2.トモダチ 2-1 | 隣の彼

隣の彼

あたしの隣の、あのひと。……高校生の恋愛模様。



 四時間目の終わりを告げる鐘が鳴った。
 現国の教科書とノートを机にしまいながら、あたしは溜め息を吐く。
 またどうせ、女子に質問責めに合うから。
 何度同じことを訊かれたのか、回数なんて覚えていない。その度に同じことを答えるのにも疲れた。それに、質問されなくったって、色んなひとにジロジロ見られるし。
 授業が始まることにホッとして、終わることに憂鬱な気分になるなんて、入学してから初めてだ。これでもし、アイツにキスされたなんて言ったら、どうなるんだろうと思う。
 ――と、思い出したら、あの感触まで甦った。あたしは思わず唇を掌で覆う。
 ああ、もう、本当に最低最悪。
「サワー、購買行くけど?」
 身震いしていると、ひなに声をかけられた。涼香も財布を手にしている。
「ゴメン、あたしはいいや。今日はお弁当あるし」
 今あんなに人が多い所に行ったら、それこそ注目を浴びそうで怖い。
 それに、朝の涼香の言動が奥底に残り、どことなく二人と一緒にいたい気分ではなかった。
「じゃ、行ってくるわー」
 涼香は察したのか、ちょっぴり首を竦めて見せてから、ひなと一緒に教室を出て行く。
 二人が戻ってくるまで、一人で教室で待ってるのも嫌だなぁなんて思っていると、早速あたしの前に女子が立った。隣のクラスの鈴木さんと楠原さんだ。
「ねー、昨日、蒼生の蹴ったボールが当たったんだってぇ? 災難だったねーっ」
 喋ったこともないのに、鈴木さんは馴れ馴れしい口調であたしに話しかけてくる。
「……まぁ」
 あたしは答えながら、このひと蜂谷蒼生の元カノだったなぁ、なんて思う。確か、そう。結構前に二人で腕組んで歩いてるの、見たことがある。






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