつもの曲がり角とか、いつもの店の前とか。その精度の高さには、感動を覚える。


その人、その人の起床から始まり、顔を洗って、朝食をとり、服を選んで、靴を履いて、カバンを持って、ドアーを開けて、出勤する、その見事なほどの日々の規則性が、そして、その生活リズムが、その人固有の1日のサイクルとなり、そのサイクルが、たまたま、小生のサイクルと、本郷三丁目駅界隈でクロスするのであろう。これが、飽きもせず、毎日繰り返しているわけである。そして、生涯、このまま、お互いの名前も職業も知らずに、互いの人生を終えるのであろうか。


当然、お互いの氏名も職業も、素性は皆目見当もつかないのであるが、こうして、毎朝、顔を合わせていると、不思議な連帯感すら感じてしまう。まして、その日に限って、登場してこないと、勝手が違って、調子が狂う。むしろ、風邪なのかと余計な心配もしてしまう。


どうでも好い話と言ってしまえばそれまでであるが、不思議な符合に気づき、その見事なマッチングに妙に感心している今日この頃である。