10月6日、介護なんでも文化祭において、対談形式のセミナー「10代で家族のケアを担うということ―ヤングケアラーが語る介護と看取り―」を開催しました。多くの方に熱心にご参加をいただきました。関心の高さがうかがえ、活動を広げる力をいただけたと感じています。

セミナーは、渡辺道代理事が秋保秀樹さんのお話をていねいに聞き取っていくかたちで行いました。
$家族をケアする子ども・孫・きょうだいの集い場&語り場-yc_seminar
秋保さんは、お母さん、認知症のお祖母さんと3人で暮らしていました。お祖母さんの介護は、仕事をもつお母さんとの二人三脚。お話が進むにつれ、介護するなかで、秋保さんが心身ともに疲れきり、孤独を深めていく姿が浮かんできます。

渡辺さんによれば、疲労感が抜けなかったり、耳鳴りなどの身体の不調があっても、子どもや若い人はそれを認識する力がまだ未成熟であることも多いといいます。そのような不調は、介護によるストレスが原因であることが多いのですが、人生経験の少ない子ども・若者には、ストレスに対処することもとても難しいのです(大人でも、ストレスへの対処がうまくできない方は多いですね)。
また、秋保さんは介護中心の生活ですから、学校の友人と日常の話題を共有できないようになり、先生の理解も得られず、孤独感も増していきます。

心身ともに学校と介護を両立することが難しくなり、休学、そして結局は退学を選択することになったのです(高等学校卒業程度認定試験に合格)。その後は、介護の比重がさらに多くなり、アルバイトが一種の息抜きになっていたといいます。また、お母さんとの会話も介護のことばかりになっていました。
まさに介護一色の生活です。

2年前にお祖母さんを看取り、介護生活は終わりました。しかし、そのショックからなかなか抜けられないといいます。介護という密度の濃いな時間を過ごした相手との別れは、身近な人に死を経験していない若い人にとっては大きな衝撃となります。また、今生の別れというストレスへの対処も、考える以上に難しいのではないでしょうか。

対談のあとの会場との対話を行いました。会場には、秋保さんのように10代から介護されていた方や、20代・30代のケアラーが多数いらしていました。「自分も同じです」「周りに話せる人がいない」「介護者支援の情報がない」などの声や、情報を届ける方法案など、多くの若いケアラーさんからの発言をいただきました。
60分の対談、30分の会場対話という限られた時間でしたが、若い世代のケアラーが抱えるさまざまな問題・課題を垣間見ることができました。

年齢によっても、介護する相手との関係、疾病や障がい等によっても、家族ケアのかたちは大きく異なります。介護をするなかで、学業・仕事、恋愛・結婚・出産の機会が限られたり失ったりする方もあります。そのようなことがないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。介護者の多い層である中高年とは異なった、若いケアラーに視点をおいたサポートが必要になっています。どのような悩みや困難があり、どのようなサポートが必要なのか、これから皆さんと一緒に考えていけたらと願っております。

私どもでは、今後、おひとりお一人のお話を伺ったり、「語り場」のような集いを開催するなど、活動に広げていきたいと考えています。ぜひ、ご協力・ご参加をいただけきたいです。
[文責●日本ケアラー連盟・野手]