民主党新政権は、省庁縦割りを乗りこえて予算削減を目指している。
私は同じスタンスでさらに従来の規制の枠組みを乗りこえれば、多様な雇用の創出もできると思う。
このアイデアは、タクシーを管轄する国土交通省と厚生労働省でできる雇用創出策だ。
現状でもタクシーは、ある都道府県でのって遠隔の都道府県まで行くことができる。
しかし、遠隔の都道府県間を専門とするタクシーがある訳ではない。
一方、私は高齢の両親を世話するようになって分かったのだが、高齢者を介護しながら長距離移動するというのは至難の業で、その支援ニーズは確実に高まっている。
ちなみに私の父親はすでに排便の後処理を自分でできず世話を必要とする。
家の中では母親も世話できるが、これが戸外となれば男性トイレに入れる息子の私しかできない。住んでいる伊東から東京くらいまでの所要時間3時間以内の距離であればこなせるが、東京でのぞみか熱海でこだまに乗り換えていく大阪や、飛行機にのっての移動となれば歩行の補助も含めて大変な騒ぎとなる。
だから駅や空港で歩行補助を必要とするような高齢者をめったに見かけないのか、と私は自分が経験してみて初めて思い当たった。
そこで父親を連れた長距離移動はマイカー利用をしている。
しかし、クルマの運転と高速サービスエリアほかでの父のトイレの世話を伴う長時間移動は、50過ぎた私にはかなり心身の疲れる作業であり交通安全を危ぶまざるをえない。
さらに、たまたま私のうちは、要介護が父親で世話するのが息子だから、男性トイレに二人で入れる。母親と娘の場合も女性トイレに二人で入れる。だが、父親に娘、母親に息子の場合はどうするのだろう。実際に、伊豆方面から東京に向かう列車でそうした父親と娘さんを見かけたことがあるが、頻繁に客席とトイレを行き来してとても大変そうだった。
このようなことを考えた時、男性女性の介護士なりヘルパーを指名できる「遠距離専門介護タクシー」というアイデアが浮かんだ。
要介護の長距離移動のニーズはなにも高齢者ばかりではない。
また、自宅と遠隔の病院の間、遠隔の病院間の病人一般の輸送のニーズもある。病人輸送の場合、遠距離ゆえに看護士の同乗が必要とされるケースもあるだろう。
このようにニーズが素人の生活感でもあると分かるのに、なぜ「遠距離専門介護タクシー」は整備されないできたのだろうか?
まず国土交通省と厚生労働省の縦割り行政があった。
自民党政権下の官僚主導で前者認可の「介護タクシー」(民間患者等輸送車)が誕生したのも最近のことである(2000年5月に福岡県で国内で初めての福祉介護タクシーが誕生)。
しかし、この現在の「介護タクシー」も一般タクシー同様、地域内輸送を基本に整備されているのは周知の通りだ。
つまり、都道府県の縦割りが前提なのである。
この都道府県の縦割りを乗りこえた「飛行機と飛行場」のようなインフラ整備と法制化が必要なのである。
じつは、ここまでは昨年までに私が考えたことだった。
これに対して、民主党新政権になりかつ失業の増大する現下の状況を踏まえて、
◯ タクシーは失業者の吸収策でもある。
◯ 高速道路料金の値下げないし無料化の動向から一般的な家族によるクルマ移動ニーズが拡大している。
◯ 長距離移動についても「運転を必要とせず乗り捨てできるタクシー」の効用は料金次第で歓迎される。
以上の観点から以下のようなアイデアが湧いてきた。
◯ 「遠距離専門タクシー」ニーズは一般的にあり、国は「介護タクシーの充実化」という大義名分があればインフラ整備ができ、全国レベルのネットワーキングによって料金は最低限に抑えられる。
たとえば、「遠距離専門タクシー」が全国ネットワークを巡回していて、配車センターから適宜な配車をしたり、「発着停泊道の駅」を設けて対応すれば、現在の「通常料金で片道」いったり「貸切り料金で往復」する利用方法より料金はかなり安価になる。
◯ 「発着停泊道の駅」に「遠距離専門タクシー」のドライバーの簡易宿泊施設を設ければ、現在、単身生活をしていたり単身赴任可能な運転免許所有の失業者を二種免許をとってもらって雇用できる。
ホームヘルパー2級、ガイドヘルパー資格、応急手当普及員などの資格をとってもらい業務を高付加価値化させるとともに、介護関連への転職も促進する。
◯ 「発着停泊道の駅」は「遠距離専門タクシー」のドライバーとクルマの安全管理も行い、ドライバーは飲酒や健康そしてクルマ整備のチェックを必ず受けるものとする。
◯ 「遠距離専門タクシー」はファミリーワゴンを一般型とし、これに現行「介護タクシー」と同型同サイズのものを加える。
ファミリーワゴンは、ドライバーが睡眠可能にカスタマイズしたヴァージョンを開発し、「発着停泊道の駅」で簡易宿泊施設を利用しないで済ませることができるものも用意する。
これは、可能な限り全国を旅する言わば「渡り鳥生活」を楽しみながらも老後資金を貯蓄する新しいドライバー人生を想定するものである。
◯ 現在は何事も「定住生活者を前提とする行政と法制」が行われているが、多様なる雇用の増大と多様なる老後の安定を図るためには、「移動生活者ないし転住生活者を前提とする行政と法制」も行われていくべきである。
住民票がないことを理由に、インターネットカフェに転住する生活者を「インターネットカフェ難民」と称して、不法なる定住をする「従来型ホームレス」と同一視するのが、現行の行政と法制の限界である。
日本人は江戸幕府成立以来の「定住志向」を経てきてそれが当たり前だと思っているが、たとえばモンゴルは住所不定の遊牧民も立派な伝統的国民と看做してきている。
モバイルなツールが多様に高度化する現代、生活感や人生観も多様に個性化することを促す方が、国と国民双方のリスクが分散し発展可能性が拡大する。