――アオ?
あたしは思わず彼女を見る。
「どうしてアオはそうなの!」
まるでお姉さんのような口調で彼女は蜂谷蒼生に言う。『アオ』とは、彼の呼び名らしいけど……。
「大体、ちゃんと、沢木さんに謝ったの?」
「あー? 忘れてた」
「忘れてたって……! もうっ! ちゃんと謝って!」
蜂谷蒼生は、チッ、と、舌打ちすると、面倒臭そうに立ち上がり、あたしを見降ろした。
「悪かったな」
「……え?」
「ボール」
人差し指で頭をコンコンと差しながら、ちっとも悪くなさそうな顔であたしに言う。
ボール……そうだ。コイツ、あたしにぶつけたって言ってたんだった。て、言うか。謝るの遅いでしょっ! しかも態度めちゃめちゃデカイし!
そう思ったところで、ごめんね、と言ったのは、彼女だった。
「ほんっとにごめんね! このひとサッカーやってるし、すっごく痛かったでしょ?」
彼女の方が、蜂谷蒼生よりもずっと申し訳なさそうな顔をする。
けど、何で彼女が謝るの? あ。もしかして……。
二人を交互に見た。付き合っているなら、彼女が謝るのも納得出来る。彼女の彼への呼び方も。考えてみたら、美男美女でお似合いの二人。……コイツの性格は置いておいて。
「今、オマエ、勘違いしただろ」
蜂谷蒼生は、あたしに向かって盛大な溜め息を吐いた。
「……え?」
「オレたち、付き合ってねーからな」
何で考えてること分かっちゃうの!?
思わず眉を顰めてヤツを見ると、
「勝手に勘違いされると、メーワクなんだよ」
ふん、と鼻を鳴らされる。
……初対面なのに、何か、本当にいかすかないヤツ……。
「幼馴染なの」
そこでそう言ったのは、沢木さんだった。
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