ハムバッキングPUを搭載したテレキャスター、ということで、前回・前々回とジェフ・ベックのテレ・ギブをチェックしましたが、今回はフロント・ハムバッカーの載せ方について検証してみましょう。
(1)テレ・ギブ式
上写真は、1980年代のフェンダー・ジャパンのジェフ・ベック・モデル。
本物のテレ・ギブの解剖図は明らかではないが、おそらくこうなってるだろうという姿、ピックガートに本体のザグリに合わせた穴を開け、さらに上からエスカッションを被せて固定するようになっている。
こんなメンドクサイ細工をしなくてもピックガードかエスカッションか、どちらか一方だけで仕上げればいいじゃん!、と思われるが、テレキャスターのボディトップにはフロントPUのリード線をコントロール・バネルの方へ送るための溝がある。これを隠すためにはピックガードは必要である。さらに、ヴィンテージ風に薄いピックガードを使用する場合は、それ単独でPUを固定するにはやや貧弱なので、ということなんだろう。
さらには、テレキャスターらしさを残しつつギブソンっぽい風貌をつくるという意味でも、こういった細工が必要だったと考えられる。
(2)キース・リチャーズ式
ミカウバー(Micawber)と呼ばれるキース・リチャーズのテレキャスター。「Exile On Main ST.」頃から使用されているとのこと、とすると時は1971～72年で、テレ・ギブより若干早いということになる。
テレ・ギブとほぼ同じ仕上がりだが、こちらはエスカッションが載る部分について、ピックガードを四角く切り抜いてあり、特に小細工の必要なネック周りは切り飛ばしてある。乱暴な仕上げが何となく弾き手にマッチしてる感じも。
(3)マイク・スターンまたはアンディ・サマーズ式
Mike Stern
Andy Summers
ピックガードでPUを吊り下げる方式。上記2例よりも、こちらの方が細工は簡単そうである。でも、本体のザグリにピッタリ位置を合わせてピックガードの穴開けを行わなくてはならない。マイク・スターンもアンディ・サマーズも、ピックガードは3層のモノを使用しているが、PU取り付け位置に若干差がある。マイク・スターンの方が少しネック側に寄っている。元のシングルコイルPUの穴の上側の壁面を利用すると、この位置にはならないことから、元の穴を上下に拡大していると推測される。
マイク・スターンはヤマハのパシフィカに乗り換えて久しく、テレキャスター使用時を確認できる写真は少ない。なぜかカッタウェイ部の角にもストラップ・ピンが。
以上のような検討を経て、たどり着いた結果は以下のとおり。
フロントPU用のザグリを広げて、エスカッションで留めて終わり。当初は丸見えの溝を隠すために、テレ・ギブ式にしようと考えてましたが、22フレット指板エンドの張り出し部の隙間が狭くてピックガードが入らず、断念しました。
今回取り付けたフロントPUはダンカンの'59モデル(SH-1)。ダンカンの資料によれば直流抵抗値7.42kΩとなっていますが、これは中古のせいか7.02kΩ。フラットで歪ませてもつぶれにくく、音に伸びがあります。リアのシングルコイルPUと組み合わせると音のバリエーションは広く、なかなか使い勝手の良いギターになりました。
PUセレクターのツマミも、無骨ですが、この帽子型の方が掴みやすくていいですね。
このギター、以前はフェンダー・ジャパンのネックをつけていましたが、音がイマイチだったので、イバニーズ・アラン・ホールズワース・モデルから移植したところ、随分鳴りが変わりました。弦の鳴りが鮮明になりました。
ギター本体の中で、鳴りに一番大きな影響があるのは、やはりネックではないかと思います。ジェフ・ベックがボディを交換しながらも以前から使用しているネックを引き継いでいるのが、何となく分かるような気がします。
ギター本体の中で、鳴りに一番大きな影響があるのは、やはりネックではないかと思います。ジェフ・ベックがボディを交換しながらも以前から使用しているネックを引き継いでいるのが、何となく分かるような気がします。
改造なしに、手っ取り早くハムバッカー・テリーを入手したい、という場合、フェンダー・ブラックトップ・テレキャスターという選択があります。22フレット仕様で、ノブ類とPUセレクターの位置を逆転させてあります。
メキシコ製ながら約50,000円は安い?
