この際だから何度でも言うが、俺の人生を変えた一本は『死霊のはらわた』だ。
しつこい男は嫌われるなんてよく言うが、しつこい内容が『死霊のはらわた』な男って、どう?

まあ、どうもこうもねぇよという話だが、それはそれとして、『死霊のはらわた』には続編があるということは、皆さんもちろんご存知ですよね?

『死霊のはらわた2』

『死霊のはらわた』に人生を変えられた俺としては、2ももちろん見たことがあるはずなのだが、これが不思議なことに、全く内容の記憶がない!
ヴァンダム作品ならいざ知らず、これではいかんと思い立ち、15年ぶりくらいに借りてみたという寸法だ。

まずは冒頭、誰のものとも知れない山荘に勝手に浸入してイチャつこうとするバカップル
このバカップルがなんと、前作の主人公アッシュと、その彼女リンダだ!
どうやら、友人のスコットや、妹ちゃんなんかは、なかったことにされたらしい。

人んちのピアノを気分よく弾くアッシュと、Tシャツにパンツというエロい格好で踊るリンダ。
あれ?死ねばいいのに。
と、ここで、アッシュがテープレコーダーを発見、もちろん再生する。
どうやらこの山荘、「死者の書」を研究する学者夫婦の持ち物だったらしく、テープレコーダーの中には例の、復活の呪文が吹き込まれていた!
速攻でリンダが悪霊化し、アッシュに襲いかかる!
これに対しアッシュは、スコップで首チョンパで撃退!
なんかここまで、すげぇ雑な前作のダイジェスト見てるみたい。

安心したのも束の間、今度はアッシュが、ちょこっととりつかれる。
しかし、朝日パワーで何とか正気に戻るも、森から脱出することができず、再び夜になり、山荘へ逃げ帰るはめに。

ここから、アッシュのドタバタコントが始まる。

まずは、甦ったリンダの死体が、チープな特撮で滑稽なダンスを踊る。
リンダの生首に、右手を噛まれて、大騒ぎするアッシュ。
万力で引き剥がし、チェーンソーで真っ二つにするぞ!

一応ここで、リンダが正気に戻って命乞いするシーンもあるのだが、全く感情移入できてないので、正直どうでもいいぞ!

そして、お次は右手コントだ。
リンダに噛まれた右手だけがとりつかれ、暴走を始める。
アッシュの、盛大な一人芝居の見せ所だ!

ひとしきり大騒ぎした後、ついに自ら右手をチェーンソーで切り落とすアッシュ!
どうなったかって?
もちろん右手だけで動きますよ!

アダムスファミリー思い出すね!

しばらく右手と追いかけっこを楽しむアッシュ。
そのうち、部屋にある鹿の剥製やら、家具やらが大爆笑を始めて、つられてアッシュも大爆笑。

アッシュ楽しそう。

このまま、イカれた祭で一夜を過ごすのかと思った時、山荘の持ち主の娘とその仲間たちが登場して、ようやくストーリーが動き出す。
散弾銃を持って血まみれのアッシュを、よってたかってボコボコにして、とりあえず地下室に放り込む一行。
しかしそこには、悪霊化したママンが!

間一髪でアッシュは助け出され、ママンを地下室に閉じ込めることに成功。

さらに一人二人死んだ頃、今度はパパンの霊が現れて、一行にありがたいお告げをたまわる。
なんでも、復活の呪文とは別に、封印の呪文もあり、「死者の書」に記されているとのこと。
ここで再び、例の右手がいい仕事をして、パニくった若い姉ちゃんが一人、外に飛び出す。
前作と同様、森の蔦に絡め取られる姉ちゃん。
だが、なんということでしょう、特にエロくもならずに終了。
おい、ふざけるな。

テンションダダ下がりな俺とは対照的に、姉ちゃんを探しに森へ出たところ、再びとりつかれてしまったアッシュが大ハッスル。

娘ちゃんを手にかけようとしたその時、偶然落ちていたリンダとの思い出のネックレスで正気に戻るという、しゃらくさい展開。
だから感情移入できねぇって。

そして、アッシュと娘は、ママンの待ち構える地下室へ、「死者の書」を探しに行くわけだが、丸腰では勝てない!
そうだ!チェーンソーを右手にドッキングだ!
「グルービー」じゃねぇよ!
というわけで、ここでついに、あの有名な、右手がチェーンソーのダークヒーロー、アッシュが爆誕するわけだ!
…有名だよね?

この後、ママンとの激闘を制し、迫り来る親玉を食い止め、例の右手に刺されながらも、なんとか封印の呪文を唱えることに成功。
悪霊を封じ込めて一件落着と思いきや、アッシュも次元の裂け目に吸い込まれてしまう!
気が付くとそこは、なんか中世っぽい過去の世界だった!

つづく!

えーとね、これ俺の中でなかったことにしてたわ!
一作目を神聖視している、原理主義的なあの日の俺は、ハートと股間に何のサムシングも残さねぇ続編に唖然となり、記憶を消してしまったに相違ない!

スプラッタホラーは、一歩間違えば容易にギャグになるということは、散々思い知らされてきたが、本作では全てのスプラッタ描写が、見事に一線を越えてギャグになっている!
しかも、これ多分、確信犯だ!
擬音がもうギャグだもん。
おまけに、生首をチェーンソーで真っ二つにするシーンや、右手を切り落とすシーンなど、ここぞという時に直接描写をせず、とりあえず血しぶきでお茶をにごす、この半端さはどうだ!
とても、同じサム・ライミ作品とは思えない!
前作で、とんでもない情熱量のグロ描写を撮ったサム・ライミはどこへ行ったのか!

まあね、これはこれで、B級ホラー好きにファンが多いのもわかるけど、オジサンは感心しないな!
端からギャグに逃げるのではなく、もっと全力でぶつかって来いよ!

逃げるならせめて、エロシーン増やせよ!!

そんな、声にならない叫びが、よどんだ夜空に吸い込まれていくのだった。