かねてからやってみたいなぁと思っていたゲーム「パレット(フリー版)」をクリアしたので、感想と考察をば。
「パレット」とはRPGツクール95で、1998年に作られたフリーゲームです。ストーリーの面白さ、ゲーム性の高さ、効果音の斬新さを評価されて、第四 回アスキーエンタテインメントソフトウェアコンテストでグランプリになりました。後に、PS1のゲームとして製品化もされました。
一連のあらすじは以下の通りです。
診療所を営みつつ、有名情報誌にコラムを連載するなど、かなり著名な精神科医「シアノス・B・シアン」。ある夜、遅くまで執筆に勤しむ彼の元に、謎の女性 がドア越しに奇妙な依頼を申し込んでくる。彼女の依頼で診ることになった少女は一年前、とある事件に巻き込まれ、視力とほとんどの記憶を失くしていた。少 女が覚えているのは自身が「B.D」であることと「赤い色」だけ。その二つを手掛かりに、失われた記憶を取り戻すべく、少女の精神世界をめぐる旅がはじま る。
プレイ感覚としては、パズルをやってる感じでした。失われた記憶というパズルのピースを探して、一枚の絵を完成させている感じ。記憶探しの過程でも、 ちょっとしたコツというか、そんなものが必要な場面があったりして、楽しかったです。名のあるコンテストでグランプリを受賞した作品だけあって、仕組みも かなり斬新で面白いので、飽きませんし。なにより、冗長な展開が無くてスッキリしているので、ストレスなくプレイできました。
ただ、「後半に進むにしたがってBGMがごっちゃ混ぜになったみたいな音になること」、「ウィンドウモードで遊ぶとある演出が 存在しないことになること」の二点が気になりました……。BGMに関しては、あらかじめ、そういう仕様になっているからなんでしょうか。それともOS的な 問題なんでしょうか。ごちゃごちゃ言っても仕方ないですが、ウィンドウモードだと演出が楽しめなかったのはちょっと残念でした。割といい演出だなぁと気に 入っていたので。
※ここから盛大にネタバレしています。ご注意ください。
一連の事件を時系列で整理してみますね。
マシルト・クリムが強盗殺人および放火の罪を犯す。この事件の唯一の生き残りがレトロ・ベクター。この時、顔にやけどの傷を負い、その後、傷を隠すために帽子を被って暮らすようになる。
マシルト・クリムが釈放され、家族とともに暮らすようになる。クリム家の長男長女は共に問題児。このことをレトロ・ベクターは『罪の遺産』執筆時に知る。
レトロ・ベクターがクリム家を襲撃。一家の祖母、夫妻、長男長女を惨殺。次女が奇跡的に生き残り、その証言で犯人が判明する。
ベクターの娘(「B.D」)は殺人者の娘としての重荷に耐えきれず、自殺を試みるも、赤いシルエットの女に助けられる。(イベント発生のキーがリンゴ(赤いもの)だったので、そうではないかと思う。)
「B.D」が父親の量刑軽減との交換条件で赤いシルエットの女と契約を交わす。契約とは、父親が一端を担っていたゼブル計画の被験者となること。
「B.D」がせめてもの償いにとクリム家の墓を訪れた後、ゼブルへ発つ。ゼブル到着後から、赤いシルエットの女により「B.D」に対する投薬が開始される。
「B.D」はゼブル計画に従って順調に記憶を失くしていく。投薬されていたお薬は、おそらくあの薪から作られていたものなんだそうです。
「B.D」が父ベクターが携わっていたゼブル計画の全貌、そして父が罪を犯した動機について知ってしまう。
レトロ・ベクターが刑務所を脱走。娘「B.D」を殺そうとするも、断念。「B.D」はすべてを受け入れて生きていく覚悟を決めたが、目の前で父親が殺されたショックで「失明」する。これが「事故」の顛末。
この件を全て知ったゼブル計画責任者は、「B.D」を抹殺するよう、彼女の保護者である赤いシルエットの女に迫るが、赤いシルエットの女は「B.D」を連れて逃走する。
それから一年と三か月後が本編。
ゲームのデータから予測される時系列はこんな感じでした。
続いて補足と言いますか、用語を解説してみます。
シアノス・B・シアン:「B.D」の精神が一連の出来事に耐えられなかったため作り出された別人格。モデルはTVドラマの主人公。
B.D:「Born of Disorder(無秩序に生まれた者)」の略。幼少期に犯罪に巻き込まれた経験を持つ人物のこと。ベクターの娘のイニシャルではない。※ベクターの娘の本名がわからないため、便宜的に「B.D」と書いています。
ゼブル計画:「B.Dは、そうでない者よりも精神的に不安定で、犯罪に走りやすい」という仮説から生まれた、「B.Dに記憶消去という処置を施すことで、犯罪を抑制しよう」という計画。ベクターの著書『罪の遺産』がこの計画の基礎となった可能性がある。
赤いシルエットの女:ゼブル計画において、被験者である「B.D」の管理者保護者。おそらく「B.D」と接しているうちに、保護者としての情が移ったのではないかと思われる。「B.D」は彼女を「母さん」と呼んでいたけれど、私は「B.D」の本当の母親ではないと思う。髪や服が全体的に赤い。
ちょっと気になっている点があります。
ラストで「B.D」の目が開く描写があるのですが、これは「B.D」に視力が戻ったという解釈でいいんでしょうか。精神的ショックを乗り越えて、記憶と視力を取り戻したという解釈で問題ないんでしょうかね。
イベント中に「B.D」がベクターに対して、盲目になった場合のことを話している場面があるので、「B.D」はもしかすると生まれつき目が良くなかったの かもしれません。もしその推測が正しければ、精神的ショックによる失明が回復するということはあり得るんでしょうか……。
謎が謎を呼ぶ感じであまりしっくりきませんが、エンディング的には「B.D」に視力が戻っていてほしいなぁと思います。
【後日追記】
シアンは「B.D」で、シアンは冒頭や作中でも目が見えているような雰囲気だったので、「B.D」の「失明」は肉体的な問題ではなく、精神的な問題である可能性が高いのかもしれません。
そうだとすると、最後に「B.D」が目を開く描写というのは、自分が置かれている状況を正視する覚悟ができたということなのでしょうね。
「パレット」とはRPGツクール95で、1998年に作られたフリーゲームです。ストーリーの面白さ、ゲーム性の高さ、効果音の斬新さを評価されて、第四 回アスキーエンタテインメントソフトウェアコンテストでグランプリになりました。後に、PS1のゲームとして製品化もされました。
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一連のあらすじは以下の通りです。
診療所を営みつつ、有名情報誌にコラムを連載するなど、かなり著名な精神科医「シアノス・B・シアン」。ある夜、遅くまで執筆に勤しむ彼の元に、謎の女性 がドア越しに奇妙な依頼を申し込んでくる。彼女の依頼で診ることになった少女は一年前、とある事件に巻き込まれ、視力とほとんどの記憶を失くしていた。少 女が覚えているのは自身が「B.D」であることと「赤い色」だけ。その二つを手掛かりに、失われた記憶を取り戻すべく、少女の精神世界をめぐる旅がはじま る。
プレイ感覚としては、パズルをやってる感じでした。失われた記憶というパズルのピースを探して、一枚の絵を完成させている感じ。記憶探しの過程でも、 ちょっとしたコツというか、そんなものが必要な場面があったりして、楽しかったです。名のあるコンテストでグランプリを受賞した作品だけあって、仕組みも かなり斬新で面白いので、飽きませんし。なにより、冗長な展開が無くてスッキリしているので、ストレスなくプレイできました。
ただ、「後半に進むにしたがってBGMがごっちゃ混ぜになったみたいな音になること」、「ウィンドウモードで遊ぶとある演出が 存在しないことになること」の二点が気になりました……。BGMに関しては、あらかじめ、そういう仕様になっているからなんでしょうか。それともOS的な 問題なんでしょうか。ごちゃごちゃ言っても仕方ないですが、ウィンドウモードだと演出が楽しめなかったのはちょっと残念でした。割といい演出だなぁと気に 入っていたので。
※ここから盛大にネタバレしています。ご注意ください。
一連の事件を時系列で整理してみますね。
マシルト・クリムが強盗殺人および放火の罪を犯す。この事件の唯一の生き残りがレトロ・ベクター。この時、顔にやけどの傷を負い、その後、傷を隠すために帽子を被って暮らすようになる。
マシルト・クリムが釈放され、家族とともに暮らすようになる。クリム家の長男長女は共に問題児。このことをレトロ・ベクターは『罪の遺産』執筆時に知る。
レトロ・ベクターがクリム家を襲撃。一家の祖母、夫妻、長男長女を惨殺。次女が奇跡的に生き残り、その証言で犯人が判明する。
ベクターの娘(「B.D」)は殺人者の娘としての重荷に耐えきれず、自殺を試みるも、赤いシルエットの女に助けられる。(イベント発生のキーがリンゴ(赤いもの)だったので、そうではないかと思う。)
「B.D」が父親の量刑軽減との交換条件で赤いシルエットの女と契約を交わす。契約とは、父親が一端を担っていたゼブル計画の被験者となること。
「B.D」がせめてもの償いにとクリム家の墓を訪れた後、ゼブルへ発つ。ゼブル到着後から、赤いシルエットの女により「B.D」に対する投薬が開始される。
「B.D」はゼブル計画に従って順調に記憶を失くしていく。投薬されていたお薬は、おそらくあの薪から作られていたものなんだそうです。
「B.D」が父ベクターが携わっていたゼブル計画の全貌、そして父が罪を犯した動機について知ってしまう。
レトロ・ベクターが刑務所を脱走。娘「B.D」を殺そうとするも、断念。「B.D」はすべてを受け入れて生きていく覚悟を決めたが、目の前で父親が殺されたショックで「失明」する。これが「事故」の顛末。
この件を全て知ったゼブル計画責任者は、「B.D」を抹殺するよう、彼女の保護者である赤いシルエットの女に迫るが、赤いシルエットの女は「B.D」を連れて逃走する。
それから一年と三か月後が本編。
ゲームのデータから予測される時系列はこんな感じでした。
続いて補足と言いますか、用語を解説してみます。
シアノス・B・シアン:「B.D」の精神が一連の出来事に耐えられなかったため作り出された別人格。モデルはTVドラマの主人公。
B.D:「Born of Disorder(無秩序に生まれた者)」の略。幼少期に犯罪に巻き込まれた経験を持つ人物のこと。ベクターの娘のイニシャルではない。※ベクターの娘の本名がわからないため、便宜的に「B.D」と書いています。
ゼブル計画:「B.Dは、そうでない者よりも精神的に不安定で、犯罪に走りやすい」という仮説から生まれた、「B.Dに記憶消去という処置を施すことで、犯罪を抑制しよう」という計画。ベクターの著書『罪の遺産』がこの計画の基礎となった可能性がある。
赤いシルエットの女:ゼブル計画において、被験者である「B.D」の管理者保護者。おそらく「B.D」と接しているうちに、保護者としての情が移ったのではないかと思われる。「B.D」は彼女を「母さん」と呼んでいたけれど、私は「B.D」の本当の母親ではないと思う。髪や服が全体的に赤い。
ちょっと気になっている点があります。
ラストで「B.D」の目が開く描写があるのですが、これは「B.D」に視力が戻ったという解釈でいいんでしょうか。精神的ショックを乗り越えて、記憶と視力を取り戻したという解釈で問題ないんでしょうかね。
イベント中に「B.D」がベクターに対して、盲目になった場合のことを話している場面があるので、「B.D」はもしかすると生まれつき目が良くなかったの かもしれません。もしその推測が正しければ、精神的ショックによる失明が回復するということはあり得るんでしょうか……。
謎が謎を呼ぶ感じであまりしっくりきませんが、エンディング的には「B.D」に視力が戻っていてほしいなぁと思います。
【後日追記】
シアンは「B.D」で、シアンは冒頭や作中でも目が見えているような雰囲気だったので、「B.D」の「失明」は肉体的な問題ではなく、精神的な問題である可能性が高いのかもしれません。
そうだとすると、最後に「B.D」が目を開く描写というのは、自分が置かれている状況を正視する覚悟ができたということなのでしょうね。