ちぃ~の頭ン中


今回の読書感想文はこのコーナーにコンスタントに登場する三島サン。



前にちらっと書いたと思うんですが、あたしはこの人の小説、ぶっちゃけ苦手です汗



丁寧すぎる修飾部分、しつこいまでの比ゆ、難しい漢字や言葉が多い重厚な文体かつ、主人公が変態なグロい話だったりするから、文体のせいで更にグロさ倍増な感じがして(^^;)



「仮面の告白」あたりは、女性にはちょっとキツいんじゃないかと思いますね。「潮騒」は好きだけど。



しかしこちらは純文学作家のこの方が大衆小説として書いたもので、今までのものとは書き方が違っていて、とても読みやすいです。



家柄の違いを乗り越え婚約にこぎつけた郁雄と百子。一年三ヶ月後の郁雄の卒業まで結婚を待つのが、ただひとつの結婚の条件。



晴れて公認の仲になった二人だけど、逢引にもスリルがなく、公然と認められた仲というのはかえって張り合いがなく、物足りない...



ここらへんの考え方はこの時代の人ならではなんですが、200ページ以上の長編なので当然平穏無事とはいかず、若い二人には短い間の中でいろんな事件が起こります。



郁雄を誘惑する年上の美女に、百子を郁雄から奪おうとする悪友。そして空回りする郁雄の母親に、百子の兄の恋愛事件。



次から次へと起こるハプニングに読者はひきつけられ、イッキに読ませられるわけですが、それにしてもそれぞれの登場人物が非常に魅力的に描かれていますねー。



特に年齢的には立派な大人なのにどこか子どもっぽく、空回りしては波乱を巻き起こす郁雄の母親・宝部夫人と、百子の兄で「雲の上人」と形容される文学青年東一郎。



この二人の動向には最後まで目が離せず、ヒヤヒヤもので面白かったです。



評価は☆5つ。「潮騒」に続いて三島由紀夫の好きな作品になりそう。



この方はおカタいものばかりでなく、このような読者に親切な文体を使った大衆小説もけっこう書かれているみたいなので、機会があればまた手に取ってみたいです。