最近の慢性疲労症候群に関する米国の動き | 「慢性疲労症候群(ME/CFS)」と「制度の谷間」界隈の備忘録

「慢性疲労症候群(ME/CFS)」と「制度の谷間」界隈の備忘録

慢性疲労症候群(ME/CFS)・線維筋痛症(FM)患者で、電動車椅子ユーザー。医師診断PS値8ですが、感覚的には「7寄りの8」。
Twitterでの、情報共有に限界を感じ、暫定的にブログを立ち上げました。

更新できる気はあまりしないので、不要になったら閉鎖するかもしれません。

昨年(2015年)あたりから、
アメリカが国を挙げて、
慢性疲労症候群・筋痛性脳脊髄炎対策に
取り組む姿勢を見せています。

アメリカのCDC・NIHといった
組織の動きは、
世界に大きな影響を与えます。


過去の大きな動きを、
日本語に訳そうと思いましたが
細かい部分がなかなかうまく日本語にできなかったり。

ということで、大きな流れだけを
あげたいと思います。

医師・専門家ではない、素人訳ですので
若干抜け漏れ、誤訳等あるかもしれません。
詳細は原文を当たっていただければ幸いです。

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Beyond Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome: Redefining an Illness.
2015年2月 米国医学研究所(IOM):SEID(全身性労作不耐病)という新しい疾患概念が提唱される
http://www.nationalacademies.org/hmd/Reports/2015/ME-CFS.aspx
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25695122


※以下の内容については、昨年11月のCFS医療講演会において、厚労省CFS研究班(当時)代表の倉恒弘彦教授による、日本語での説明がありました。このブログより詳細な記載のあるスライドを掲示しています。下記ページをご覧ください。
http://cfstokyo2015.jimdo.com/講演テキスト/講演ー米国の動き/


「慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Symdrome:CFS)」「筋痛性能脊髄炎(Myalgic Encephalomyelitis:ME)」について、全280ページに及ぶレポートにおいて、下記3点をはじめとした提言を行った

今回は米国保健福祉省(HHS)が、国立衛生研究所(NIH)、食品医薬品局(FDA)、疾病対策センター(CDC)、医療研究品質庁(AHRQ)などに協力を要請し、全米の総力を挙げてCFSの疾病概念を明確にすることを目的に、これをNational Academy of Sciencesの一部門であるIOMに指示した。

(下記2段落 2016年5月23日追記)
このレポートを発表するにあたっては、IOMにより設置された専門家による諮問委員会が、2012年より約3年をかけ、膨大な量の世界中の論文等の中でエビデンスベースドなものを絞り込み、精査した上でまとめたものである。

先行文献検索:9,112件 最終検討文献:成人319件、小児49件
(p.12,13,14)
http://www.nationalacademies.org/hmd/~/media/Files/Report%20Files/2015/MECFS/MECFS_Powerpoint.pdf


□ME/CFSの背景
・米国での患者数は、836,000人~250万人
・ME/CFS患者のうち84-91%は診断がついていないとされ、実際の罹患率は不明
平均発症年齢は33歳だが、10歳以下から70歳以上までの症例あり
・患者の少なくとも1/4は、ベッドから起きられないか、家から出られない状態
・ME/CFSによる経済損失年間170-240億ドル (米国GDP:17兆ドル=1,800兆円)日本4兆ドル)


□3つの提言
診断基準の見直し
新病名の使用 SEID(Systemic Exertion Intolerance disease)全身性労作不耐疾患
全国の医療機関での、診断とケアを推進させる

※新病名”SEID”や、新診断基準を使用すべきとする理由
・chronic fatigue syndrome(慢性疲労症候群)という病名は、実際の患者の症状に比べ「症状を矮小化した印象」を与える

・myalgic encephalomyelitis(筋痛性脳脊髄炎)という病名は、患者の脳炎症のエビデンスが取れていないことと、「筋痛」がこの疾患の中核症状ではないため適切ではない
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※参考情報:研究発表(日本)
(日本において、2014年4月にME/CFS患者の脳の炎症を世界で初めて証明されたが、まだ世界での追試がされていない)
慢性疲労症候群と脳内炎症の関連を解明
-脳内の神経炎症は慢性疲労の症状と相関する-

http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140404_1/

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・上記よりIOMによる諮問委員は、患者の中核症状ーあらゆる労作(身体的、頭脳的、感情的)によって、多くの臓器の機能に、そして患者の人生のあらゆる面に悪影響を及ぼすーを捉えた、新しい病名SEID(systemic exertion intolerance disease:全身性労作不耐病)を推奨する


□新診断基準案(SEID)

下記3点を全て満たすこと
・発症前に比べ、活動レベルが50%以上低下するほどの、休息をとっても回復しない重度の疲労が6ヶ月以上続く
・健康なときならば全く問題がなかった軽度の労作(動くこと)で、極度に全身倦怠感が悪化する
睡眠障害がある(睡眠後の回復感がない、熟睡感がない)

上記に加え、少なくとも下記のどちらか1つを満たすこと
認知機能の低下(記憶力・思考力等の低下)
起立不耐症(起立性調節障害)※立ちくらみ、めまいなど

これらを、医師が診断し、この病状が(発症後)期間中半分以上に渡って続き、しかも程度が中等度もしくは重度の場合にのみ「SEID」の診断をつける。


□臨床医に求めるもの
重篤な全身疾患であるという疾患認識
(※これまではME/CFSを病気だと思っていない医師が多いことが問題であった)
ME/CFSの中心症状を理解し、診断する
患者に対するケアの方法を改める
 
さらに、この診断基準等は、5年以内に幅広い専門家で構成されたグループによってエビデンスが確立された時点で再考すべきである、とも提言された。

(下記追加:2015/5/20)
ただし、このSEIDという疾患概念については、賛成意見もあるが、患者団体や既存の研究者からの反対もある。(反対意見の方が多い)

今回の提言によって、「ME/CFSと言われてきた疾患が、深刻な全身性疾患であると明言した点」などについては賛同意見も多い。
一方、SEIDの診断基準はこれまでの既存のME診断基準、CFS診断基準とは異なる条件が加味されているなどにより「これまでの研究が生かされないのか」「うつ病などの患者が入り込む可能性が高い」などが反対意見として挙げられている。そのため、2015年11月時点では、「SEID」という疾患概念が適用されるのかについては、明言されていない。

参照)スライド「米国より提唱されたSEIDの概念について」スライド15、16
http://cfstokyo2015.jimdo.com/%E8%AC%9B%E6%BC%94%E3%83%86%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%88/%E8%AC%9B%E6%BC%94%E3%83%BC%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E3%81%AE%E5%8B%95%E3%81%8D/

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2015年10月
NIH、慢性疲労症候群(ME/CFS/SEID)の研究を促進すると発表
https://www.nih.gov/news-events/news-releases/nih-takes-action-bolster-research-myalgic-encephalomyelitis/chronic-fatigue-syndrome

□この方向性の指針となったもの
・IOM(米国医学研究所)による、新しい診断基準と病名(SEID)を勧告した報告書(2015年2月)
・研究戦略を勧告する声明書と報告書を作成した、NIH後援の「予防への道」と題する会議(2014年12月)
https://prevention.nih.gov/programs-events/pathways-to-prevention/workshops/me-cfs


□発表された具体的取り組み内容
・NIH臨床センターにおいてME/CFS患者を徹底して研究するための研究プロトコル(手順、及び条件等について記述したものである)に着手する
国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)が主導して多施設研究を行うために、NIHの多くの研究所からなる>横断的ワーキング・グループにおいて、ME/CFS を長期的に研究する努力を再活性化すること
など

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長くなったので、一旦ここで切ります。