「国をつくるという仕事」を読んで。 | - Change Myself -

「国をつくるという仕事」を読んで。

「国をつくるという仕事」という著書を読みました。著者は元世界銀行副総裁の西水美恵子さんです。

過日に食事をした同世代の仲間から勧められた本ですが良書でした。

著者の人生は、とある機会で訪問した、エジプトの首都カイロの路地を進んだ貧民街で出会った、一人の少女との出会いにより一変します。

その少女の名はナディアというのですが、出会った時にはすでに病を患っており、最後は西水氏に抱かれたまま息をひきとったそうです。痩せ細ったナディアを抱きかかえながら、悲しみに暮れている時に西水さんの眼に飛び込んできたのは、きらびやかに輝く都会の町並みだったそうです。

それまではなに不自由なく、むしろやりがいを持って教鞭を取っていた西水さんでしたが、その光景を見て世界銀行に入行することを決意したそうです。

そもそも世界銀行の仕事はというと、金融市場や加盟国から資金を調達し、そこで集まった資金を途上国に融資し、開発支援を行うことです。
著書を読むまでは知りませんでしたが、世界銀行はただ単に融資をするだけではなく、言わば「モノ言う株主」ならぬ「モノ言う銀行」で、途上国の政治に積極的に関わり、国づくりに多大な貢献をしています。

著書中には、南アジアを中心とした各国首脳とのやりとりや、国の荒廃ぶり、既得権益の非道徳な強権ぶりなどが事細かく綴られていましたが、何ともやりきれない想いを抱きました。国を復興する上で必要な資源(資金や方法)を備えていても、正しい方向になかなか進んでいかないジレンマなどは読んでいて苦しく思いました。

以上のような改革路線を正しく辿れないケースに共通していることは大きく分けると3つです。

一つは既得権益層の抵抗によるものです。改革が進むと自らの利益を損ねる層が、それを阻止しようと躍起になり、改革が失速してしまう例がいくつかありました。

もう一つは強欲です。大きな権力を手にしたものの醜悪さは読んでいて気分が悪くなりました。この二つに関して追記すると、既得権益層も一時は民を考え、自らの利益を放棄しようという方向に気持ちがシフトするのですが、その多くは覚悟の不足により頓挫してしまうケースが多かったように思います。

最後、三つ目は最高権力者の未熟さ、リーダーシップのなさでしょうか。未熟な理想論で改革を目指そうとしていたがゆえになにも物事が進展しない、といったケースがこれにあたります。つい最近の話題に置き換えると、前市長時代の大阪市などがそれにあたりますかね。有事の中で盲目的な耳障りのよいスローガンを掲げる企業のトップ、今の日本の政治などもこれにあたるでしょうか。

以上のような腐敗ぶりの中で、ひときわ際立つリーダーシップを発揮する国のトップもいました。ここは詳しくは割愛しますが、つい先日話題になったブータン国王などはそれに当たる人物です。この著書を読めば、ブータン国王がやはり本物であったことがよく分かります。

現在、世界には9億6300万人もの人々が飢餓で苦しんでいます。年にすると1500万人、秒にすると4秒に1人が飢餓が原因で死亡しています。その主な原因は、インフラが整備されていない、教育が行き渡っていない、政府が機能していない、1日1ドル以下で生活をしなければいけない、という絶対的貧困です。

冒頭に綴った「ナディア」の死因は下痢からくる脱水症状です。しかもこの脱水症状は簡単に作れる糖分・塩分を混ぜた水で十分に防げたものだそうです。つまりは安全な飲み水の供給と、衛生教育さえ十分にできていれば防げたはずの命なのです。

私達が如何に恵まれているかがよくわかります。こうした現実を真に理解すれば、そう弱音なんて吐けません。こうした事実を私たちは知る必要があります。


この著書は教師としても、反面教師としても、数々の登場人物からリーダーの在り方を学ぶことができますし、同時に途上国の事情を知ることもできる一冊です。ご興味のある方は是非お読みください。



追伸:私はユニセフのマンスリーサポートプログラムに参加しています。ご興味のある方はこのブログ右のサイドバナーをご覧ください。




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