いつも、私に、遊び相手をして欲しがり、
なかなか、一人遊びをしたがらない千春だが、
与えておくと、いちばん熱心に、長いこと、
遊んでいてくれるオモチャがある。
それは、粘土だ。
粘土ならば、千春は、一人で何十分でも、遊んでいる。
たたいて、こねて、のばして、切って、
千春の粘土遊びは、決まって、お料理ごっこだ。
「クッキンデビル」(2011年11月7日記事)の頃から、
気づけば、はや8ヶ月にもなるが、
「クッキンアイドルごっこ」が、今も終わらないところを見ると、
お料理は、本当に、好きなのかもしれない。
「あこがれのひと」、まいんちゃんにも、だいぶ近づいた。
お料理をしながらの口ぶりも、知っている人なら、
すぐにそれが、まいんちゃんを真似ていると、わかる。
スウィートな作り声での、千春のレシピは、こんな風だ。
「これに、さとう
しお
こしょう
ねんど
を、いれるよ」
さすがアイドルは、クリーンなイメージが命だから、
原材料の偽装はしない。
続いて、千春は、
「これをまぜまぜして~、じゅっぷんくらい、やくよ」
と言うと、粘土を乗せたトレーを、
マイ電子レンジの代わりにしている、ビデオカメラの空き箱に入れ、
フタをして、スイッチオンしている。
この、ビデオカメラの空き箱は、遊び倒されて、もうクタクタである。
おそらく、カメラ本体よりも、働いただろう。
さて、今日も、私が夕飯の支度をする傍ら、
千春はかいがいしく、粘土でお料理をしていたが、
そのとき、折からの細かい雨が、風で室内に拭き込み始めたので、
私は、部屋の窓を、閉めることにした。
向こうへ行ったついでに、千春のクッキンテーブルを覗いた私は、
「あら?」と、そこに足を止める。
千春、なかなかの、包丁さばきである。
細長くのばした粘土が、ほぼ等分に、切ってある。
へえ、頻繁に、何十分も、お料理の練習をしているのは、
伊達じゃないんだ、と、感心する。
これは褒めてあげよう、と思い、
「千春、これ、とっても上手だね。何を切ったの?」
と、尋ねると、千春は、
「いか」
と、答えた。
クッキンアイドルにしては、渋い。