近年あまり出題のなかった浸透圧が出題されたこと,
「ベタな」細胞周期の計算が出題されたことが特徴でした。

特に細胞周期の計算は「典型的な」計算問題で,
センター試験ならもう少しひねった問題構成をしてくることが多かったことを考えると
個人的には少し意外でした。

では第1問の解説を

問1
真核生物と原核生物の違いを答える問題。
大腸菌←原核生物
ゾウリムシ←真核生物
を知ってるだけで,①が正解とわかったでしょう。

②…真核細胞でもべん毛をもつものはある。ミドリムシや精子を考えればわかる。
③…原核細胞にはゴルジ体は無い。
④…原核細胞に中心体は無い。
⑤…原核細胞には核小体は無い。

問2
これもベタな二重膜構造を答えるもの。
解説も不要だと思いますが,
ゴルジ体が二重膜だというひっかけは,
過去にも出題されていたはずです。
過去問をやることはやはり効果的ですね。

問3
これは「浸透圧」「膨圧」に対して正しい知識が無いと
間違える人が多かったでしょう。
しかも,蒸留水に入れた時の「変化」
を問うところが良問でした。

蒸留水に入れると,細胞体積が「増加」する。
ここまではみんなわかったでしょう。

膨圧は細胞が細胞壁を押す力であり,
細胞壁が細胞を抑える力でもあるわけです。
(これを壁圧と分ける人もいます)

細胞壁が細胞を抑える分だけ
細胞から水が出ていくことになるわけです。

従って,膨圧は細胞から水を出す方向にはたらきます。

逆に細胞の浸透圧は,細胞の中に水を
引き込む方向にはたらきます。

植物細胞を蒸留水に入れると,
水が流入するので,細胞内液は薄くなる→細胞の浸透圧は低下していく。
逆に膨圧は細胞体積の増加と共に大きくなっていく。

そして,
最終的には細胞の浸透圧と膨圧で釣り合うことになります。

問4
能動輸送に関する問題。
硬骨魚類がえらの細胞で塩分の輸送を能動的に行うことは
教科書にも載っている基礎知識なので,解答できたでしょう。
①…細胞内に取り込まれるのはカリウム
②…細胞内の方がカリウム濃度は高い
③…淡水魚ではえらや腸での塩分の取り込みは能動輸送
⑤…能動輸送では一般的に濃度勾配に逆らって(高濃度の方へさらに輸送する)行われる

問5
体細胞分裂中期の染色体に関する問題。
根端分裂組織なので「体細胞分裂」だとわかれば,正解までいけたはず。
ただ,正解選択肢の表現が微妙だったので,迷った受験生が多いと思われる。
①…二価染色体は減数分裂時のみ
②…対合が起きるのは減数分裂時のみ
③…「多数の」X染色体はあり得ない
④…乗換えが起きるのは減数分裂時のみ
⑤…正解だが,「相同染色体が並んだもの」という表現は少し誤解を招いただろう。
相同染色体は必ずしも中期に近くにあるとは限らない。「並んだ」という表現を
近くにあるというニュアンスでとらえると迷いが生じただろう。
ダミー選択肢が明らかなので選べるが,文章をもう少し伝わりやすい文章にすべきだっただろう。

問6
これはセンター試験らしい良問。
観察した細胞数から時間を計算させる「前提」を答えされる問題。
「ただ」計算だけを練習した受験生はここで落としただろう。
全ての細胞が細胞周期を「ランダムに」進んでいることが
細胞周期の計算の前提である。

問7
細胞周期の時間が60分×15=900分
観察した細胞数の比と各期に要する時間の比が一致する。
すると,
観察した全細胞数(3000):後期の細胞数(60)
=細胞周期(900分):後期の時間
が成立する。
あとは計算して求まる。

やはり,例年に比べて第1問は質・量ともに重かった印象を受ける。