「輪るピングドラム」

5th station 「だから僕はそれをするのさ」



初めて冠ちゃんの回想があります。

嵐の夜に熱を出した幼い陽毬ちゃんをおんぶして走り出すお父さん

跡を追って駆け出す晶ちゃんはお母さんに止められますが

冠ちゃんは懸命に追いかけます。

途中でお父さんが冠ちゃんをかばって右手を負傷しつつも

陽毬ちゃんを医師に診てもらうことができました。


このときのお父さんの話がかっこいいのです。

通り過ぎない嵐なんてない
でも通り過ぎるのを待っていたら大切な人を守れない
それを忘れるなよ、冠葉。


幼い冠ちゃんのこのような経験が原体験となって

今の冠ちゃんがあるということがよくわかります。


それとは対照的に

晶ちゃんはドジを踏みまくってます。


陽毬ちゃんといっしょに病院に行き

晶ちゃん一人で医師とお話してるとき

陽毬ちゃんが生き返ったのは宇宙生命体の力だと言い出し

笑われるだけでまったく相手にされません。


プリクリ様は

「お前たちの運命の至るところから来た」と言っており

宇宙から来たなんて一言もいってないし

そんな様子も手がかりも何もないのですから

まったくのトンチンカンです。


晶ちゃんのドジはもう一つあります。

多蕗先生が時籠ゆりさんから

モンブランをご馳走になっているところを目撃して

どん底に落ち込んでいる苹果ちゃんと偶然出会い

自宅に招いたまではいいのですが

いきなりぶしつけに例の日記を貸してくれと切りだします。


さらに

あんなのただのスケジュール帳だろ

さらにさらに

この帽子の正体は、宇宙生命体なんだ

もうボロボロです。


このとき

2号ペンギンはゴキブリまみれになっています。


これ自体がおもしろい比喩みたいになってますが

苹果ちゃんが野鳥観察会のとき

虫に襲われて多蕗先生に助けてもらうという目論見が外れ

時籠ゆりさんに惨敗したとき

多蕗先生が買ってきたのが「ムシケロリ」でした。


苹果ちゃんからみれば時籠ゆりさんは虫であり

晶ちゃんからみれば冠ちゃんも虫みたいにみえるようですから

2人とも虫にやられているというたとえになっているようです。

虫はケロっとしています。


ところで

多蕗先生がモンブランをがっつりほおばっていますね。

どうやら甘党のようですから

ここでもまた鷺(さぎ)=イエスキリストの身体の暗示がみられるのです。


冠ちゃんのときは

「びっくりチョコサンデー」を注文はしましたが

食べている絵はありませんでした。

しかし、多蕗先生は明らかに食べています。

しかも、まるまる1個かそれ以上食べているのです。


多蕗先生の経歴はまだ語られていませんし

キャラ設定さえまだよくわかりませんが

後の展開で命の危機に見舞われることがあっても生還する

ということの初めの伏線であると思われるのです。





今夜もきりのいいところとなりました。

まだ第5話について半分ほどしか述べていませんが

発売されたDVDを観ながら書いてますので

これからのペースを考えてゆっくり書くことにしました。


今から約5時間後に

「輪るピングドラム」第24話最終回がTBSで放映されますね。

わたくし電気栗鼠は昨夜MBSで視聴しました。

たいへん面喰いそうなラストとなりますが

「銀河鉄道の夜」をちゃんと読み返すと

いちばん大切なことがちゃんと示されていることがわかります。


ラストシーンを考えるために

「銀河鉄道の夜」から必要な部分を引用して

2時30分にbotでツイートする設定をしておきましたので

ぜひご覧ください。


今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。

最終回をご覧になる方はぜひ楽しんでください。

では、ごきげんよう。




昨日は、第3話の牛乳の話を忘れていました。

プリクリ様が陽毬ちゃんではないことを証明するために

牛乳を牛乳瓶6本、すなわちおよそ1リットル飲み干します。

おもいっきり笑えるし

ウシのツナギを着た陽毬ちゃんが超萌えかわいいです。


牛乳は「銀河鉄道の夜」に出てきます。

病気のお母さんのために配達してもらってる牛乳が届いてないので

ジョバンニが牛乳を受け取りに行き

待ちぼうけをくらってる間に丘の上の野原に寝転がったところ

いつのまにか銀河鉄道に乗っていた・・・という展開なのです。


ジョバンニはその前に

放課後に仕事をしてから砂糖とパンを買って帰宅しています。

砂糖を買った理由は、

病気のお母さんが牛乳に入れて飲むようにと思ってのことです。


第一話のはじめに「鳥を捕る人」についてお話ししたように

鷺(さぎ)=イエスキリストの身体=甘いお菓子

という暗示が読み取れますから

お母さんの病気を治したいと思ってジョバンニが買ってきた砂糖は

鷺(さぎ)の効能を暗示するための伏線になっていることがわかります。


そして、陽毬ちゃんも病気であり、牛乳が苦手ときています。

そんな妹を高倉兄弟がご飯をつくったりして面倒をみていますから

こうした家庭事情の本質的要素は

「銀河鉄道の夜」をモチーフにしていることが改めて確認できるのです。



4th station 「舞い落ちる姫君」


やっと第4話です。

ここで甘いお菓子が初めて登場します。

冠ちゃんが謎のメールにしたがって

「Family Z」というファミレスで待ち合わせ

「コーヒーとびっくりチョコサンデー」を注文します。

ただし、冠ちゃんがそれを食べる絵はありません。


「銀河鉄道の夜」のカムパネルラもそうなんです。

「鳥を捕る人」が鷺を二つにちぎって渡したし

これはお菓子だというカムパネルラの台詞があるのですが

カムパネルラがそれを食べたという記述も描写もなぜかないのです。


ただ、カムパネルラが生き返ることなく亡くなったということは

結末ではっきりしています。

だから、お菓子を食べてはいないと

考えればすっきり筋が通るとこなのですが、

いかんせん、食べたか食べてないかはっきりしないのです。


冠ちゃんも「びっくりチョコサンデー」を注文してるけど食べる絵がありませんから

カンパネルラが鷺を食べたか?食べてないか?という謎は

冠ちゃんにも反映されている可能性があります。


このファミレスで女性3人がやってきて

高倉冠葉恋愛被害者の会を結成したって言ってます。

どうやら冠ちゃんが女たらしという噂は本当のようです。

ただし、第3話でピッキングまでしてますから

冠ちゃんが犯罪とかかわっていることが否定されるわけでもありません。


一方

晶ちゃんは苹果ちゃんからピングドラムを手に入れようと

いっしょに野鳥観察にやってきて

多蕗先生と時籠ゆりさんと合流し、苹果ちゃんが必死に運命に固執します。


しかし、苹果ちゃんの打つ手はことごとく失敗を重ね

ゆりさんから露骨に、負けないと言われます。

このとき、ゆりさんは「あなたの靴、処分しておいたから」と言ってます。

なんと多蕗先生の家で苹果ちゃんがカレーの入った鍋を取り替えたのを知っているのですから

観ている私たちににとってもショッキングなことです。


ところで、苹果ちゃんはまたしても靴を失ったことが明らかになっています。

さらにこの第4話で苹果ちゃんは池に落ちて溺れて沈んでいきます。

「銀河鉄道の夜」でジョバンニが必死に口説く十二歳のかおる子も

靴を履いてない姿で「銀河鉄道」にあらわれ

沈みゆく客船で救命ボートに群がる子どもたちのために犠牲になった

という経緯が述べられます。


苹果ちゃんがどうしてストーカーになるほどにまで

運命を信じるようになったのか?

この時点ではまだよくわかりませんが

靴をこれまでに2回失い、池に沈んで溺れ死にそうになったことから

「銀河鉄道の夜」のかおる子に準じたキャラとして

設定されていることがうかがえるのです。


池の底に沈んでいく苹果ちゃんの台詞が印象的です。

わたしこのまま死ぬのかな
多蕗さんとキスできなかったよ
ごめんねママ
わたし運命守れなかった
パパどうしてるかな
最後にもう一度会いたいな

そこへ晶ちゃんが池に飛び込み

助け出した苹果ちゃんに人工呼吸をしたのですが

人工呼吸をしたということは、一度呼吸が止まったということです。

いわば、苹果ちゃんもまた一度死んで生き返ったようなものなのです。


ここで思い出しておきたいのは

第3話で苹果ちゃんが朝食をとっていたシーンです。

食パンにチョコレートやジャムといった甘いものをぬりたくってます。


「銀河鉄道の夜」では鷺=イエスキリストの身体=甘いお菓子であり

奇跡によって生き返るという暗示ですから

苹果ちゃんが生き返ることの伏線はすでにあったのです。


それに、第1話で陽毬ちゃんが水族館で

晶ちゃんと二人きりになった直後に一度死んでますから

晶ちゃんが運命を乗り換えるという次の展開もすでに示唆されていました。


苹果ちゃんが生き返るシーンについてもう一つ話しますと

晶ちゃんの心を表しているみたいな2号ペンギンが

このとき沈みゆく苹果ちゃんを目の前にしながら

鯉をくわえて引き返しています。

まさに水を得た魚ならぬペンギンで華麗に獲物に食らいついてます。

上陸して人工呼吸を施す晶ちゃんのすぐそばで

2号ペンギンはなおも鯉をほおばっています。

まさに、苹果を華麗に食べたわけですね。


この出来事で第2話冒頭の苹果ちゃんの語りが意味をもってきます。

無駄なことなんて一つもない
だって私は運命を信じているから



最後にもう一人別の女性が

片方の靴が脱げてしまう事件に遭っています。

被害者は冠ちゃんがかつてあっさりフっちゃったというモデルの久宝阿佐美

このとき赤いハイヒールをはいています。

現場は赤坂見附駅のエスカレーター

赤坂見附駅 エスカレーター 赤い靴の女の子
今日はこれでおしまい デスティニー

苹果ちゃんが持っているダイアリーにこう書いてあるから驚きです。


この謎めいたシーンでわかるのは

苹果ちゃんがもっているダイアリーは

苹果ちゃんがこれから実現すべきだと信じている運命が書かれているだけでなく

苹果ちゃんが直接かかわることのない未来の予言書でもある

ということです。

さらなる謎が加わりました。


エンドカードは「舞い落ちる姫君」

恋に敗れ、池に沈んで晶ちゃんによって生き返った苹果ちゃん

冠ちゃんにフラれ、エスカレーターで何者かに突き落とされた久宝阿佐美


2人の女性はどちらも落ちたのですが

苹果ちゃんは想っているのとは別の男性によって救われました。

舞い落ちるという2つの出来事の対照的な違いによって

苹果ちゃんが運命を乗り換えるという展開が

実にスマートに低燃費に示されているのではないでしょうか。



というわけで、きりのいいところとなりました。

今回も最後まで読んで下さったみなさま

ありがとうございます。

では、ごきげんよう。



「輪るピングドラム」

3rd station「そして華麗に私を食べて・・・」 


こんばんは、電気栗鼠です。

昨日は第3話「そして華麗に私を食べて・・・」でしたが

西条秀樹さんの

ハウスバーモントカレーと「南十字星」の話だけでした。


今日いまから物語のお話をします。

大切な人と食べるカレーは幸せの味がする。」

という苹果ちゃんの語りから物語が展開します。

そういえば、陽毬ちゃんも第一話のはじめのころに

家族いっしょに食事するのが幸せだといってます。

陽毬ちゃんにとって大切な人は冠ちゃんと晶ちゃんでしょうから

カレーは家族いっしょに食べる食事を象徴するメニューなのでしょう。


第2話で苹果ちゃんがストーキングをしていることがわかり

この第3話では

冠ちゃんと晶ちゃんによるピングドラム探しが家宅侵入にまでエスカレートします。


ここで冠ちゃんがピッキングをしています。

第2話では関係した女性の一人がハッキングした情報をもっていました。

第3話ではピッキングの道具をもってそれを使いこなしています。

これにより

冠ちゃんは組織的犯罪とすでに何らかの関係をもっていることが明らかになります。


ただし、この第3話で

苹果ちゃんのクラスメイトが

高倉冠葉が久宝阿佐美というモデルをあっさりフっちゃった

というゴシップネタを話していますから

冠ちゃんが女たらして知られていることもまた事実となっています。


高倉兄弟が荻野目家に侵入して

「陽毬のために」という合言葉でピングドラム捜索を進めています。

第1話の最後で冠ちゃんが陽毬ちゃんにキスするシーンがあったし

水族館で冠ちゃんが戻ってくるのを待たずに

晶ちゃんが陽毬ちゃんを売店に連れていくシーンもあったので

すでにこの兄妹には血のつながりがないという示唆がなされています。


それでも「陽毬のために」という合言葉が

冠ちゃんと晶ちゃんを兄弟として強く結束させるということは

陽毬ちゃんのためにこの家族を壊したくないからであり

陽毬ちゃんが冠ちゃんと晶ちゃんと共に3人で暮らす生活を

何よりも愛しているからなのでしょう。


とはいえ、陽毬ちゃんも女性ですから

しだいに成長して女になりつつあります。


陽毬ちゃんだって恋をしたい

けれども、大好きな男の子は冠ちゃん晶ちゃん・・・

同じ屋根の下で共に暮らす家族であり

しかも兄妹ということになっている・・・


このようにみてみると

陽毬ちゃんがペンギン帽をかぶったとたん人が変わってプリクリ様になり

白いパンツを丸出しにして挑発しつつ

上から目線で命令しまくる

という事情に十分納得できますね。


苹果ちゃんの話にもどりましょう。

苹果ちゃんの回想シーンがありますが

回想シーンはこれまで晶ちゃんのものばかりでした。

それがこの第3話ではじめて晶ちゃん以外の人物の回想シーンが登場するのです。

苹果ちゃんが極めて重要な登場人物であることがうかがえます。


苹果ちゃんは多蕗先生のアパートで

時籠ゆりさんのつくったカレーとこっそり取り替えてます。

そして、桃果姉さんの日記に記された運命のとおりに

帰り道で「泥棒猫」を蹴っ飛ばした結果

顔面におもいっきりカレーをかぶってしまいます。

カレーに苹果が入ったのです。


これは苹果ちゃんと陽毬ちゃんが初めて出会うシーンでもありました。

2人は高倉家でいっしょにカレーをつくり

陽毬ちゃんは苹果ちゃんに

いつでもいらっしゃいといいます。


陽毬ちゃんが苹果ちゃんに

いつでも家にいらっしゃいというのは

冠ちゃんと晶ちゃんから見ると

プリクリ様が苹果ちゃんからピングドラムを手に入れるために

家においでと言ってるように見えそうなところですが

この兄弟はピングドラムよりもっと気にしていることが他にある様子です。


苹果ちゃんがカレーの作り方をお母さんから教わったと聞くと

陽毬ちゃんが「いいな~お母さんがおしえてくれたんだ」と言います。

このとき晶ちゃんはなんとか話題を変えようとします。

その前の場面では冠ちゃんが家族写真を伏せていますから

両親の顔をみられてはいけない何らかの事情があることがわかります。



また

陽毬ちゃんが苹果ちゃんにいつでもいらっしゃいということには

もう一つ大事な意味が込められている可能性があると思います。


はじめに荻野目家で苹果ちゃんがお母さんと話すシーンでは

お母さんは仕事で帰りが遅くなるので

夕食は苹果ちゃん一人で食べるように言われていました。


苹果ちゃんにとって今日この20日の日に

高倉家で食卓を囲んでカレーを食べたということは

苹果ちゃんが高倉家に仲間入りしたような意味合いがうかがえます。

カレーは家族で食べる食事の象徴と思われますから

リンゴがカレーに入ることと

苹果ちゃんが高倉家に迎えられることとがかけられているようです。


ここで、第1話のサッカー少年の言葉

 苹果は愛による死を自ら選択した者へのご褒美でもあるんだよ 」

という言葉を思い出してみると

高倉家に苹果が与えられた、という意味もあるのかもしれません。


両親の顔を世間に見られてはならない何らかの事情がある。

そんな高倉家に苹果が与えられたようです。



今日もきりのいいところとなりました。

だいたいちゃんと

3rd station「そして華麗に私を食べて・・・」  

について言いたいことは言えたと思います。


今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。

明日またお会いしましょう。

明日はいよいよ「輪るピングドラム」第24話

最終回ですね。

わたくし電気栗鼠もリアルタイムで拝見します。

では、ごきげんよう。