#TK008 東京 その8 | クラシックギターの交差点

#TK008 東京 その8

バイト、バイト、バイト。
もうそればっかりの日々だ。
 
学校はどうなってるんだろう。
セブンスの4度進行コードチェンジは、1拍刻みのチェンジに変わり
メトロノームの速度もアップしてるのだろう。
ますます、無理だ。
 
個人レッスンも曲は止まったまま。
先生、がっかりしたろうなぁ。
 
スタッフをみたあと、宍戸君はスタッフみたいなバンド作ろうって言った。
「おまえ、エリック・ゲイルかコーネル・ディプリーみたいにギター弾けるか~」
彼はスティックをレギュラーグリップに構えている。
もう座布団ではなく、ゴムの練習用マットを叩いていた。
「できるさー、うんやろう」
 
 
 
それは実現しなかった。
僕は宍戸君とセッションどころか彼のドラミングを1度も見ず、帰郷した。
 
僕は気持ちの糸が切れてしまった。
あきらめにも似た気持ち。
 
僕は買い揃えた家財道具を宍戸君にあげた。
彼は喜んでいた。
「えーこれもいいのかー」
って言いながら彼の腕はのびていた。
 
実を言えばバイトでの出来事を書いてません。
そこでの、出来事、友情の思い出のエピソードは沢山ありますが
今回は書かないでおきます。
 
宍戸君は羽田に見送りにきてくれた。
彼はレストランのバイトをやめていた。
そして、ビックバンドジャズのドラマーの仕事についた。
学校からの斡旋だと言っていた。
 

「あんなの初見では無理だ―」
「俺にはできねぇー」

 

あいかわらずの宍戸節だ。
「おーい、あげでくでー」が懐かしい。
 
宍戸君とはその後音不通となった。
僕は過去と決別したかったのだろう。
今でも彼はドラムを叩いてるんだろうか。
 

うん、叩いてるよ、きっと。
「これ~いんだべー」って言いながら。
 
僕は過去の自分を救ってあげるためだろうか、
それはよく分からないけれど

今日もギターを弾いている。
 
 
 
 
 
 
終わり