【他疾患研究】AMED CFS免疫研究代表山村隆先生|多発性硬化症 抑える免疫細胞確認 | 「慢性疲労症候群(ME/CFS)」と「制度の谷間」界隈の備忘録

「慢性疲労症候群(ME/CFS)」と「制度の谷間」界隈の備忘録

慢性疲労症候群(ME/CFS)・線維筋痛症(FM)患者で、電動車椅子ユーザー。医師診断PS値8ですが、感覚的には「7寄りの8」。
Twitterでの、情報共有に限界を感じ、暫定的にブログを立ち上げました。

更新できる気はあまりしないので、不要になったら閉鎖するかもしれません。

CFS啓発デー前にアップしたかった情報掲載がたまっており、なかなかリアルタイムに情報発信ができませんが…

下記の研究は他疾患(多発性硬化症)についてになります。
が、この筆頭研究者は、山村隆先生
http://ameblo.jp/cfs-tanima/entry-12150530755.html
NCNP


今年度の日本医療研究開発機構(AMED)「慢性疲労症候群研究」公募に採択された慢性疲労症候群研究の一つをご担当される先生です。

慢性疲労症候群の血液診断マーカーの同定と免疫異常の解明:国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP) 山村 隆


海外ではかねてより「慢性疲労症候群(ME/CFS)と腸内細菌」の研究が行われています
ME/CFSに限らず「腸内細菌と脳内炎症の関連を解明する研究」が現在世界中で行われていますが、そのきっかけが、2008年の山村先生らの研究だったそうです。

(2015年9月15日 NCNPリリースより)
http://www.ncnp.go.jp/press/press_release150915.html
"…山村らの研究グループは以前、MSの動物モデルであるEAEを用いた検討において、抗生物質の投与によって腸内細菌のみを変化させるだけで脳脊髄の炎症が軽症化することを見出しており(*1)、この研究が発端となって世界中で腸内細菌と脳内炎症の関連を解明しようという研究が始まりました。
*1 Yokote H, et al. Am J Pathol. 2008;173(6):1714-23.


慢性疲労症候群患者さんにおいても、たまに「食事療法(食餌療法)が功を奏した」という例を聞くことがあります。こうしたケースが実は「腸内細菌」の問題だった、ということもありうるかと思われます。


また、多発性硬化症(MS)は「神経を守るさや状のものが壊れる病気」で、一見慢性疲労症候群とは起こっていることが遠いように思えます。

しかし、その神経傷害の原因が「免疫系細胞が中枢神経に侵入して炎症を起こすこと」だとわかっています。
今後の研究次第では「脳炎症と免疫の関連」から、ME/CFS研究にもなんらかの参考になることがわかってくるかもしれない疾患のひとつであると言えると思います。
http://ameblo.jp/cfs-tanima/theme5-10068310691.html



慢性疲労症候群には「確立された治療方法」がないのが現状です。こうした疾患横断的に役立ちうる研究が、幅広く共有され、様々な疾患の治療に応用されてほしいと思います。

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【発表概要】
・「多発性硬化症」の原因となる中枢神経の炎症を、腸内にある免疫細胞が抑えることをマウス実験で確認した
(国立精神・神経医療研究センターの山村隆・免疫研究部長(神経免疫学)らのチーム)
人の腸にもこの免疫細胞が存在すると考えられ、予防・治療法の開発につながる可能性がある

・マウスの腸の粘膜の中にある免疫細胞の一つ「CD4陽性IEL」に着目。人為的に多発性硬化症を発症させたマウスに、別のマウスから採取したCD4陽性IELを注射したところ、CD4陽性IELが脳や脊髄(せきずい)の炎症部分に移行し、炎症を抑えて症状を軽減させた。
・抗生物質を投与すると、腸内細菌が死ぬとともにCD4陽性IELも大幅に減った。チームは、この免疫細胞を活性化する腸内細菌があり、その減少が病気の発症の一因になっていると推測
ブロッコリーやキャベツなどに多く含まれる物質がCD4陽性IELを活性化させることも分かった
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詳しくは、ぜひ下記リンク(NCNP プレスリリース、毎日新聞記事)をご覧ください。
毎日新聞記事の方が、言葉がこなれていて読みやすいかと思います。
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■国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター (NCNP) プレスリリース
2016年5月20日
神経難病「多発性硬化症」に伴う脳脊髄炎症を抑える新たなリンパ球を動物モデルの腸上皮内で発見

http://www.ncnp.go.jp/press/release.html?no=103
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■毎日新聞 記事
2016年6月6日 20時51分
多発性硬化症 抑える免疫細胞、腸内に存在 マウスで確認

http://mainichi.jp/articles/20160607/k00/00m/040/070000c
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また、今回の記事に先行する研究については、下記をご覧ください。
※2016/7/12 下記の「NCNPプレスリリース 2015年9月15日」について、リンク先が間違っていたため訂正
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■国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター (NCNP) プレスリリース
2015年9月15日
神経難病「多発性硬化症」の腸内細菌の異常を世界で初めて報告~再発寛解型の患者20名の腸内細菌のデータ解析から~

http://www.ncnp.go.jp/press/press_release150915.html
・多発性硬化症(MS, Multiple sclerosis)患者の腸内細菌叢についての詳細な解析。その細菌叢構造の異常、とくにクロストリジウム属細菌の著しい減少などの特徴を明らかに
・MSの類縁疾患である視神経脊髄炎など、他の自己免疫疾患と比較を進めることにより、自己免疫病態と腸内細菌叢の関係についての理解が深まり、病態解明や診断、治療の開発に結び付く可能性
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■毎日新聞 記事
2015年9月27日 東京朝刊
難病 視力低下・まひ「多発性硬化症」 難病招く?腸内細菌異常 精神・神経研究センター発表

http://mainichi.jp/articles/20150927/ddm/041/040/068000c
視力低下などが起きる中枢神経の難病「多発性硬化症」の患者は、健常者に比べて特定の腸内細菌の数に偏りがあるとの研究結果を、NCNP山村隆・免疫研究部長らの研究チームが発表。
患者の腸内細菌の数は、19種類で健常者より大幅に少なく、約50分の1まで減っている細菌もあった。逆に、別の2種類では健常者より最大3倍弱多く、偏りが目立った。
「食生活の欧米化などによる腸内細菌の異常が、発症の原因につながっている可能性がある」
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(参考情報)■多発性硬化症とは
難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/entry/3806
多発性硬化症は中枢神経系の脱髄疾患の一つです。

家庭の電線がショートしないようにビニールのカバーからなる絶縁体によって被われているように、神経の線も髄鞘というもので被われています。この髄鞘が壊れて中の電線がむき出しになる病気が脱髄疾患です。この脱髄が斑状にあちこちにでき(これを脱髄斑といいます)、病気が再発を繰り返すのが多発性硬化症(MS)です。

有病率(患者数)は、最近の各地での疫学調査や2004年全国臨床疫学調査などによれば、わが国全体で約12,000人、人口10万人あたり8~9人程度と推定されています。

MSになるはっきりした原因はまだ分かっていませんが、自己免疫説が有力です。

MSの症状はどこに病変ができるかによって千差万別です。