ヤードバーズのジェフ・ベック | おんがく・えとせとら

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 先に発売されたJベックDVD「Ronnie Scot's Club」は、初の公式単独ライブ映像ということではありましたが、1986年の軽井沢ライブ以降,1999年,2006年の来日公演についてもTV放映があり,クロスロード・フェスでの現行メンバーによるライブも映像化されてるので,今更的な感じもなくはありません。
 それ以前,「THERE AND BACK」から「第1期ジェフ・ベック・グループ」の間はブートレベルの断片以外に,ほとんど映像がない。Rスチュワート在籍時の第1期ジェフ・ベック・グループに至ってはウッドストック・フェスにエントリーしながら,ベックの一存でドタキャン。貴重な映像記録化のチャンスを逃しています。

 さらに遡ると,ヤードバーズ時代の映像,これはほとんどがモノクロですが結構あります。人気グループでTV出演も多かったためでしょう。アテレコ以外のライブ映像も多く,シーモア・ダンカンに譲った例のエスクワイアはじめ当時の使用機が確認できます。

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The Story Of The Yardbirds(左)とYardbirds



○テレキャスター#1

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 ベックは65年のヤードバーズ加入当初,直前所属のトライデンツ時代から引き続き,ローズ指板の59年製テレキャスターを使用していた。ローズ指板時期にはピックガードは白が標準なのだが,上から黒く塗って使っており,ピッキングのため一部が剥げて白い下地が見えている。
 当時は,他にスペアを所有しておらず、これを前の演奏会場に忘れてきた時などは,クラプトンが残して行った赤いテレキャスターを代用してたらしい。
 このギターは後にJペイジに譲られ、ペイジは反射板を貼ったり、サイケペイントしたり、最後はリペアに出した折りに電気系統をいじられ,頼みもしないのにペイントを塗り直されて,そのままお蔵入りになったという…。

 
◯テレキャスター#2

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 ヤードバーズ時代にクラプトンが使用していたローズ指板の赤いテレキャス。ベックが借りて使ってたのはこれか?
 一方,Jベック・グループ時代の写真に赤いテレキャス(白黒なのでよく分からんけど)を抱えたショットがあるが,これは同じものか? もしそうだとしたら,脱退のついでに失敬していったんだろうか?


エスクワイア

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 65年に、ウォーカーブラザーズのジョン・ウォーカー(本名John Maus)から60ドルで譲ってもらったという54年製エスクワイア。同機を弾く彼の姿を見て,ひどく憧れていたらしい。

おんがく・えとせとら-pre_walker 初期のウォーカー・ブラザーズ(左がジョン,右がスコット)

 表と裏のコンター加工はジョン・ウォーカーの手によるものだが,ピックガードはベック自身が黒いものにチェンジ。当初は白だったのが「Heartful Of Soul」などのプロモ映像で確認できる。テレキャス、エスクワイアともに54年中頃から白ガードが標準になっているので、その頃のものだろう。

「ブロンドネックに黒いピックガード,これが当時の英国では垂涎の的だった。ギターフリークは皆,黒ガードに交換してたけど,ブロンドネックではなかった。というわけで俺は鼻高々だったね」。テレキャスター、エスクワイアは59年からローズ指板が標準になっていたのである。メイプル指板(貼りメイプル)がオプションで復活するのは66年のこと。イギリスにはすぐに入って来なかったのではないかと考えられる。

おんがく・えとせとら-vincent Gene Vincent & Blue Caps
 1956年の巨乳女優ジェーン・マンスフィールド主演の映画「女はそれを我慢できない(The Girl Can't Help It)」に出演したジーン・ヴィンセント&ブルー・キャップス。左のエスクワイアを抱えたギタリストはベックのアイドル,クリフ・ギャラップ(Cliff Gallup) …ではなくラッセル・ウィリフォード(Russell Williford)。すでにメンバーチェンジしていた。でも,このエスクワイアのスタイルは当時のギター少年に大きな影響を与えたのではないだろうか。

 Jペイジとのツインギター期の映像「Happennings 10years Time Ago」ではこのギターでサイドを務めているペイジの姿が見られる。結構,親しいミュージシャン間ではギターの貸し借りや譲渡が日常的だったようである。

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 74年「BLOW BY BLOW」録音時期に通称「テレギブ」,ハムバッカー×2個を搭載したテレキャスターを進呈された見返りとして、このエスクワイアはSダンカンに譲られた。ベックは随分後になって「とんでもないことをしちまった!」と後悔したらしい。

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 一昨年フェンダー・カスタムショップからレプリカが発売され、現在も継続発売中だが,プロの使用例を見かけないので,やはりマニア向けなんだろうね。


○レス・ポール

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 ベックが66年に入手した最初の59年製レス・ポール。イレギュラーな黒ワンプライのピックガードを装着,PUセレクターのリングが途中からなくなる。また,その後PUカバーを外し,ボビンが2つとも白い「ダブルホワイト」を露出させている。第1期ジェフ・ベック・グループ期でも活躍し,68年頃にはトップの塗装を落としている。
 ネックを折った後,指板はそのままに,フルアコ・L-5スタイルのヘッドを持ったネックに交換されている。


○ギルド12弦(F-312?)

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 ベックのアコG使用は珍しい。TVショー「For Your Love」での演奏などで使用例が見られる。PUを後付け。別にクリス・ドレジャが使用している映像もあり、本来は彼の所有物なのかもしれない。
 細身ボディのギルド12弦は,マホガニーボディのF-212とローズボディのF-312があるが,下写真の色合いからするとF-312ではないかと思われる。64年から74年まで製造された。

○正体不明のセミアコ(伝・日本製?)

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 1966年撮影のミケランジェロ・アントニオー二監督映画「欲望(Blow Up)」の中でに踏んづけてぶっ壊される、全くの演出用小道具。この1PUセミアコ風ギターに該当するサンプルはなかなかみつからない。映画ではOKが出るまで何テイクか撮られたそうで,他にも数台壊したものと思われる。
 ベックは音切れしてノイズを発生するギターに立腹してアンプに叩き付けるのだが、繋いであるのとは別のアンプ(真後ろのVOXエンブレム無しのAC-30)に八つ当たり。この後床に放り投げて踏みつけ壊すのだが,踏んづけ様がなんだかぎごちなく、横でペイジが「何やっとんねん」と笑っている。
 演奏再開時に傍らのレス・ポールに手を伸ばすシーンがちらっと見える。

(参考文献;「Crazy Fingers」Annette Carson,「天才ギタリスト・ジェフ・ベック」シンコー・ミュージック,「レコードコレクターズ09/3-4月号」)