毎日幽遊白書見ながら、悶えてます(変態か)珍しく私が主人公以外を好きになった作品。蔵馬が好きだった。私は熱血より頭脳派タイプが好きです。でも頭が悪くても、結婚するのは桑原が一番だろうな…。当時はそんな事、全く考えてなかったけどね。

蘭厳しめSSです。蘭ファンはバックプリーズ。

 

 

“どうして?”

昨日、新一は来なかった。今日もまだ来ていない。

もうすぐ昼になろうとしているのに、どうしてだろう。確かに今日は平日だけれど、新一が自分より学校なんか優先する筈がないのに。

“全くもう、新一ったら…あんまり遅くなると幾ら私でも怒っちゃうんだからね”

蘭は他の誰かが聞けば、絶句するしかないだろう事を真剣に考えていた。だが蘭にとって、新一が自分を助けるのは当たり前の事で、それがなされない事はあり得ない事なのだ。

だが、蘭は根本的な事が解っていない。

たとえ新一がやってきたとしても、彼に蘭を助ける力はない。

蘭は新一に対する暴行未遂、殺人未遂、脅迫の現行犯で逮捕されたのだ。不当な拘束ではなく、法により逮捕された人間を釈放させる事は、幾ら桁外れの優秀さを誇るとはいえ、「探偵」である新一には出来ない。いや、誰にも出来ない。

取引などを重ねれば仮釈放位はされるかもしれないが、それが可能なのは探偵ではなく、弁護士だ。

なのに、蘭は昨日から呼ぶのは新一だけで、一度も「母親の英理」を呼ぼうとは…いや、思い出す事さえなかった。

これに関しては蘭ばかりを責める訳にはいかないだろう。

ずっと離れて暮らし、母親らしい事などろくにしてこなかった相手なのだ。頼りになると思えなくても仕方がない。

と、そこで扉が開いた。

「しんい…」

空恐ろしい程の明るい声を出した蘭だったが、現れたのは当然新一ではなかった。

「全く君は、それしか言葉を知らないのかね」

それは昨日、ずっと冷たい目と声で、それ以上に冷たい態度で蘭を「取り調べ」した風見だった。

「な、何よ。新一…新一は何処なのよ!」

「何故、工藤君が来ると思えるのか。一昨日、絶縁されたばかりだろうに」

呆れと侮蔑を滲ませる声に、蘭はヒッと息を呑んだ。

それは蘭が必死に忘れ去ろうとして、記憶の奥底に沈めた事実。新一が自分を見限るなど、あってはならない。あるとしたら、それはただの悪夢で現実ではない、と。

その蘭の「努力」をあっさり無視し、事実を突き付ける風見に対して、蘭は金切り声で喚きたてた。

「そんな、そんなの嘘よ!新一が私を見捨てるなんてありえないわ!だって新一は私がいないとダメなんだから!私がいないと、新一は」

「逆だろう。工藤君がいないと、君は正気さえ保っていられない程、彼に依存しているというのに」

対して風見は、淡々と言葉を紡ぐ。

“成程。確かにこれでは理論派の工藤君とは、相性が悪い訳だ”

新一は情が深い人間だが、事に当たる時は必ず理論を優先させる。それは彼が骨の髄まで探偵だからだ。

まして彼自身が、蘭に対して最早かける情など持っていないのだ。その上彼には今、最も優先させるものがある。

それを投げ捨ててまで蘭をとる事はない。高校生でありながら、「黒の組織」事件の総指揮官として、今も動いているのだから。

“降谷さんの気持ちも解りますよ”

多くの命と責任を負っている彼に、これ以上の重みを―――しかも非常識極まりない甘ったれたストーカーになど関わらせたくはないだろう。

「そんな訳ないでしょう。何も知らないくせに!!」

「…好きに吠えていればいい。工藤君が来ない事実に変わりはない」

「あ、貴方達が私の事、知らせないからでしょ!新一が私の事を放っとくなんて、ある訳ないのよ!」

「二度と関わるな、顔も見たくないと言われたのにか?」

「違う!新一はそんな事言わない。私の新一は」

「君の新一など、この世の何処にもいない」

風見はあくまで淡々と事実のみを突き付ける。蘭の感情任せに吐き散らす妄言など、風見にとっては何の意味もない。

「そうやって、夢の中に逃げ込んでいても現実は何も変わらない。寧ろ、工藤君はそういう逃げを一番嫌う」

そして最後のとどめともいえる言葉を叩きつける。

「探偵・工藤新一」は「犯罪者」の責任逃れを許さない。

 

 

敬語でない風見さんの話し方ってこれで良かったかしら~?