バイラルムービーの「感染力」の基本 | CGM+クロスメディア備忘録

バイラルムービーの「感染力」の基本

バイラルムービーの「感染力」の基本

http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20070820/132589/ より抜粋


「バイラルマーケティング」という言葉がウェブ広告を中心に広がっている。ウェブ上で、口コミが新たな広告手法として有効と見なされ始めたのだ。


そのもっとも大きな理由は、ネット上で「CGM(Consumer Generated Media=消費者が生成するメディア)」と総称されるコンテンツの視聴時間が、どんどん伸びていること。調査会社ネットレイティングスのデータによれば、総利用時間の首位はページビューの王者でもあるYahoo!Japanだが、2位にSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のmixi(ミクシィ)、4位に動画投稿サイトのYouTube、16位にはニコニコ動画が入り、ほかにもウィキペディア(Wikipedia)や2ちゃんねるなどが顔を出してくる。


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バイラルムービーは、「メントス&コーク」がどのように伝播していったのかを考えるのが分かりやすい。そもそも、ダイエットコークにメントスを入れるということ自体、あり得ない組み合わせ。そして、その組み合わせがコークの噴水という見た目にも面白く、派手な効果になり、その効果を使って、プロが見ても呆れてしまうほど、品質の高い映像の競作が始まった。前提の意外性、視覚的な意外性、そして企画の意外性。これらがバイラルの発生のもとになっている


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●バイラルムービーの分類
1)ギミック
メントス&コークはここに分類される。奇をてらったクリエイティブ、つまり通常では起こり得ないようなことを、映像コンテンツにすることで、『これ、面白いでしょ』というクチコミ効果が発生するのを期待したもの。


2)リユース
これはCMや音楽PV(プロモーションビデオ)など、もともとDVDやテレビ用に作られたコンテンツを、ネットで再利用するというもの。予算もかけられて、力のあるクリエイティブが多いので、トラフィックが集まりやすい。ユーザーにとっては、「好きなアーティストや作品の良質なコンテンツを、タダで自分のブログに掲載できる」という魅力がある。


3)コンティニュー
これはいわゆる「続きはウェブで」といった形で作られているもので、今流行りの「クロスメディア」(テレビ、活字媒体、ネットなどを組み合わせ、ターゲットユーザーとの接点を増やす広告展開を狙うこと)に当たる。よほど分かりにくいものでない限り、ほぼ9割方、トラフィックを集めることができるログデータを見ると、必ず、そのCMが放送された時間帯に合わせて、ウェブサイトのトラフィックが伸びているので、これはほぼ間違いなく今後も増えていくスタイル。課題としては、携帯サイトも一緒に構築すること。テレビを見ながら検索するのは、携帯電話のほうが適しているので。ただし、トラフィックは集めても、実際のアクション(購買や資料請求など)にどこまでつながるかは未知数。CMの面白さは認知されても、商品の特性が認知されているとは限らないため、どんな「続き」をネットに置くかということが、今後非常に大事になってくる。

4)プレゼンテーション

どちらかというと「ネットならでは」という形。より詳しく商品を説明する映像で、店頭ビデオや取り扱い説明などのセルフプロモーション系のものも、ここに入るかもしれない。分かりやすい例では、例えば金融商品の内容説明。テレビCMでは、イメージ映像だけを流して、商品内容はネットでより詳しく説明するという形でも使われる。直接購入させたり、資料を請求させるなどの具体的なアクションを起こさせる効果は、ほかの3つよりかなり高い


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実は、ギミック、リユース、コンティニューというのは、費用対効果が出しづらい一番コミットしやすいのはプレゼンテーション。そして、ユーザーの潜在的なニーズも高いはず。インターネットは、調べたい物があるときに一番使われるものなので。検索広告があれだけ伸びたのも、その辺が背景にあるのではないか。


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「バイラル効果を起きやすくする」ノウハウ

・ムービーのページに、自分のブログに張り付けるためのHTMLを提示しておく

・ブログサイトと提携して、ムービーが再生されるブログのテンプレートそのものにしてしまう

→バイラルムービーを見た人がすぐアクションできるようにする仕掛け。一番重要なのは、ムービーを見た-面白かった-自分も紹介したいという一連の動きをストップさせないこと。そのために、ムービーをブログパーツで配布することは有効な手法。

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ブログで動画が表示される位置の関係

・記事本文の横に張り付けられて露出しても、実は記事に書かれないとブログ検索に引っかからないため、ネットでの噂が醸成されにくいのではないか?

・ギミック系のムービーは、ブログの記事に書かれる率は高くなるが、それでも、日がたつにつれてどんどん記事は落ちて(さらに新しい記事が更新されるために、目立たない位置に下がって)いく。長い間、噂にされているためには、もう一歩仕掛けが必要。

・反面、常に表示される「サイドバー」に露出できるテンプレートの形は、長い間ユーザーとコミュニケーションを取っていくことができるが、サイドバーにいくら出ても、情報が更新されなければユーザーの関心も無くなっていき、見た目の数字が必ずしも効果指標とは言えなくなる。また、記事のほうに書かれないと検索には引っかからないので、痛し痒しということになる。

・どちらにしてもバイラル効果の醸成には、ある程度長期間にわたってのマーケティング施策が必要。


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バイラルによる効果指標は、「視聴率」的な、必ずしも何万PV(ページビュー)を見られたかということだけではない。「どのようなブログに取り上げられたのか」「どのように広がったのか」ということも重要な情報。


例えば、ブログがA、B、Cとあったとして、ブログAは「ネタ系」の情報を集めているところで、1次読者には一気に広まっても、その先の2次読者(1次読者が投稿した記事を読む読者)以降はあまり広まらなかったとか。ブログBはウェブマーケティングの情報を集めているブログで、そこ経由だと幅広くいろいろな人に広まる、とか。あるカリスマ主婦のブログが取り上げると、ネット外にまで伝播していくとか。そういった指標を、商材や情報に合わせて、世代間の伝播の仕方や、起点となっているブログがどこかなどを、マーケティングの成果報告として出せるという強みもある。


全体のアクセスが多くなくても、訴求したいターゲットには的確にたくさん広まったという形が見えるなら、評価につながる。また、アフィリエイトに関しても、申し込みや販売が、このプロモーションによってどれだけ伸びたか、データとして出せるので、評価判断につながる。アクセス数だけではなく、アクセスの質やターゲティングへの効果測定など、ほかの複数の指標で、効果を見ていくことが重要。


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バイラルマーケティングのプロモーションのポイント

・動画というものは、結局、素材にすぎないということ。どんなに面白い映像も、どんなに芸術性が高い作品も、ネットの中においては、コミュニケーション設計の中の1パーツにすぎない。

・キャンペーンの目的は、マスメディアのみを使う場合や従来型のバナー広告より、ずっとはっきりさせておかなければならない。狙うのはアクセス数なのか、ブランディングなのか、コンバージョンなのか。その目的に合ったコンテンツを用意してなければならないし、展開する方法も変えなければならない。そういうことを初めから考えて仕掛けないといけないんですね。

・「CGM(消費者が生成するメディア)はコントロールできない」。これはよく言われていることだが「批判対称賛=2:8」という原則がある。どんなに意を尽くしても、2割程度の批判的な反響、お叱りは出てくる。ここで出てきた2割の批判というのは、今まで見えていなかったものがクッキリと見えてきただけであり、バイラルの場合、どんなに良い商品でも一定数の批判は出る。そこは、真摯に受け止めることが企業姿勢として必要になってくる。うそをついたり、隠蔽したりすると、炎上してしまう。

・雑誌の世界で言う記事広告に当たるものがCGMにおいては定義が極めて曖昧。(記事なのか、広告なのかが曖昧なことで)それ故に炎上するケースも多く見られる。個人的には、ペイドパブリシティ(広告)であることを明記していく方向に進むのではないかと思っている。