ジーン・ワルツ
「チーム・バチスタの栄光」「ジェネラル・ルージュの凱旋」などで知られる海堂尊の小説「ジーン・ワルツ」を読みました。

様々な医療行政の問題点を取り上げてきた海堂尊、この小説では、不妊治療や周産期医療などに関する問題を取り上げています。

でも、この作品、「チーム・バチスタの栄光」「ジェネラル・ルージュの凱旋」でおなじみの田口・白鳥コンビや氷姫などは出て来ません。
出て来るものだと思って読み始めたので、ちょっと、残念でした。。。

<STORY>
帝華大学の産婦人科学教室の助教として勤務している女医・曾根崎理恵。彼女は大学での勤務をしながら、週に一度、「マリアクリニック」という産婦人科で非常勤の医師を勤めていた。帝華大学で彼女の上司である清川准教授は、上司から理恵が違法である代理母出産に手を貸しているという噂を知る。かつて男女関係にあった清川と理恵は、お互いに好意を持ちながらも、現在は距離を持った関係を保っていた。清川は理恵の思惑を探るが…。


<Cheeseの感想>
「チーム・バチスタの栄光」以降、一貫して医療問題を取り上げている海堂尊。
冒頭でも書きましたが、本作では不妊治療、代理母問題、地域医療の崩壊などを取り上げています。

主人公の曾根崎理恵は、人工授精のスペシャリストとも言える人物。
顕微鏡下で鋭い手技を発揮して、卵子に精子を人工授精させています。
でも、自身は双子を妊娠した際に子宮癒合不全(双角子宮)を起こし、子宮を摘出しています。

“クール・ウィッチ(冷徹な魔女)”と呼ばれる彼女は妊娠・出産を望む患者側の意見と、その妊娠・出産を管轄する厚生労働省の認識の乖離に怒り、たった戦いを挑みます。
毎日毎日、医療現場の現実を見ている彼女が、持てる武器を最大限に発揮して、医療システムに急襲をかけるのです。

まあ、合法非合法はともかく、いろいろと倫理的にどうよと思ったりもします。
でも、こうやって現実の壁に風穴をブチ開けるような人がいないと、現実は動かないのかもしれないなぁ。
やはり本書は、小説としてというより、一般人にはわかりにくい医療に関する諸問題を、わかりやすくエンターテインメントとして一般に広めている、という所に意義があるような気がしますね。


Cheese自身は今のところ子どもを産む予定はないけれど、F2女子としてはやっぱりこういった問題は気になるところ。
産科医不足問題などはよくニュースなどで見ますし、妊婦たらい回し事件なども気になって、そのニュースに関する記事を探して読んだりもしました。

現場の医師たちは妊婦や新生児たちのために体を張って頑張っているのに、時代錯誤な医療制度が壁となって彼らの邪魔をしたり、命を助けてもらうはずの患者の行動が、医師の足を引っ張っている、というようなこともあるのだろうと思います。
そして、本書の中の医師逮捕事件のモデルとなった福島県立大野病院産科医逮捕事件のような事態も起こると。

一般人の私たちは、こういった事件の詳細をなかなか詳しく知る機会がない(知ろうともしていない)ので、海堂尊さんにはこれからも頑張っていただいて、いろいろな問題を一般に提起して欲しいです。
「オートプシー・イメージング(AI)」なんて言葉、「チーム・バチスタの栄光」がなければ、Cheeseは確実に知りませんでした。。。

個人的には、やはり厚生労働省の“火喰い鳥”こと白鳥圭輔の部下の、“氷姫”こと姫宮が活躍する物語が読みたいなぁ。
あの天才的な記憶力と天才的なドンくささを兼ね備えたキャラ、かなり好きです。。。


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そうそう、そしてこの小説「ジーン・ワルツ」、菅野美穂主演で映画化されるのですね。
海堂尊本人も、なんと医師役で銀幕デビューを飾るのだとか。
秋公開だというこの映画も、早く観てみたいものです。


■映画『ジーン・ワルツ』レビュー:http://ameblo.jp/cheese2000/entry-10778042940.html


映画『ジーン・ワルツ』
公開:2010年秋
配給:東映
監督:大谷健太郎
主演:菅野美穂田辺誠一白石美帆片瀬那奈南果歩風吹ジュン浅岡ルリ子
東映HP:http://www.toei.co.jp/movie/details/1190260_951.html


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