悪魔のように細心に

監督、脚本:原田眞人

原作:井上靖

わが母の記 (講談社文庫)/井上 靖

¥500

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撮影:芦澤明子

出演:役所広司、樹木希林、宮崎あおい、南果歩、キムラ緑子、ミムラ、赤間麻里子、菊池亜希子、三浦貴大、真野恵里菜、三國連太郎

英題:Chronicle of My Mother

2011年/日本/118分

公式サイト

評価:★★★★★★☆☆☆☆


井上靖の自伝的小説の映画化。予告編を見た感じだと、典型的な母もの感動作かなと思っていたんだけど、思ったほどの感動もなく、やや期待外れでしたかね。モントリオール映画祭で賞は獲っているけど、まあ普通の良作という程度の作品でした。


この原作小説が発表されたのが1975年で、なぜ今頃映画化されなければいけなかったのか?たしかに子を思う母の気持ちには普遍性はあるんだろうけど、世間一般から見るとかなり特殊な家庭の親子関係が描かれていて、共感できる部分も少なかったし、かと言ってそれほど興味を惹かれるような話でもなかったし、まあ井上靖ファンとかなら興味を持って観るかも知れないけど、やはり今頃映画化されたって・・・という感じはしますよね。


僕は井上靖の小説というと、『氷壁』と『風林火山』ぐらいしか読んだことがなくて、映画化作品も全然観てませんね。もし幼少時代の自伝的小説なども読んでいれば、感情移入しやすかったのかも知れないんだけど、既に作家として大成功を収めた後の話では、母親に捨てられたと思い込んでいたことだってさほどの悲劇とは思えず、したがってそうじゃなくて良かったねえということになっても、それほどの感動も得られなかったんじゃないでしょうかね。もう少し、たとえば少年時代の辛かった思い出のエピソードを挟むとか、何らかの工夫が欲しかったように思いました。


それから、樹木希林のおばあさん役というと、どうしても若い頃の『寺内貫太郎一家』のイメージが強くて、コミカルに見えてしまいますよね。まあ、監督もそのコミカルさを狙っているのかも知れないんだけど、おかげで認知症の母親を介護する家族の大変さみたいなものもあまり伝わってこなかったし、やはり胸に響くものが足りなかったように思います。


役所広司もまあ普通だったし、個人的には、宮崎あおいの可愛らしさがあったので、なんとか最後まで飽きずに見られたかなという感じでした。宮崎あおいというのは、元々そんなに好きでもなかったんだけど、これまで観た彼女の映画の中では一番良かったように思えました。