今回のテーマは「嫌気呼吸」です。


嫌気呼吸とは,

酸素を使わずに,有機物を分解してATPを得ることです。


入試で特に出題される嫌気呼吸は以下の3つです。

「アルコール発酵」

「乳酸発酵」

「解糖」

です。


これらを別々に覚えることはありません。

基本的な流れは一緒です。


「アルコール発酵」は酵母菌が酸素が無い〈少ない〉時に

行います。

(酵母菌は好気呼吸もできますよ~)


この過程は,まず

グルコースを酵素反応でピルビン酸に分解します。

(この過程は解糖系と全く同じです。)


そして,そのピルビン酸をエタノールに変化させます。


グルコース→ピルビン酸→エタノール


これがアルコール発酵です。


乳酸菌が行う「乳酸発酵」もほとんど同じです。

グルコースからピルビン酸を作る過程は同じで,

違うのはピルビン酸を乳酸に変えるということだけです。


グルコース→ピルビン酸→乳酸


また,我々の体の筋肉中で起きる嫌気呼吸を「解糖」と言います。

まぁ,全力で100メートル走を走っている時(無酸素運動)に

筋肉中で起きていることです。


あの時,僕らは酸素を吸ってなのに,走り続けられますね。

(当然限界はありますが。。。)


ということは,酸素を使わずにATPを合成できている

ということです。

なので,僕らも嫌気呼吸できるわけです。


この解糖という過程は「乳酸発酵と全く同じ」です。

このことは,入試でよく出題されるので覚えておきましょう。

なので,無酸素運動をすると我々の筋肉中には

乳酸が蓄積します。

この乳酸が疲労の原因物質だったりするわけです。。。


これで嫌気呼吸の3種類が大まかには解かりましたか?



さぁ,ココからが本題です。


嫌気呼吸の目的とは当然「ATPを得ること」です。

では,ピルビン酸をエタノールにしたり,

ピルビン酸を乳酸にしたりする過程でATPは作られるのでしょうか?






正解は,



作られません。


なので,アルコール発酵や乳酸発酵で得られるATPは

実はグルコースからピルビン酸の過程で得られるATPだけなのです。

(グルコース1分子あたり2分子のATPね!!)


そうすると,大きな疑問が生じませんか?

なぜ,ピルビン酸で止めないのでしょうか?


ピルビン酸をエタノールや乳酸にしてもATPが生成されないなら,

ピルビン酸で止めてもいいはずです。


なぜでしょう?



これが分かれば,あなたも嫌気呼吸マスターです。






嫌気呼吸でピルビン酸をエタノールや乳酸に

しなければならない理由を説明します。


実はこの問題もポイントは「補酵素」なのです。


グルコースをピルビン酸にする過程(解糖系)では,

水素が奪われます。

思い出して下さい。


ということは,補酵素Xがその水素を受け取って,

X→X・2〔H〕

という反応が起きます。


もし,ピルビン酸で止めた場合

X→X・2〔H〕

という反応ばかりが進行します。


すると,水素を持たない(酸化型の)Xが無くなった時点で,

グルコース→ピルビン酸の反応が進まなくなり

ATP合成もできなくなります


そう考えると,ピルビン酸→エタノールやピルビン酸→乳酸

という過程が何のためにあるか想像できませんか?



そうです。

この過程で水素を持ったX・2〔H〕が水素を離して,

水素を持たない酸化型のXに戻るための過程なのです!!



まとめると,

グルコースからピルビン酸の過程で

X→X・2〔H〕

の反応が起きて,


ピルビン酸からエタノールや乳酸になる過程で

X・2〔H〕→X

の反応が起きているのです。


だからこそ,「持続的なATP合成が可能」なわけです。

解かりましたか?