2.トモダチ3-4 | 隣の彼

隣の彼

あたしの隣の、あのひと。……高校生の恋愛模様。



 本当に信じられない。
 あたしは口元に掌を当てながら蜂谷を見る。
 蜂谷は目を細めながらあたしを見る。
「ダイジョブか?」
「大丈夫じゃないし! もう、何なの? アンタ、何様?」
「何様って何? オレ、何かした?」
「アンタのせいで咽たんだし! それなのに何で威張って末央に飲み物買いに行かせるのよ!」
「オレのせいって、意味わかんねー。どーゆーこと?」
 オーバーに両手を上げながら、蜂谷は首を傾げた。
「アンタが急に現れるからでしょ!」
 そうあたしが言うと、彼は目を剥いて。それから、くくっと笑った。
「へー、それでオレのせいなんだ? まーいーけど。だって、オレ、お前のこと、探してたんだし」
「……え?」
「末央に買いに行かせたのも、二人っきりになりたかったから」
「――!」
 突然な意味深の言葉に、あたしは口を噤んだ。
 二人っきりって、何を言って……?
 驚きのまま、彼を見上げる。――と。
「顔、赤ぇ」
「あっ、赤くなんてないし! 大体、アンタが変なこと言うからっ!」
 反射的に反論したけれど、無駄だった。笑い顔は、くっくと声も上げるだけ。
「……ちょ、ちょっと!」
「思い出した? 昨日のキス」
「なっ……!」
 何を言ってるのと言う前に、ヤツの手があたしの頬に触れた。
 ぴくりとあたしの身体が小さく跳ねる。なのに、それ以上身体が動かない。
 夏の光を帯びた明るい茶の双眸が細められ、あたしに近づく――。
 あたしは瞳を見開いたまま、やっぱり動けなかった。
 跳ね除けられない頬の指。距離が縮まる唇。
 またキスされるのかと思った――けれど違った。唇は触れないまま通り過ぎ、耳元に寄せられた。
「末央に近づくな」
 低く凄んだ声が鼓膜に響いた。






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