[あっかるウィッ!]morning musume history review #27

「武道館ライブレポ」


新垣里沙卒業コンサートに行ってきた。

急遽追加された光井の卒業セレモニーの関係で、ツアーの通常曲数より少ない構成。
個人的には、高橋愛が抜けてから初めてのコンサート参戦なので、ステージに迫力がなくなるのではないかと内心心配していたのだが、それが杞憂に終わる、迫力のあるステージだった。

それの大部分は、9期メンバーだ。
加入当時の遠慮がちな部分が消えうせ、自分たちが主役とばかりに自信満々な顔つきで歌い踊っている姿が頼もしく、高橋の不在を感じさせなかった。
最近のモーニング娘の構造が高橋愛ありきのものになってしまっていたのではないか、という懸念が拭えなかったのが正直なところだったが、ライブを体験してみると、実はモーニング娘を存在させているものは、高橋愛だけではなく、照明、音響、映像、つんく氏の楽曲、そしてファンの盛り上がりなのだということを認識した。極論してしまえば、どのメンバーがステージに立っていようが、ファンがちゃんとそのときのモーニング娘に思いを抱いて会場に来ていれば変わりない、ということだ。
メンバーは、その時々で必ず主役が現れる。現に今までがそうで、安倍なつみが真ん中に立っていた時代はとうの昔に過ぎたが、モーニング娘は存続している。
そんなことを改めて考えさせてくれたライブだったように思う。

ライブでは、ここ数年のツアーで高確率でセットリストに入っている「グルグルJUMP」が印象的だった。
ツアーごとに歌うメンバーがガラッと変わることと、どちらかというと普段ソロパートの少ないメンバーに見せ場が多いことから、見るたびに新鮮な一曲だ。
ロックバンドがギターで即興で作ったようなシンプルなコード進行の上に、これまた語感の響きだけで勢いで作ったようなクレイジーな歌詞が乗っているこの曲は、ひねりの多いハロプロ曲の中でも異色。振り付けのバカバカしさもあり、ライブでは無条件に盛り上がるこの曲が好きだ。

少し話が脱線するが、この曲での久住小春を見て、彼女の非凡さに気づいた。
お世辞にも歌の上手な方とは言えないが、不安定な安定感というか、久住にしか出せないグルーヴが確実にある。
ハロプロメンバーの歌唱は、基本的にピッチが正確であることが求められ、音の切り方などのリズム感も重視される、ある意味、ストイックにボーカルテクニックを習練した成果を求められる。高橋、田中、新垣などはそのお手本だ。
そういったプロセスを無視してセンスだけで完結させ、リーダーがどうとかセンターがどうだとか上下関係がどうだといった争いに興味を示さずにさっさと去っていった久住の存在も、グルグルJUMP同様、異色だ。あの、トランポリンのように上下にピョンピョン跳ねるような音程の取り方をする歌唱法は、久住にしかない。
彼女がソロで成功したり、早々とハロプロアイドルの世界から抜けていったのも、必然だった気がする。

コンサートの話に戻ると、新垣が最後に「Never Forget」を選んだのが、新垣らしいなと思った。
最初から最後までモーニング娘のことが大好きだったんだろうなと思うと、感慨深い。
そして、新垣と光井には申し訳ないが、コンサートで一番テンションが上がったのが、つんく氏が登場した時だった。
彼が出てくるときは必ず何か重大なニュースがある。そして、提供曲のセルフカバーを流しながら出てくる。
(彼のセルフカバー集を出してもらえないだろうか、そんなものが出たら絶対に買う)
11期メンバーを募集とのことで、ついこの間亀井たちが卒業したと思っていたのに、展開が早すぎて感情が追いつかない。
9期メンバーはすでに後輩を2期従えることになるのだ。ついこの間まで新人だった彼女たちが。
しかし、鞘師のズバ抜けた歌とダンスや、生田の心の底から活動を楽しんでいる感じや、譜久村の歌っている時の表情が豊かになってきているのを見ていると、「地位が人を作る」という言葉を実感する。



コンサート後、武道館近くの居酒屋に入った。
サラリーマンが数組いるくらいで、金曜の夜にしては若干静かな店内。
しばらくすると、明らかにさっき武道館にいたであろう集団が次から次へと入店してきてあっという間に満席、店内はモーニング娘ライブ二次会の様相を呈してきた。黄緑色の服を着ている人の確率が非常に高い。
お互いがお互いを、「ライブ帰りですよね」という暗黙の連帯感を感じている。

そしてそのとき、事件が起きた。

乾杯の音頭を取っていた誰かが、「楽しかった人ー!」と言ってしまったのだ。

店内のハロヲタ全員が、「はーい!!!」と叫び返した瞬間の、サラリーマン集団のびっくりした顔が忘れられない。(toggle)