桜が誇らしげに咲いている。

今年は1人で眺めてる。

きっとまた雪が降る頃まで触れる季節ごとに

今年は1人で…のくだりが続くんだろう。

知ってたけどね、でも、いちばん頼りにしてた子とのさよならの後は知らない。

それを経験するのがこれから。

まだ散らない花が咲く木の下で座ってーって言う

散り始めた木の下で、風を待ちながら座ってーって言う。

緑色が増えたら、緑色の風の中を2人で歩く。

藤棚の下で座ってお話。

気持ちいいねー。楽しいねー。

虫が落ちてきて、ひゃーって逃げる。

たくさん笑う。

白い日差しを避けながら木陰を歩いて、日陰から白い光を見てお日様すごいねー。っていう。

川に入ろうか?

うん。

彼岸花を眺めながら川辺を歩く。

今年も綺麗に咲いたね。水引と彼岸花のコラボはいつ見ても見事よね。

木々が色づく。高いところに行こう。

モザイク模様のような山肌を向い側の丘から見る。

そしてまた冬が来て、

あぁ、今年は1人で見たんだなって、降る雪が積もる背中はもう無いんだ。って

また来ようね。とあの子に言えない1年を

今から過ごすんだなと

桜を見て思う。

私は桜が苦手だ。

好きの延長の嫌いだ。






四十九日の前日に伝え忘れたことを言うよ。
7週間楽しんだ?
明日あなたは大きな何かのところへ行きます。
きっと、今までご苦労様って労ってくれると思う。
明日は周りをよく見てね。
一箇所、光が見えてくるから、その光に向かってまっすぐ行ってね。
周りは暗くて少し怖いかもしれないけど大丈夫。
ここで怖気付いちゃダメなのよ。
あなたはとても勇気があるはず。
あなたなら大丈夫。
大きな何かは、ちゃんとあなたの根本を理解しているから安心して行きなさい。


向こうに着いたらあなたのお父さんやお母さん、兄弟姉妹たちが迎えてくれる。
甘えなさい。
甘えて、余計なことは忘れちゃいなさい。
私がそちらに行った時、必要なことを思い出してくれたらいいから。
私は真っ先にあなたに会いにいくから。

最後のお話だよ。
そして、最後の約束だよ。

じゃあね。

愛してるよ。



過ぎし日々 語り合い 気がつけば夕暮れ
約束は 戯れの 帰らぬ時の事

頭の中でずっとエンドレス。
ひと月を前にして動き始めたんだろうな。
と、同時に無理やり止めていた感情の波が渦巻き始めた。

そこ此処にスイッチがだまし絵のようにあって
そのスイッチはもうハイテクもハイテクで
認識した瞬間にもうON。

まだ新しいスイッチだからね。
感度がすごくよくてね。
だけど、時間が感度をちょうどよく調整してくれるって事も知ってる。

お客さんには訊かれるけど
お留守番してもらってるって言ってる。
慰めとかちょっと遠慮したいし、
なぜか腹が立つから。
感情が乱れるのわかってるから話題に出さないだけだ。
まだ普通に話せないから。
感情的にあの子の話をするのは嫌だ。
まあるい気持ちで話したい。

きっと、まだ。

しばらくかかるってよくわかった。