フェムトセカンドレーザーはi-LASIKや角膜移植、ICR(角膜内リング)には欠かせない器機になりましたが、これを白内障手術に使いましょうと言う、器械メーカーの攻勢が始まっています。
 フェムトセカンドレーザーで白内障手術の、角膜切開とCCC(前嚢切開)、後、水晶体の核分割をするものです。この器械の金額は約5000万円、保守費用が年間550万円、他にもろもろの費用が発生します。また、現時点で、超音波乳化吸引術の器械など、これまでの白内障セットは基本的に必要です。
 これって、本当にメリットがあるの?という感じです。白内障手術は保険点数がどんどん下げられて、週に数例の施設では赤字になります。ですから、この手術をするにはプレミアムIOLの先進医療が使えない多焦点IOLで、片眼60万~70万円にして、90例以上やらないと10年で元はとれないそうです。
 当院は多焦点IOLの数は月13眼ぐらいありますので、1年で150眼ありますが、ほとんどは先進医療です。ですから自費診療だけでこれだけの手術はできません。
 ではFSレーザーを使用したら視力がこれまでより良くなるか?それはありません。手術時間は短くなるか?現在、通常の白内障手術は6~8分で終了できますが、FSレーザーを使用した場合は、十分に慣れた状態で16分、つまり、現行の倍の時間がかかります。
 じゃあ、いったいどういうメリットがあるのかというと、メスを使わないレーザーだけでできる手術ということになります。もし、今後、量産体性が整い、10分の1の金額になれば、手術の下手な医師にとっては朗報ですし、患者さんにとっては最先端の医療を受けていると言う満足感があります。
 現在、日本でこの器械を購入した施設は5施設、多分、税金に取られるぐらいなら、機械を買いましょうと言う施設でしょう。基本的には採算は全くとれません。将来的に、調節性の眼内レンズができた時に、大きい完璧なCCCができないと困るという人には有用でしょう。
 また、現在のイントラレース(屈折矯正用)は、ソフトを変えればCCCだけはできるようですので、屈折矯正をやっている施設で、可能ですが、水晶体自体は、全く別のFSレーザーが必要ですので、お話になりません。さて、今後が見ものです。