テレキャスター22/クラレンス・ホワイト(その1・オリジナルモデル外観) | おんがく・えとせとら

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「テレャスターはカントリーの定番」とは言われるものの、日本では実際にカントリー用に使っている人はあまりいないでしょう。カントリーミュージックを演ってる人自体が少ないからね。

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 写真は、ブルースギターの至宝SRVストラトと並ぶ、カントリーギターの聖杯ともいうべきクラレンス・ホワイト(Clarence White 1944-73)のテレキャスター。
 このギターは現在、カントリー・シンガー/ギタリストのマーティー・スチュアートが所有しています。彼はこれを惜しげもなくステージで使用し、ファンに持たせて一緒に記念写真に収まったりというサービスぶり。

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 さて、ケンタッキー・カーネルズ~ナッシュビル・ウエスト~バーズ~ミュールスキナーで活躍したクラレンス・ホワイトは、ブルーグラスにおいてアコGをリード楽器に発展させたパイオニア。
 ジョージ・シャフラー(George Shuffler/スタンリーブラザーズ)、ドク・ワトソン(Doc Watson)などのブルーグラス・ギタリストだけでなく、ジミー・ブライアント(Jimmy Bryant)やジョー・メイフィス(Joe Maphis)、ジェームス・バートン(James Burton)などの、カントリー系エレクトリックギタリストの影響も受けているとのことで、ソロの合間に時折入る速弾きフレーズなどにそれらしい気配があります。

$おんがく・えとせとら-cwhite2 クラレンス・ホワイト

 彼のテレキャスターにはご存知、ナッシュビル・ウエスト~バーズ時代の盟友ジーン・パーソンズと作り上げたストリング・ベンダーのプロトタイプが搭載されています。最終的な市販品はボディ裏の一部を刳り貫いて仕込みますが、彼のはテレキャスの背面にスプリングやらクランクを取り付け、演奏の邪魔にならないよう枠板で囲い、その上にさらに薄板で蓋をしてあります。そのせいでボディが厚くなってます。

このギターの肝であるベンダーについての話は次回に譲り、今回はその外観についてのあれこれを。

 本機は「1954年製テレキャスター」ということですが、エスクワイアの改造品という説もあり、そこは定かではありません。ヘッドには"TELECASTER"とありFenderロゴの位置などからすると54年としてもよいものの、同時期にはサンバースト・フィニッシュはなく、ボディまわりは恐らく別の個体から移植されたものかもしれません。

◆ブリッジ
 ブリッジ駒は3-4弦、5-6弦用が55年以降に見られる鉄製であり、1-2弦用には68年以降の弦を乗せる溝がついた駒が使われています。
 ブラス駒は柔らかく、ベンダーの動作により削れてくるのを防ぐため鉄製を使っている、という話です。で、溝ありの駒の方がより動作の安定性が高いという評価でしょうか。
 また、ブリッジプレートには55-57年製の特徴である、斜めに刻まれた「fender PAT.PEND.」の文字があります。

◆ステッカー類
 ボディ表面には3種類のステッカー類が貼られています。

 まず、コントロールパネルの横にあるクライスラー社のプリマス・サテライト(Plymouth Satellite)のエンブレム。ステージ最後期71年頃の写真でも見られないので、バーズ脱退後あたりに付けられたものかもしれません。
 サテライトは本人の自家用車だったのか?あるいは高級車だったので箔付け用に貼ってたのか?

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 肘の当たる部分の大きなワッペン「FRANKFURT a.M」は独フランクフルト市の紋章。a.Mは「午前中」の意味ではなく「am Main」の略。実はドイツにはポーランド寄りにもう一つ「フランクフルト」(フランクフルト・アン・デア・オーダー/オーデル川沿いのフランクフルト Frankfurt an der Oder)があり、それと区別するため正しくは「アム・マイン(マイン川沿の)」が付くそうです。
 しかしなぜフランクフルト?ビール好きだったか、ソーセージ好きだったのか?

 最後は左肩のステッカー、サングラスをかけたカウボーイハットのおじさん、よく見ると下側にNudieの文字があるんですが、これはヌーディー・コーン(Nudie Cohn)という人らしい。
 ポーター・ワゴナーやバック・オウエンスをはじめとするカントリー・シンガーの、あの派手派手しい衣装を手がけたデザイナーだそうだ。バーズ「Sweetheart of The Rodeo/ロデオの恋人」時代のクラム・パーソンズ、それからホワイトにも創っているとのこと。
 実はこのステッカーは2枚重ねになっていて、元々は黒い帽子だったのが擦り切れたのか、マーティー・スチュアートがその上から白い帽子のヌーディー・ステッカーを貼ったそうです。

$おんがく・えとせとら-Gram&Nudie グラム・パーソンズとヌーディー

アメリカでは、上記2つのステッカーのコピーが販売されている模様。2枚で約12ドル(1100円余)。

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 んでもって、このステッカーを買ったのかどうかは分からないが、コピーモデルをより本物に近づけるべく、いろいろ手を入れてるマニアがアメリカには結構いるようです。
 1番なんて、わざわざボディ裏にもう一枚継ぎ足して。お厚いのがお好き?

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$おんがく・えとせとら-benders 圧巻!コピーモデル達