2017年8月 山の日登山 秋田駒ヶ岳―9時間の道 のつづきのつづき
12:10 湯森山からは1時間半ほどで、笊森山(ザルモリヤマ 1,541m)。
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雨を含んだ風が文字通り「ビュービュー」吹き付ける笊森山山頂でお昼。
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お宿が作ってくれたお弁当は、大きな大きなオムスビ2つとプチトマトひとつ、チーズひとかけら。お新香ちょっぴり。
ビニールゴミが風に飛ばされないようにと、気が抜けない。
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山で食べるオムスビは最高。
でも、風がひどいのでゆっくり食べてもいられない。
ランチも早々に切り上げ、12:30 笊森山を出発。
途中、山で亡くなったであろう人を偲ぶ石碑が。
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おそらく、笊森山と烏帽子岳の中間の、まさにここで何かが起こって亡くなったのだろう。
山で亡くなるのはたまらない。
(わたし的には山に葬られるのがいいなぁとも内心思うのだが、残された方はたまらないだろうなぁ。)
とりあえず生きて帰ろう! と自分に言い聞かせる。
13:45 烏帽子岳(エボシダケ またの名を乳頭山 1,478m←1477.5mと杭には記入されていた。)に到着。
頂上のコンパス(?)の上にどなたか眼鏡を忘れてまーす。
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遠くからはおっぱいのように見えた烏帽子岳(乳頭山)だが、
その山頂は、鋭く砕けたような礫の山。
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「田代平」が「タシロタイ」と読むのだと、標識を読んで知る。
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14:10 烏帽子岳(乳頭山)山頂を出発してからは
写真が一枚もない。
25分掛って田代平(タシロタイ)山荘(1,270m)……といっても、何が「田代平山荘」だったのか、もうよく覚えてない。疲れてしまっていたのだ。
人気のない山荘らしきものが一軒あり、トイレもあるようだったが、中には入れないようだった(?)。
さらに
50分以上の道は、道なき道! 草で足元は見えない。
そのくせ、「道」というより、雨水が山を走るに任せて抉られ出来た細い溝のような“道”で、
足の置き場のないところが多く、
泥はぬるぬると滑りやすく、
木の根は重なるように延び広がり盛り上がり、まるで人間の足を引っ掛けんと企んでいるようでもあり。
足もとはまさぐるように進まねばならない。
――それでも、私は隊列の真ん中に挟んでもらっていたので、一番楽な位置。先頭を行く方はさぞしんどかったろうと思う。――(。-人-。)
ろくに見えない足元に神経を集中してしまうと、横から伸びてきている枝に、頭をこずかれ、するどい草草に目をつつかれそうになり、
長袖のシャツやズボンの上からもアザミの棘は痛いのであった。
膝はカクカク、上手く足が上がらなくなって
細い倒木ひとつ跨ぐのに弁慶の泣き所をガッとぶつけ……。
さて体力の限界に近づくと、いつも通り、私は自問自答が始まる。
私はなぜこんな苦しい思いをして歩いているのだろう?
私は山が好きと公言しながら、こんな思いをするのなら、実は、山が好きではないのではないか?
いや、私は本当に好きなのだ。
今は辛いけれど、山が好きだ。
昔の修験者は、こんな苦しさは当たり前のように暮らし、この苦しさに加えて、さらに何かを成し遂げんと、命を惜しまず打ち込んだのだろう。
それくらいに生きなければ、生きたとはいえないのではないか?
これは、この山道の苦しさは基礎の基礎だ。
苦しいのがおかしいのだ。苦しむ私が弱いのだ。
いや、苦しい。このまま最後まで歩けるか、私?
しかし、途中で音を上げてもどうしようもない。
歩くしかないのだ。
他になければ、その道を行くのみ。
あぁ、その道を行くことの楽しさよ!
いや、楽しくない。辛いのだ。
いや、辛いのではない、自分から欲していたことをしているだけだ。
あぁ、酒は大好きなのに、酒に弱く、
山は大好きなのに、こんなにへたれで、
温泉だって大好きなのに、すぐに湯あたりして、30分と入っていられない……
私は自分が好きなことに邁進できない体質なのか?
そもそも、私は私が好きだと思える瞬間が最も幸せだと思う人間だった。
好きなことをしているこんな幸せなことがあろうか。
それを、なにを苦しいだの辛いだの思うのだろうか、
そもそも根性が腐れ切っているのではなかろうか、
などと疑問を感じている段階で腐っているのではなかろうか、
しかし、疑問を感じることは大切なことだ……
あぁ、トップの人、なんであんなに早く歩けるのだろう?
足だって痛いだろうのに、あのパワーはどこから来るのだろう?
そもそも山が好きな気持ちのいい人は、私のような人間とは出来が違うのだ……
ストックが岩をつかみ損ねて滑り、
肩透かしをくらう。
あぁ、私が伸ばした手も、何度空かされたことだろう。
私の手はもはや何も掴めないのではないか? ……等々、
エンドレスで、もう、ぐちゃぐちゃ。うじうじ。(つまり、実に私は悲観的なのだ。)
道なき道は(いぁ、道といえば道なのだが)、しかし確実に下へ下へと下っていて、
川の音が近づいてきて(それは「先達渓谷」の川音だったようだ)、
山の澄んだ空気が段々生臭くなってきて、
土の匂いもなにやら胡散臭い匂いになってきて、
あぁ、山が終るという残念さと、
さっさと宿に着きたい、湯に浸かりたいという俗念を抱えて、
烏帽子岳山頂を出発してから1時間55分後の 16:05
自問自答、苦悶苦闘の山道を抜け、
無事に、孫六温泉(マゴロクオンセン 830m)に到着したのであった。
あぁ! 山って、素敵!