肺がんで声しゃがれる | 病気の歩き方・癌編

肺がんで声しゃがれる

肺がんで声しゃがれる

 肺がんと診断されて治療を受けていますが、声がしゃがれてしまいました。がんで声帯の神経がつぶれたので治らないと医師に言われましたが、本当に治療法はないのでしょうか。(三重・61歳女性)

声帯のリハビリ有効

 人の声帯は呼吸時には開いていますが、声を発する時は、両側の声帯が動いてきて中央で閉じます。ところが、声帯にまひが起こると、まひした側の声帯が中央まで来ないので、いつまでもすき間が生じ、声がかすれてしまいます。

 声帯を動かしている神経は、脳から出ているのですが、いったん胸の奥まで行って、わざわざ反転してのどまで戻ってきます。そのため、反回神経と呼ばれます。

 戻ってくる時に心臓を経由して食道や気管の間を通り抜け、甲状腺の下をもぐってやっと声帯にたどり着きます。そのため食道がん、気管支・肺がん、甲状腺がんなどでその働きが失われてしまう場合があります。

 声がしゃがれたというご質問者の場合は、肺がんによる反回神経まひで片側の声帯が閉じなくなったものと思われます。神経の機能を元に戻すことはできませんが、リハビリが有効です。病気で侵された声帯の分まで、反対側の健康な声帯が働くように訓練するのです。これは、担当医の指導のもと、国家資格を持つ言語聴覚士によって行われます。

 それでも効果がなかったり、早期の回復を望まれる場合は、音声の回復手術が行われます。手術では、閉じなくなった声帯に自分の脂肪などを入れて膨らませ、すき間をなくしたり、外から声帯を押して中央に固定する方法がとられます。

 せき込んだり、むせることがあるのであれば、声の病気の治療(音声外科)を専門とする耳鼻咽喉科をなるべく早く受診されることをお勧めいたします。

 福田宏之・国際医療福祉大東京ボイスセンター所長(耳鼻咽喉(いんこう)科)(東京・赤坂)

2005年6月19日  読売新聞)